8日目 波乱の週末
子猫団についてです。
実験開始から2回目の金曜日、私たち反対派は激しいバッシングをクラスメートから受けていた。
「いい加減にしろよ、お前らはクラスの団結とか言いながらクラスメートを虐めんのかよ」
雪代君が声を上げたが、ルールを守らないのが悪いの大合唱が返ってくる、今、私には雪代君が加奈ちゃんには渡部君が付きっきりでついていないといけない状況になってしまった。
霧島君、藤枝君二人によって作成されたサイトとアプリは順調に登録者を増やしている。周辺地域の学校に通う霧島君や須藤さんをしっている人や藤枝君の同人のファンなど多いとは言えなくとも少なくはない人間から、口コミを経て増えているようだ。
正志さんは日丘教授とアポイントメントを取れたのは一週間後だと言っていた、関西地方で開催されるフォーラムに参加するため、来週末までは東京に戻れないそうだ。たった一週間だと最初は思ったが、正直その一週間がもどかしい。
昼休み、私たちは校長室に赴き、現状を訴えたけれど、正志さんが読んだように私たちの妄想、考え過ぎで片付けられてしまった。
教室に戻る廊下でふいに後ろから声をかけられる。
「次の反撃を楽しみにしてるよ、愛犬家諸君」
「霧島、てめえいい加減にしやがれ。クラスが分断してのに放置してんじゃねーよ」
雪代君が噛み付くが、それは私たちのせいでもあるため、キレが悪い。
「今すぐルールを守ってくれれば、何事もなく丸く収まるよ。実際、君たち以外はもうルールを守っているからね」
こうなってしまえば完全に私たちは弾圧される側だ。
「君たちは優秀だからね、粛正の対象にはしたくないのさ」
そういいながら去っていく霧島君の背中に雪代君が毒を吐く。
「独裁者きどりかよ」
私たちは一時休戦で緊急回避すべく、ルールに従うことに決めた。
クラススリングに霧島君がチャットをあげる。
「第2段は我々の勝利だ」
再反撃の手がないまま時間が過ぎていった。
土日に入るとアプリやサイトの登録者数は確実に増えていた。藤枝君のフォロワーには結構な拡散力を持つ人物がいたようだ。藤枝君を中心にサイト利用者用の裏サイトやアプリ利用者向けの攻略サイトが作られ、利用者サイドでも様々な関連サイトが立ち上がる週明けを待たずに私たちの想像を上回る速さで拡散されていく。
私たちは甘くみていたのだ。所詮は個人の自作サイトやアプリだと、だが、霧島君と藤枝君、二人の仕込みでSNSでブログをあげている彼らのフォロワーがサイトやアプリを宣伝している、可愛らしい子猫のスタンプはサイトやアプリの内容を無視して女子たちに広まっている。
週明けが怖い、学校で口コミが始まれば拡散のスピードが上がるかも知れない、なにより、新規参入者を招待特典のために指導する者たちが子猫団的コミュニティを形成すれば、霧島君はあちこちに子や孫にあたる組織を持つことになるだろう。霧島君が全容を把握しないまま。
霧島君の目的が見えない、今やこの活動を牽引し実権のほぼ全てを掌握しているのは彼だ、トラブルが起こり問題になったときに猫家先生を隠れ簑に責任転嫁するのは難しいだろう。なのに霧島君は積極的に暴走させようとしている。はっきりいって一つ一つの活動はうまくいくかは未知数で正直、杜撰とも言えるけれど、嵌まってくれればいいといった感じなんだろうか。
私たちが一旦は終息させかけた愛猫団本体の活動に霧島君は「目的を達成した」と言った。現状のクラスを見れば愛猫団の目的がクラスの団結を高めるもので無かったのはもう明白だ。霧島君は子猫団立ち上げの名目が欲しかっただけなんじゃないか。少なくとも最初の成功例として愛猫団の実績を喧伝したかったはずだ。
其処まで考えて、私はこれだ、っと思った。そうだ、現状サイトで本体である愛猫団の活動はあまり紹介されていない、最終的には暴走のはてに問題が起きてもいいというスタンスだとしても、現状でモデルケースとして紹介する予定の本体組織が分断状態で問題を抱えているのは不味いはずだ。
たった半日程度だったけど休戦撤回だ。それに向こうが盤外戦を仕掛けるなら、こっちもやろう、なんで正志さんが教授とコンタクト取るのを悠長に待ってるつもりなんだ私は。相手だっておなじ中学生だぞ。
雪代君に連絡を入れて、反愛猫団派を校内全体から募るべく、知恵をかしてほしいと頼む。
さぁ第3回目の対策会議だ。
次回は第3回目対策会議です。
応援ありがとうございます( ≧∀≦)ノ