命宿りし魔法
僕は組の連中数名を引き連れて抗争が起きた現場に向かった。事件が起きて数日たっているが今も規制テープが張られている。そりゃあそうだバラバラ死体が数体でてきたんだ。いくら反社と関わりたくない警察でもこれは見過ごせないだろ。
「正直ここは俺たちの島じゃないんだけどな」
龍二が軽くボヤいた
「こんだけ派手に暴れられたらいづれ僕たちのところにも飛び火がくるよ。相手は人体を切断ができる怪物だよ。この世界にそんな奴がいるなんて思えないけど」
僕の世界は別だけどね。無理やり可能性を挙げるならもう熊とかそういった猛獣だろう。こんな都会のど真ん中に熊なんていたらそれだけで目立つけど
「兄貴ぃ・・・これ見てくれよ」
龍二が指を示した先には恐らく抗争があったであろう残骸が散らばっている。銃弾の跡もいくつかあるが何より目立つのは真っ二つに切断されてる車だ。僕は近づいて切断面を見た
「車を斬るなんてファンタジーの世界にいるような奴じゃないと無理だろ」
龍二が後ろで突っ込み前提の発言をしたが無視した。切断面には緑色の液体がついており周りの金属を腐食している。
「これは酸だな。相手は毒を放出する刀でも持ってるのか?いや・・・まさか」
僕は最悪のシナリオが頭に浮かんだ。武器の所持が厳しいこの国でこれほどの威力の物を持ってるやつ。外国の連中かと考えたが少なくとも人間には刀で車を切断なんてできない。間違いなくいる・・・異世界の住人が
「お姉ちゃん!」
突然子供の声が現場に響いた。事件現場に子供なんてと思いながら音のしたほうに振り向くと何とも汚らしい少女がいた
「君は一体何者だい?」
できる限り優しく聞いてみる。少女はスマホと僕の顔を交互に見た
「この子がね このお姉ちゃんに会えって言ってるの!」
少女はスマホの画面を見せてきた。そこに写ってるのは僕だ・・・
一旦僕たちは少女を事務所に連れていき明日の朝には警察に引き渡す予定だ。さすがに児童誘拐はこのピリピリしてる状況ではヤバい
「とりあえずお風呂に入ってきなさい 着替えは子持ちの部下から借りてきたから」
少女は僕から服を受け取り浴室に向かった。浴室のドアが閉まった音が聞こえた瞬間疲れが襲い掛かってきた
「あの子が誘拐されてたんですかね?」
龍二がボリューム低めで話しかけてきた
「そうとしか考えられないよな。目撃証言によると4,5人捕まってるらしいからそのうちの一人だろ。お風呂から上がったら話を聞いて寝かして警察に届けよう。」
今の状況を整理しながらいろいろ考えてみると一番気になるのは僕の写真を持っていたことだ。たしかに同業の連中からは顔は知られているが僕は組長だしなるべく現場にはいかないようにしている。今回は例外で火種が大きくなるのを予想して向かったまでだ
「親御さん心配してるだろうし 早めに返してやりたいですね」
これには同感だ。背丈的には小学生低学年だ。あんな暗い中一人で逃げてきたんだから寂しいだろう
あれこれ話していると少女がお風呂から上がってきた。体中の汚れはきれいさっぱり取れていて長い髪の毛もべたつきが無くなっていた
「よし、お疲れのところ申し訳ないがいくつか質問があるけどいいかな」
僕は完全な余所行きモードで彼女に話しかけた
「まずはお名前は?それとお家はどこかな?」
「七瀬レナ!住んでる場所はねわかんない!」
わかんない?どういうことだ?
「住んでる場所はねお家があるところだよ。パパとママがいるところ」
大方小学生に説明する内容ではないがもしかすると教育がちゃんとしていない可能性もある
「パパもママもいないんだ!変なところでみんなと住んでたの」
これはまずい かなり厄介な人物を持ち帰ってしまった。最低限なんであの場所にいたのかと僕の写真ことは聞こう。そしたら彼女はもう警察に押し付ける
「レナちゃん 最後になんで昨日あの場所にいたのかと僕の写真をなぜ持ってるのか聞いていいかな?」
レナは少し考えてから話し始めた
「レナの住んでるところにね知らないおじさんたちが来て滅茶苦茶にしたんだ。レナの目を隠しちゃったからどこなのかもわかんない。音だけは聞こえたのたぶん車に乗ってたと思う。急にねすごい音がしたの なんかと戦ってる感じがしてもしかしたら逃げれるチャンスだと思って車から出たんだ」
すごい音とは抗争のことだろう 車のカギは衝撃か何かで壊れたのかもしれない
「一緒にいた子と一緒に逃げようとしたけどみんな怖がって動けなくなっちゃって一人で降りたの そしたらおじさんがおじさんが倒れてたからポッケからスマホ借りたんだ」
こいつマジか・・・将来有望だぞ
「スマホで救急車呼ぼうとしたらいきなりお姉ちゃんの写真がでてきてそのまま隠れて待てって言われたんだ」
「え?待てって誰に言われたの?」
あまりに突飛な展開のため食い気味に聞いてしまった
「スマホからだよ 本当に画面を見た瞬間出てきたんだ!」
もうよくわかんないから 明日にしよう
「ありがとう よくわかったよ今日は寝ようか。明日警察に送ってあげるから」
レナは警察と聞いた瞬間少しガッカリそうな表情を浮かべた。まぁたしかに施設が襲われて命からがら逃げて警察に行くとなると子供でもテンション下がるよな
他の組員はさっさと帰らせレナは僕の部屋で寝かすことにした。ベッドと机と椅子くらいしかないので寝るだけならここで十分だろう。懸念点は護身用の銃が机の中に入ってるが暗唱コード付きのケースに入ってるから問題ない ちなみに僕はソファーで寝る
「お姉ちゃん起きて!起きて!」
レナが起こしてきた。日差しが上がっているのでもう朝かと思い上体を起こした
「お姉ちゃんこれって本物?」
彼女が見せてきたのはまさかの銃だった。なぜだ確かに昨日もケースに入れていたはずなのに
「レナちゃん、危ないから渡しなさい それは本当に危ないんだ。ていうかどうやって開けたんだ?」
銃を返してもらい暴発しないか安全装置をチェックした。よし大丈夫だ
「机の引き出しを開けたらね。すごそうな箱があったんだ。開けようとしたらね箱が0314を押してねって教えてくれたの」
信じられない僕のケースの暗証番号だ 教えてくれたってどういうことだ?考えてるうちに僕はレナから懐かしい感覚を感じた そう魔法だ。人間には練習して使えるタイプの魔法は使うことはできないが一つだけ使える魔法がある。【固有魔法】だ




