片恋の実り
人を想うことは、やはり、玄妙なこころの動きのようで、片恋となっても、断ち難い辛さとともに、その時々の記憶が、懐かしく暖かく、そして微笑ましく思いだされるようです。
別れた人の面影は 思いきれない淋しさを
合わせ鏡で覗くよう 尽きることなく突きつけて
零れた水が器には 戻らぬことを知らしめる
別れた人の言の葉は こころを琴の糸のごと
掻き鳴らしては、その傷を 優しく癒す歌となり
零れてさえも尽き果てぬ 慈愛の水と思わせる
別れた人の思い出は 苦しき胸に狂い咲き
実る意味なき片恋の 果実を甘く実らせて
哀しき我に、ふと、笑みを 与えて、過去をいまとする
想いとは、人を恋うれば、我が胸に熟れてゆく実と気づく秋の日