百足
所詮人間の命は100年くらいだ。僕らの基準で考えるとあまりにも短い だが実際は事故や病気でその年まで行くのはほとんどいない。気にする必要はないそんなもんだと言い聞かせたが今回はダメだ。龍造の時のように心の準備もできていないし今は殺したやつを追うのが先だ。龍二は無言で涙を流していた。後ろからパトカーの音がするここにいてはまずい
「龍二、警察がくる行くぞ」
僕は龍二の手を引っ張り裏通りで立ち止まった。トシさんの車の様子だが天井に大きな穴が開いてた。恐らく天井から何かしらの刃物のような武器が入り込み彼を刺したのだろう。車の中は物が溶けている様子もあったのでおそらく最後の敵は酸と刀を使うのだろう
「黄金組は僕たちの島じゃない。正直手掛かりなしで探すには難しいな」
僕はスマホを取り出し応援を呼ぼうとした。すると突然1通のメールが届いた
「差出人はとくにかいてないな・・・」
本文はURLのみ だが文字の内容から地図アプリだとわかった。怪しいサイトではないとわかったためタップすると地図が開かれ画面の中央にピンが刺されていた
「まさかこれってレナの能力か」
恐らくレナが持っているスマホが自発的にメールをこちらに送ったのだろう
「龍二、敵の居場所が分かった」
龍二を呼び。2人でピンが刺されている場所に向かった。
目的地はよくある古い雑居ビルだ。中に入ると上の階に続く階段と下の階に続く階段があった。基本こういう事務所は上の階にある登ろうとしたら突然下の階からアラームが鳴りだした。慌てて向かうとスマホが1台置いてありそこからアラームが鳴っていた
「兄貴、これって」
そういうことだやつらは下の階にいる。地下に行く前にスマホを落として目印にしたというわけか
下の階に着くと一つのドアが設置されていた。閉まってたら爆破してやろうかと思ったが開いていた
「なんだよこれ・・・」
中に入ると恐らく試作品であろう機械の残骸が散らばっていた。かなり歩きづらいが部屋の奥に向かった。下の階はかなり広い空間ができてた。到底雑居ビルの地下絵とは思えない設計だ。
「お前らが来たということはエテ公はしくじりやがったな」
大広間に黄金組組長【黄金羅一】が立っていた。隣にはレナが口にテープを巻かれ腕を結束バンドで絞められていた
「おいじじい!計画変更だ!こいつらを殺す」
羅一は上を向けどこかに呼びかけた するとスピーカーから老人と思われる声が流れた
「仕方ねえなぁ 旦那さっさと片付けてこの世界からおさらばさせてくれや」
恐らく声の主があのドワーフだろう 最後まで姿を見せないとは狡猾な奴だ
「てめぇも手伝えや クソが」
羅一は悪態をつきながら武器を手に持った。刀のようだが刀身はない
「なんだあの刀・・・」
龍二もあまりに異様な武器に警戒をしいつでも引き金を引ける体勢をとっている
羅一は柄に内蔵されているスイッチのようなものを押した。柄の先から刀身が出てきた。甲高い金属音をたてて刃が一節一節軋むように動くまるで生きているかのようだった
「あまり武器に名前を付けるようなガキ臭いことは嫌いなんだがなぁ。強いて言うとするなら「百足」だ」
刃の先がこちら目がけて突進してきた間一髪ジャンプをして避けたが地面のコンクリはえぐれている。そのうえ溶けている部分も見られる。やはり酸の正体もこいつの武器だったのか
「初動を避けるとはやるなぁ。この技でお前んところ運転手は仕留められたがさすがに組長は一筋縄じゃいかねえなぁ」
羅一はニタニタ笑いながら次の攻撃の準備をした。龍二の方を見ると明らかに頭に血が昇っている。これはまずい突っ込まれたりしたらカバーできない
「お前はなんであのドワーフと手を組んでいる。あいつは元の世界に帰りたいだけだろ」
時間稼ぎとはいかないが無茶な行動に出ないよう相手に質問を投げかけた
「そんなん単純だ あのジジイが強い武器を作ったからあいつの計画に力を貸してやっただけだ。まぁ襲った施設が政府の管轄らしくて俺としてはさっさとトンズラしたいところだがな」
政府の施設?レナがいたところか。だが今は考えてる暇はない百足の先端が龍二を捕らえた 龍二は普通の人間だ避けれても近づくことは難しい何とかサポートして決定打を打ってもらわなくては
だが龍二は銃もを持ちながら相手に突っ込みに行った。確実に当てる射程まで近づくつもりだが百足がいる中ではかなり厳しいかと思われた。龍二は百足の間をうまくすり抜け羅一に近づいて行った
「なんだこいつ気持ちわりい」
悪態をつきながら羅一は百足の先端の軌道を龍二に向けた。だがパルクールをこなす彼は目前まで来ていた。銃口が羅一にに向かれようとした瞬間レナを盾にした。龍二は引き金を引けず後ずさりをしてしまった。そのせいもあり百足の先端が龍二にを刺しに来た。防御魔法で針の部分はガードできたが衝撃により龍二は吹っ飛ばされ気絶してしまった
「クソっ!」
百足の標的が完全に僕に定まった。風魔法を駆使して逃げれてはいるがこのままではジリ貧だ。なんとしてでも決定打を打たなければ
「おいおい組長さんよぉ 逃げんじゃねえよ!」
百足がしつこく追いかけてくる 僕は賭けに出ることにした。小さい魔方陣を数個作り百足が通過したら爆発するよう仕掛けた。完全に破壊までとはいかないが損傷までいかせる
目論見通り百足は魔方陣を通過し激しい爆発が起きた。煙幕で何も見えないが直撃はできているはずだ。だが考えは甘かった 煙幕から百足が飛び出し僕に絡みついた。身動きがとれない金属の冷たい感覚が全身に伝わる
「捕らえたぜ さぁここからどういたぶってやろうか」
羅一は不敵な笑みを浮かべていた




