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青蔦の若君と桜の落ち人  作者: 楡咲沙雨
バクストンへの旅路
39/40

家族の団欒【前編】

 美桜がうっすらと目を開けた時、足元ではスコルが、傍らではスコルが眠っていた。居てくれたことにほっとしてハティのモフモフな銀毛に顔をうずめる。モフモフいい匂い。モフモフ最高。


『起きたか?美桜』

「うん。おはよう。疲れ取れた。馬車はやっぱりつらいねぇ。スコルたちはいつ来たの?」

『番殿がオラージュと一緒に迎えに来てくれたぞ。許可はとったと言って。ノックしたが返答がないので恐る恐るドアだけ開けてくれたので滑り込んだ。あやつもなかなかいいことをする。』

「スコル。その言い方・・・。それに番殿はやめてよ。」

『いやなのか? 』

「そういうことじゃなくて!」

ぼふんっと枕をスコルに投げる。真っ赤になってジタバタしている美桜にポンと片足をのせると、起きたハティがあくびをしながらスコルに言う。

『スコルは雄だから、わかんないのよ。まだ恥ずかしいのよねー。自分の気持ちを把握しきれなくてねー。』

「ハティも結構えぐるんですけど。」


すとんとベッドから降りると、ちょうどノックの音がして部屋付きのメイドが入ってきた。2頭のアルジェントウルフに、最初は怯えていたが、そういうときのために教えておいた親愛のしぐさを2頭がすると、怖がらなくなった。

『お手をするとは。犬ではないのだぞ。我らは。』

「それでいらない誤解をされて、御飯がおいしくなくなってもいいのならいいんだよ?」

『お手するだけでいいなら安いもんじゃなーい。』


 夕食の前に湯あみをと言われ、手伝いを断り、一人で風呂に入ると、とっておきのシャンプーとリンス、トリートメントでケアして石鹸でごっしごしに洗う。髪を『温風(ブロア)』で乾かして出ると、メイド達が髪を触ってほぉっとため息をついた。


「お嬢様の髪は、艶々でまっすぐで。本当にお綺麗でいらっしゃいますね。羨ましいですわ。」

「ん?皆は何つかっているの?」

「旦那様はお優しいので、皆に石鹸を支給していただいております。それで全身洗うのです。」

「あぁ。。。ばさばさギシギシで艶なしの髪ってことね。」

「そうなんでございます。こんな髪を持っていたら、私も花としてもっと選ばれる機会があるのかなと。羨ましいのです。」

「ギリアンに提案する案件が増えたね。待っててね。きっと艶々の髪にしてあげるから。」

「本当でございますか!?」

きゃーーーっとメイド達が手を握り合って喜んでいる。

「私もバクストンの娘。できることは全力でする。まずは領民の幸せな結婚だよね!」

「お嬢様!」


感極まったメイド達に髪を瞬く間にきれいに編み込まれ、着替えさせられ、化粧を施される。さすが辺境伯家のメイド、出来上がった時には、これ誰?と言わんばかりの『御令嬢』が鏡の中に立っていた。


「これはエレン様からのドレスでございます。平時用と夜会用と3着ずつ、フィリア様からもお預かりしております。いかがでしょうか。」

「なんというか・・・。さすが辺境伯のメイドだね。自分が自分じゃないみたい。」

「お褒めいただきありがとうございます。ですが素材がいいからでございますよ。お嬢様の肌は本当に白くて艶々で。私の手で傷がつかないか心配しておりました。」


見るとメイドの皆の手は、少しばかりカサカサだ。美桜は箱を開けると大きな広口瓶を取り出した。


「これ。皆で分けてくれる? マノアの使用人たちには使ってもらってるの。水仕事をした後、塗って手袋をして寝たら、次の日にはきっと違いが分かるから。」

「なんでございますか? まあ。なんて気持ちがいい。それに手がすべすべに!」

「手荒れ防止のクリーム。蜜蝋と椿油とオレンジの花で作ってあるの。皆で分けて使ってくれる?なくなったらまたあげるし、ギリアンにもつくらせるから。これ、お祖母様たちへの贈り物にどうかな。」


少量とってメイドの手にすりこんでやると、オレンジの香りと共に滑らかにしみこんでいく。使い方をレクチャーするとメイド達は涙ながらに喜んで、残りの瓶をきれいにラッピングして生花までつけてくれた。これなら喜ばれます!と太鼓判付きで。そうしていると、コンコンッとノックの音がして、カイドとサーシャが入ってきた。


「おぉ。これは見違えた。どこの御令嬢だ?」

「本当に。すごくきれいよ。美桜。」

「ありがとう。お父様。お母様。皆が頑張ってくれたの。お婆様から頂いたドレスなんですって。」


黒の髪と瞳に合うようにと、紺青の生地のAラインのドレスにに銀糸で蔦が足元から刺繍されている。胸元からレースで切り替えられ、ボートネックになった襟ぐりが愛らしい。ゆるく編み込まれた黒髪には青い花飾りが付けられている。


「ふむ。用意しておいてよかった。美桜。これは俺たちからだ。」


カイドはメイドに箱を渡し着けさせる。青い宝石のしずく型のイヤリングとシンプルなネックレスだった。


「素敵。ありがとう。いつも着けられるようにモノを選んでくれたのね?」

「あぁ。夜会用は別に用意してあるからな。」

「わあ。贅沢。」

「娘を甘やかすのは父親の特権だ。じゃあ行こうか。」


部屋を出ると、廊下でジャンルードとハリスが待っていた。一目美桜を見るなり、ジャンルードは顔を背ける。え。ダメだった?


「うわぁ。美桜綺麗だね。見違えたよ。エミリオ。お前何してるの。褒めるのが礼儀でしょうが。」

「いや・・・その・・・あんまり綺麗すぎてまともに見られないというか・・・。」

「そ・・・それはありがとう・・・。」


耳を真っ赤にしたジャンルードが手を差し出してくれるので、腕につかまり、おずおずと歩き出す。今日は彼も黒の夜会服を着ていて本当にかっこいい。


「黒い夜会服似合うね。」

「いつもは着ない色なんだが、今日はいいだろうと思って。」

「そうなんだ。よく似合ってるよ。かっこいい。」

「あ・・・ありがとう。その美桜も・・・すごくきれいだ。」


『空気が甘ったるい』

『主もう一押しだ。頑張れ主。』

「お前たちも行くのか? うるさいぞ。」


足元を連れ立って歩く3頭も、バクストン家にお目見えということでブラッシングされて艶々だ。家族用の広間へ到着すると、皆それぞれの格好でソファセットで寛いでいる。






お読みいただきありがとうございます。

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