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それからの事

応援ありがとうございますm(_ _)m



 子猫団関連サイトが閉鎖されアプリのサービスが停止されたのは会見が行われた12月28日の翌日だった。会見の内容に批判的な声もあったが概ね好意的でネットでもアプリの閉鎖を惜しむ声などが散見されるほどだった。

 既存メディアはすでに組み込まれている年末年始の特番を差し替えてまでこの話題を追うことはなく、三友グループも霧島銀行も業務が休みの中で会見を行った訳で処分などこれ以上の決定については年明けて、業務が再開してからになるとネットを通じて発表された。

 

 年が明けて西ヶ丘中学校も冬休み開け、私たちの2年3組には猫家先生、霧島君、須藤さん、藤枝君の姿は無かった。

 猫家先生は体調不良による無期限の休職願いが受理され自宅療養をすると学校側からの説明が書面にてなされた。年度が変わり、私たちが3年になると同時に先生は依願退職という形で教職を去っていった。

 須藤さん、藤枝君はそれぞれ、母方や父方の実家に引っ越してそちらの学校に冬休み中に転入したそうだ。そして霧島君はアプリ事業の責任者として内々に処分が決まった霧島君の父、霧島拓の転勤で家族ごと東京に引っ越していったらしい。

 三友グループや霧島銀行が今回の件で受けた損害は少なくは無いものだった、企画していた関連商品の販売停止、商品回収などがあり、何人かの降格、減給、訓告処分が発表されたのだが霧島拓も鷲追支店頭取から東京第1支店部長への降格処分という発表がなされた。ただ、これには少なくない批判がでる、役職は降格だが地方支店から東京の本店に近い支店への移動は栄転なんでは無いかと、しかしそんな批判もすぐに忘れられ、翌年には同支店副頭取へと昇進することになる。

 霧島君本人はと言えば、涙の会見ですっかり印象を良くした彼は今回の経緯を書籍化して発表、そして謹慎処分となった富館漣人の復帰作としてドラマ化することが決定した。なんと富館漣人と霧島君は本人役で出演らしい、因みに雪代君、渡部君はそれぞれ男性アイドルグループ、ジャポネス事務所の育成メンバーであるジュニアから人気上昇中の2人がつくらしく、加奈ちゃんは人気アイドルグループのセンターの子が相澤さんはギャル系インフルエンサーが抜擢されるようで、随分と豪華だ、事件を風化させず教訓とするためと、監督が語り、霧島君が意気込みを含めて会見を行った。霧島君はこれにあわせて富館漣人と共同で動画配信も行い、人気芸能人へとステップアップしていった。


 春休み、3年生になる手前で私は雪代君と二人、他県にある室川さんのお墓へと訪れていた。


 「ごめんね、付き合わせちゃって」

 帰りの新幹線の中で私は雪代君に謝る。

 「いいよ、俺だってお参りに行きたかったし、旦那さんとも会いたかったしな」

 室川さんの旦那さんは奥さんの死を自分がしっかりと向き合えなかったせいだと語り、ママさんバレーチームのメンバーや、子猫団アプリ関係者を訴える気はないと早々に発表した。三友グループ、霧島銀行ともに室川さんにたいする哀悼と残されたお子さんへの養育のためにとお金が振り込まれたようで、ようは示談金だろうということだ。これに嫁の自殺で金をせしめたと揶揄するのだから悲しいことだ。

 「旦那さん、私たちにありがとうって言ってくれたね」

 「そうだな、墓参りしたいって言ったら是非って言ってくれたし」

 車窓に満開の桜並木が写る。

 「…私さ、卑怯ものなんだよ、雪代君が私を好きって知ってて、断られないってわかって誘ったんだ」

 「そんなのっ…別に問題ないよ、さっきも言ったろ、俺は自分でも行きたかったし」

 「それにね、私さ…やな奴なんだよ、室川さんが自殺してショックだったけどさ、…内心、室川さんで良かったって、…加奈ちゃんや相澤さんだったら、もし渡部君や…雪代君だったらって」

 私は其処で言葉に詰まってしまう。嗚咽に喉がひくついて上手く喋れない。ダメだ、また泣いている。どうしてこんなに弱くて卑怯なんだ、私は。

 顔をあげると雪代君が困惑している、あー幻滅したかな、でも、これでいいんだ、優しくてカッコいい雪代君には私なんて似合わないから、下を向いた私を対面に座った雪代君がこちらに移って抱き締めてきた。

 「ゆ…雪代くんっ」 

 びっくりして顔をあげると雪代君が泣いていた。

 「お前さ、なんでそんなに自分を悪者にしたがるわけ、室川さんで良かったってのは驚いたけど、そんなの皆思うんだよ、俺だってお前が自殺したらなんて考えたくもない。俺だって卑怯なんだよ、墓参りに誘ってくれて、『やった、二人きりで旅行だ』って喜んでたんだぞ、不謹慎だろ」

 そう言った雪代君は私の肩を両手で持って体を離す、そのまま私の目をじっと見てくる、逸らすこと出来ないまま見つめあっていると

 「俺は高波真実が好きだ、大好きなんだ。正直、霧島も猫家先生も…渡部や倉持、相澤だって、どうなっても関係ない、俺はお前が笑っていてくれたらいいんだ、…やな奴だろ…お前より…やな奴だよ、だから気にすんな、ごめんな、抱きついて、気持ち悪いよな」

 そう言った雪代君は少し下を向いて声が小さくなっていく。あー、やっぱり私は雪代君が好きらしい、本当にどうしようもない。大好きだよ、ちくしょー。


 「疼矢君、ありがとう。私ね、やっぱり卑怯なの。そうやって慰めてくれるって、わかってたんだから、でも、」 ~そのくらいの信頼しちゃってるんだ~


 恥ずかしいし、自己嫌悪だし、本当に最悪だ。責任とってよね、疼矢君。

 

 「…あ…いや、って、今、疼矢君って」

 パニくってる疼矢君が可愛くて、あー、私は本当に大好きなんだって思ったんだ。

次話で最終となりますm(_ _)m

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