ブラックインパクト
黄金組
黄金羅一は小柄な男が開発した試作品を試し終わったところだ
「確かに威力はすげえが装着型は俺には合わねぇな。やっぱ前の奴でいい。おいエテ公!このブキお前にやるよ」
エテ公と呼ばれた丸刈りの男 沢渡紋吉はハイテンションで羅一に向かった。
「いいんですかぁ、リーダー新しいの欲しいって言ってたじゃないですか~ウキキキ」
紋吉は変笑いをしながら武器を眺めていた
「紋吉、装着して使い方を確認しとけ。前に逃げたガキが緑間のところにいるらしい。今日はそいつの確保だ」
羅一の後ろには小柄な男が満足そうな笑みを浮かべていた
緑間組
七瀬レナの固有魔法について整理しよう。彼女は物に一時的に魂を宿らせることができる 魂を宿った物は使い方やその他もろもろを彼女に教えてくれるらしい。ある意味強いなこの魔法・・・
「スマホって何でも教えてくれるんだねぇ」
レナがスマホを操作していて内蔵されている音声認識アプリと会話していた
「ねぇSiruちゃん、今日のお天気はどうなの?」
「はい、今日のお天気は晴れです。絶好の散歩日和ですよ。私はレナちゃんと一緒にお出かけしたいですね」
こいつ喋りすぎじゃね?魔法を使えばある程度の意思疎通は可能ということか
「でもレナちゃん、あなたは黄金組に狙われています。」
Siruがいきなりこの事態の黒幕を言い出しさすがに僕も質問することにした
「あいつらは何故車を真っ二つにできた?子供たちをさらった理由は?」
だが僕が質問するとすみません、よくわかりませんと返された・・・
「代わりに聞いてあげるね。彼らはどんな武器を使ったの?私たちをさらった理由は?」
レナの質問にはすぐに答えた
「彼らは異界から来たと言っている男と手を組みました。男は背が低くひげを蓄えて帽子を被っていました。彼は一本の研のようなものを組長である黄金羅一に渡していました。もう一つ武器を作っていたのですがそれについてはわかりません。レナちゃんをさらった理由は私の推測でしかありませんが彼女の能力だと思います。異界の男も元の世界に帰ろうとしており特殊な施設のいる子を優先的に狙ったと考えられます」
特殊な施設?レナと同じとなると固有魔法使いのことか。だが人間で発現するのはごく稀だが今は襲われた施設について考えるのは後にしよう。異界の男の特徴から考えると奴は・・・
「ドワーフですね」
後ろから龍二が答えを横取りした。正直いらっとしたがここは冷静に。彼は僕のせいかファンタジー物のゲームや小説にかなり手を触れていて無駄に知識が豊富だ
「いつの間にいたのか」
「ドワーフの話あたりにはいましたね」
とりあえず敵がドワーフと組んでいるのが分かっただけでもでかい。ドワーフは高度な鍛冶の技術を持っており僕らの世界でも魔法と対をなす存在の科学技術で大国を築いていた。そのドワーフが作った武器が未完成品と合わせて2つあるというのは厄介な状況だ。せめてレナだけでも警察に保護してもらったほうがいい
「よし、レナちゃん。警察に行こう。お兄ちゃんの知り合いに守ってくれるお巡りさんがいるからな」
なるべく優しく語りかけた
「やだ!お姉ちゃんとがいい!」
こいつ強情だ
「事が終わったら迎えに来るから 危ないから少しの間だけ我慢してほしいんだ」
「この子も連れてっていい?」
レナはスマホの上部をナデナデしていた。もうこいつペットだな
運転はトシさんに任せ助手席に龍二、後部座席にレナと僕が乗り込んだ。このまま町を抜け出し警察署に保護してもらう。先に知り合いの刑事に事情は伝えてあるので彼女を連れていくだけだ。
数分走らせると車道の真ん中に男が立っていた。男の両腕には仰々しい機械が装着されていた。
「インパクトスマッシュ!」
男は叫びながら右ストレートのモーションを行った。その後空気を裂くような音と共に衝撃波がこっちに向かってきた。
「トシさん止まって!」
僕は急ブレーキの反動の中防御魔法車の前に展開した。激しい爆音をたてて衝撃波を防いだ防御魔法はボロボロと崩れ消えた
「ウキキキ、やるじゃねぇか!お前が組長か!」
猿みたいな男はハイテンションでこちらに喋りかけてきた
「うるせーよクソ猿 てめぇこそなんなんだ」
龍二が僕の後に続き車を降りた
「聞いて驚け!俺の名はブラックインパクトだ!」
確かに黒い装備だが酷いネーミングセンスだ。これからこいつと戦わなきゃいけないのかと思う時が滅入る
「トシさん、レナを連れて先に行っててくれ。こいつは俺たちが倒す」
龍二と組んで戦うのは久しぶりだが今回は普通の人間ではない。今までの経験が通じるかどうかわからないがこいつを先に通すわけにはいかない。トシさんの車が見えなくなったところで戦いの火蓋が斬られた
「インパクトスマッシュ!」
最初に仕掛けたのはクソ猿だ。右ストレートのモーションをすることで衝撃波が襲ってくる。僕は再び防御魔法を展開することで防いだが体勢を崩しかけた
「龍二!アレをやるぞ!」
龍二の返答が聞こえたので僕は風魔法を龍二の足に放った。龍二は風魔法の影響で上昇した
「おーすげえなぁ」
クソ猿が空を見上げたところで彼の弾をお見舞いしたが腕のアーマーに防がれてしまう
「僕だけみてろぉクソ猿が」
僕は風魔法で奴に急接近し腕に銃弾をお見舞いした。しかし奴は両腕を地面に思いっきりパンチし衝撃波を出して僕を吹っ飛ばした。吹っ飛ばされた僕は壁に背中を叩きつけられた。僕はタダ奴に接近したわけではない。銃弾を彼の腕に埋め込ませるために近づいた そして埋め込んだ炸裂弾が爆発した
クソ猿は腕から何回も爆発が起こり狼狽えた。魔法で銃弾に爆破するように仕掛けたがまさかここまでうまくいくとは・・・
「この野郎・・・死ねぇ!」
クソ猿は衝撃波を連射してきた。もう彼は僕の方しか目に入ってない 僕は左手を空にあげ合図を出したそして衝撃波が止まった
「終わりだクソ野郎 地獄に落ちろ」
龍二が刀をクソ猿の上から刺した 彼を空中に浮かせタイミングを見計らって敵を指すのが僕が考案した作戦だ
クソ猿は頭から血を吹き出しながら力なく倒れた
「これで終わりましたね 兄貴・・・」
嫌終わってない・・・武器2つあるとSiruは言っていた。もし彼が僕らを時間稼ぎをする囮だとしたら・・・
「おい龍二!トシさんが危ない!」
僕らはトシさんが車の方へ向かった
走ると横転した車が見えた 野次馬が邪魔ではっきり見えないが予想通りトシさんの車だ、どうか無事であってくれと願い野次馬たちを押しのけ車の中を見た。そこにいたのは変わり果てたトシさん一人だけだった




