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4日目 夜 自室にて

幕間です。

飛ばして貰っても大丈夫ですが、主人公の独白となります。



 実験継続がほぼ霧島君の主導で決まってしまった夜、私は自分の部屋でここ数日の出来事について考えていた。

 猫家先生が愛猫団を立ち上げた理由は不明なまま、実質的な権限は霧島君に奪われてしまった。霧島君の目的も不明だ。

 今回の実験が霧島君が語ったようにクラスの団結や生徒の規律ある生活で品格を高める事を目的としているなら、それは確かに素晴らしいことだと思うが、そう語る霧島君を見る先生の表情から、とても其れが目的だったとは思えない。

 だいたいにおいて、そんな目的なら「実験」なんて言わないと思うのだ。正直に目的を伝えてルールの導入を生徒に納得させればいいし、私ならそうする。

 生徒がルールに従うようにわざと実験なんて言った可能性もあるかも知れないが、可能性はだいぶ低いだろう。別に目的があったと考えるのが自然だ。そして、霧島君もまた、其れが目的とは思えない。

 確かに表向きそんな効果が出始めているため、後付けで解釈出来なくはないのだろうけど、別に愛猫団が無くなっても、クラス自体は存続するのだ、団結や規律ある生活の実践に愛猫団が必ず必要な訳ではない。

 実験者が中断を訴えているのを、無理に引き伸ばす理由にはなり得ない。恐らく霧島君は先生の本来の目的に気付いてるはずだ。

 そうして考えられる可能性は3つ。

 一つ目は私の考えすぎで、先生も霧島君も語った通りの目的で今回のことを行っているという可能性。

 二つ目は先生の本来の目的を霧島君は知らず、霧島君自身は語った通りの目的で動いてる可能性。

 三つ目は霧島君が先生の本来の目的に気付いた上で、あえてあんな大義名分を掲げて活動を継続した可能性だ。


 一つ目と二つ目は問題ないとは言わないが、結果はそう悪いものにはならないと思う。結局のところ品行方正な集団になるだけの話しで終わる。

 だが、そうは思えない。三つ目の可能性が高い、そして、その場合は二つのルートがあるはずだ。

 一つは霧島君が先生の実験を利用して語っている目的にそって動いているルート

 二つ目は霧島君が先生の実験を利用して、さらに語っている目的を隠れ蓑に、某かの目的を隠して動いているルートだ。

 私にはどうしても二つ目だと思えてならない。

 あそこまで団のルールと存続に頑なに拘るのはやはり変だ。でも、霧島君の目的も、そもそもの先生の目的すら見えて来ない。

 数日前まで極普通だったはずの私達のクラスは何か良く分からない不気味なものへと変貌していっている。怯えた顔で霧島君に従った雪代君や先生を思いだして、何か良くないことが起こっている不安だけが燻る。


 とにかく、霧島君に注意しようと決意する。

 これ以上、私達の平穏を崩されてはいけないと思う。父が私の名前をつけてくれたエピソードを語った時の事を思い出す。

 「父さんな、お兄ちゃんの次に真実が産まれて、すごい悩んだんだけど、間違えてもいい、嘘ついてもいい、人間なんだから失敗はするから、でも最後には真実を真っ直ぐ見据えて間違いを正せる強い子になって欲しいってつけたんだ」

 そのあと、父さんは間違いだらけで正しかったことなんて母さん選んだことくらいだけどな、と笑って、母さんに思い切り叩かれてたけど。

 

 大事な家族に正面向いて私はちゃんと向き合ったと言えない結末だけにはしない。そう決意したんだ。


 たった数日だった、でも、後から考えれば遅すぎたんだ。少なくともこの日のホームルームが引き返せる最後のチャンスだった。

 本当に最後のチャンスだったんだ。

お読み頂きましてありがとうございます( ≧∀≦)ノ

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― 新着の感想 ―
 集団というのはこれだから怖い。  集団の総意という建前の前では個人の意見はどんなに正しくても通しづらいのが現実。集団に属する者たちはもちろんのこと、責任のある立場にとっては特に悪夢ですよね。自業自得…
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