過ぎ去る日々
天才エルフのリフェル・シュトラウスが披露した次元転移魔法が暴走して行きついた先は血と薬と暴力が広がる世界だった
龍造から予期せぬプロポーズから早3か月 ある程度この世界がわかってきた。今は西暦2000年でどうやら歌舞伎町というのは日本という国の東京という都市の中の属しているらしい。今はトシさんが教育係みたいなものでここでの仕事の手伝いをしている。事務所の清掃や事務作業など僕の魔法が一切役に立たないがこの世界を知るにはあまり目立つのは良くないだろう。しかしどうしても慣れない仕事が一つだけある。それは・・・
「おい!金髪女装野郎!映画に連れてけよ」
このクソガキは緑間龍二 龍造の息子だ。母親はすでに他界しており男手一つで育てているらしい。それは尊敬するのだが・・・
「耳長ニューハーフ馬鹿!キャッチボールしようぜ!」
もう少し年上に対する言葉遣いをだな・・・こっちはお前30倍生きてるんだぞという気持ちは抑えた
「キャッチボール?さっきは映画って言ってなかったかな?」
とりあえず要望がぐちゃぐちゃなので再確認
「なんでもいいんだよ!さっさと行こうぜスーパー年寄り!
殺す・・・
龍造が日を跨いでいないときは僕や下っ端組員が面倒見ることになっている。ほかの人にはそこそこ礼儀正しんだがなぜか僕の時だけキャラが変わったかのように嚙みついてくる。もしかして舐められてる?
5年後
下積みを経験して月日が経った。僕は2人ほど部下を持ち借金取りをしていた。今回同行してるのはケイとジョーというやつだ。2人とも僕より身長高いし顔も怖い。しかし今日は二人とも初めての借金取りなのでいい所見せなくてはならない。今回のターゲットはギャンブル中毒で誰からも金を借りれず最終的に僕たちに頼ってきたありきたりなクズだ。
「30万の借金くらい働けばいいのに・・・」
僕は資料を見ながら呆れかえっていた。
「でもリフェさん こいつは働く場所いく先々で金を借りようとしてトラブル起こしてるそうなんですよ。シンプルに働けても続かないやつなんですよ」
正直気が滅入る。こんなやつに脅したところで「すいません」と「次は絶対返しますから」しか出てこないのは目に見えてる。
「じゃあこれからチャイム鳴らすので2人とも最初は見るだけでいいよ。ある程度流れを掴んでもらうのが大事だからね」
僕は借金野郎のアパートのチャイムを鳴らした。特に反応はない。もう一回鳴らした
「いないんですかね」
ジョーが残念な顔で言った次の瞬間家の中で誰かが歩く音が聞こえた。エルフの耳は人間より性能がいいので安アパートのドアくらいなら容易く貫通できる。
「いやいるよ。ケイ君出番だよ」
ケイはポケットから特殊な道具を取り出した。彼は昔は空き巣をしていたためピッキングは得意とのこと。僕が魔法で壊してもいいのだが関係ない人も巻き込んでしまっては申し訳ないので穏便に済ませるならこれが一番
鍵が開いた瞬間ジョーが張り切ってい家に突入する。中から激しい音が数秒した。
「みんなすごいなぁ」
ボソボソ褒めてたら音がやんだので僕らも入ってみた。目に入ったのはボコボコにされて椅子に縛りつけられてるクズだ
「えーと名前は五味杉夫さんだね。僕らから借りた金額は25万でその他利子もろもろ合わせて30万だけどいつ返してくれるのかな」
五味はワーワー喚いている
「だからすぐ返すっていってんだろ!あと一か月待ってくれよ!」
借金野郎は大抵1か月待ってという台詞を月1で言う。やれやれ面倒だ
「今返してもらおう。もしできないって言うのなら」
僕は魔法で彼の家のハンガー一つを破裂させた。
「返すというまで君の家のものを一つずつ粉々にする。次は10秒後だ10・・・9・・・」
「なんだよ30万持ってんじゃん」
僕は手渡された現金を数え終え封筒に入れた。
「またのご利用お待ちしております。」
ニッコリと帰宅前に挨拶したがビビりすぎてもう聞いてないだろうなぁ 横にいる二人も引いてる感じがする。あんまり魔法は人前では使わないようにしよう。
5年後
今日は龍二が20歳の誕生日だ。この世界の人間は20歳が一人前の大人ということになるらしい。飲めや歌えやのドンチャン騒ぎが終わり僕はベランダで夜空を見ていた
「兄貴、楽しんでくれたかい?」
龍二が後ろから話しかけてくれた。最初に会ったのは10年前でそれから随分と言葉遣いや所作も丁寧になったもんだ
「たった10年でここまで変わるんだね」
ここでは我ながら意地悪そうな顔をしていたと思う
「俺らからしたら10年は長いよ。小学生から大学生の途中までだぜ。その間に3回も卒業式っていうイベントがあるんだ長いに決まってる。」
僕らは人間の10倍以上の寿命がある。この国の平均寿命で見ると龍二はもう人生の4分の1が終わった。これから先の未来というが意外と早く訪れるのかもしれない
「親父もまだ元気だからさまだ言えないんだこの組の跡継ぎの話を」
龍二なりに未来は不安なようだ
「ヤクザなんて大抵は息子が後を継ぐんだろ」
不安を解消させるつもりで答えた
「まぁね。もしかしたらは親父は兄貴を選んだりしてな」
面白い冗談だ。だがこうやって笑える冗談をずっと言えたらいいのにと思っていた。だが現実は甘くなかった。
5年後
僕は都内の大きい病院にいる。組長こと龍造の検査結果がでたため息子の龍二と僕がトシさんの運転で付き添いとしてきたのだ
「龍造さんの検査結果は肺癌です。ステージ4の」
医師は淡々と通告した。診察室の空気が重くなった。癌というのはこの世界で知った。僕たちの世界では治癒魔法がある主に治せるのは外傷のみ。生まれつきの病気は神の思し召しということで処理されていた。医療技術に関してはこの世界のほうが圧倒的に上だ。だが癌というのはかなり厄介な相手だときている。
「抗がん剤の選択肢もありますのでご家族と話しあって決めてください。」
医師は今後のことについて説明した後そう言い残し診察は終わりになった。僕たちは無言のまま車に乗った。社内では事情をまだ知らないトシさんが気を遣うほど重い空気が漂っていた。走ってから十数分後龍造が口を開いた。だがその言葉は僕の世界を変えることになる
「リフェル・・・お前が緑間組を継げ」




