別れの日
龍造からの予期せぬオファーから1日が経った。僕は考えさせてくれと言ってうやむやにしたがいつかは結論を出さないといけない。正直こんな犯罪者グループと一緒にいるつもりはなかった。最初は情報収集と思って入ったのにいつの間にか偽の身分証とか作られて変に信頼されて子守りも手伝わされた。
「あ~いやだ~正直抜け出したい~」
ベッドでもがいていると突然部屋がノックされた。
「兄貴!いるか!」
入ってきたのは龍二だ。本来こういう組は組長の息子が継ぐのがよくある話だと聞く。昨日は目の前で彼の将来の席を奪ってしまったのだ。正直顔も合わせたくない
「なんか用?」
我ながらぶっきらぼうに答えしまった気がする
「昨日の件だよ。あんなこと言われちゃ心配になるだろ」
龍二がへらへら笑いながら答えた。むかつく
「正直俺は兄貴が組長はありだと思うぜ。俺らより長生きだし魔法使えるし」
僕は久しぶりに固有魔法の異世界の鍵穴を発動させた
「僕は今でも元の世界に戻ることを優先してるよ。この穴が大きくなったら速攻で組を見捨てて飛ぶこむけどいいのかい」
「20年以上大きくなってないじゃん アハハハ!」
こいつ爆破しよっかな 兄貴と慕っているがため口だし小ばかにしてくるのがこいつの難点だ。だがまぁ悩むのは滑稽に思えてきたのでとりあえず龍造のオファーを引き受けることにする。癌と言われたからって明日死ぬわけではない。だがまぁ僕の時間の感覚からすると一瞬だけどね
5年後
龍造のその時が近づいてる。点滴も繋がれ素人目からしても呼吸が苦しそうだ。病室には僕に加えて龍二とトシさんがいる。トシさんが身内以外で一番の古株だから信頼されているのが分かる。僕も彼は頼りになるからわからないことは聞くことがある
「親父ぃ まだ俺には教わらなきゃいけないことがたくさんあります!だからまだ・・・」
こんな取り乱すトシさんは初めてだ。人生の大半を捧げてきた人の死というのはどの種族でも堪え難いものだろう
「おい・・・リフェル・・・」
今までの威勢からは考えられない弱々しい声だった。恐らくこれが最後の言葉になるだろう 他の2人も涙を拭い身構えた
「どうせ逝く前に冥途の土産としてお前の国の名前を教えてくれよ」
最後に知りたいのはそれかと思ったが僕も彼とは20年以上の関係がある。今回はごまかさずに答えるとした。
「魔導国家エルデラート」
それを聞くと彼は微笑みながら細い声でつぶやいた
「大層な名前じゃねぇか 次に生まれ変わるならそこにいってみてえなぁ」
それを最後に彼は一言も喋ることはなかった
「親父・・・お疲れ様」
葬儀を終えて一週間が経ち僕はここ最近の情勢を確認していた。僕が組長になったことは意外と受け入れられた。たぶん龍二や龍造が事前に根回ししてくれたのだろう そうでもなきゃ異国の国の少女みたいな見た目の奴を組のトップにするなんて反発があるはずだ。
「兄貴ぃ 歌舞伎町の他の組織のリスト持ってきた。」
龍二が持ってきたのは歌舞伎町の反社組織をリストアップしたものだった。歌舞伎町周辺の地域で子供の誘拐が派生している。男女問わず被害にあっているので人身売買もしくは臓器売買が可能性が高い。龍造の死後、どこかしらが仕掛けてくると思ったが予想は当たった。龍造の存在は治安を保つためにはでかかったのだろう。
「この黄金組とかいう所 最近勢力を拡大してきてるそうだが・・・」
黄金組は数日で名前を多く聞く組織だ。ここの組長がかなりの強いらしく1対20という抗争で20人全員を倒したらしい。数人生存者はいるが大半はバラバラ死体という噂だ。あくまで噂なので審議はわからない。
黄金組本部
「おいちび髭 こっちは目立つの覚悟でガキをさらってんだ。今の目立つ武器だけは勘弁してくれよ」小金組組長、黄金羅一は作業をしている髭を蓄えた小柄な男に詰め寄った
「旦那注文が多いですぜ。まぁもう少し待ってくれや新しいの作ってるから」
小柄な男は不敵に笑い金槌を振った




