表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

中和反応化学式

作者: 四季 ワタリ

『中和反応化学式』



澄み切った透明の水の入ったバケツに


黒い絵の具を全部ぶちまけて


グルグルとよくかき混ぜて


バシャバシャと叩きつけ


また黒い絵の具を全部注ぎ


適当に眺めていると


僕の心と似たものが出来上がっていた





黒色っていうだけでみんなはすぐに否定する


黒色っていうだけで汚いと決めつける


黒色はみんなを暗くするから……


いやそれを否定してるわけではないよ


僕だって正直言って黒色は好きじゃないんだ


本当はパァっと華やかにする赤色や


美しさを際立たせる青色や


力強さを感じさせる緑色や


みんなと仲良くできる白色が


僕だって好きなんだ


でも僕には黒色しかないんだよ


どんなに望んでも


黒色しか手に入らないんだ


――だからは僕はいつも心を黒色で塗り潰すしかないんだよ





そしてある時


僕は知らない女の子から話しかけられた


「うわぁ……凄く真っ黒な水だね」


「あぁ……僕には黒色しかないから」


「黒色が好きなの?」


「いや……大嫌いだけど、僕には黒色しかないから白色なんかで薄めることができないんだ」


「君は黒色を薄めたいの?」


「あたりまえだ! 僕はこの黒色のせいでみんなと一緒になれなかったんだから……本当はみんなと仲良くなりたかったのに……」


いつの間にか涙が流れていた


ポツポツと黒色の滴がバケツに吸い込まれていく


「もう泣かなくていいよ。私が薄めてあげるから」


そういって女の子は


僕のすぐ隣りのバケツに水を満タンに入れ


そしてその水を僕のバケツに注いだ


何度も何度も


繰り返し繰り返し


満タンに入ったバケツを持って……


重たいハズなのに


女の子は苦しい顔もせず


僕に微笑みかけながら


その行動を繰り返していた


そんな彼女の姿を見て


僕の頬には


透明の涙が伝っていた










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  失礼しますm(__)m  楽しく読ませていただきました。  優しい素敵な詩だと思いました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ