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女忍者カゲロウ

ゴルゴダ村 


俺が村に入ると、俺の先に依頼を受けていた冒険者パーティが村人たちから歓迎を受けていた。


「ようこそゴルゴダ村へ。魔法戦士キューティフォースの皆様」


ハゲ頭を下げる村長の前では、戦士・魔術師・治療師・忍者の恰好をした四人の美少女がいた。


「まあ、私たちに任せておきたまえ」

「ゴブリンなど瞬殺ですわ」

「困っている人は見捨てられませんからね」


戦士、魔術師、治療師は胸をそらして威張る。


「あ、あの。ボクたちだけで大丈夫かな?」


それに対して、気弱そうに口元を頭巾で覆った忍者の少女は不安そうだった。黒い髪のスレンダー美少女である。


そんな彼女に、ほかの三人は冷たい視線を向ける。


「戦いの役に立たないやつは黙ってろ」

「あんたは偵察役なんだから、危険は少ないでしょ」

「ゴブリンを放置して、罪もない人が苦しむのを放置するつもりですか?」


三人から責められて、気弱そうな女忍者は下を向いてしまった。


「やる気がないんなら、帰ってもいいんだぜ。その代わりパーティから追放だ。田舎から来たお前を拾ってくれるパーティなんてほかにあると思うのか?」


戦士に責められて、忍者の少女はしぶしぶ頷く。


「わ、わかったよ」

「わかればいいんだよ。いくぞ!」


冒険者たちは、一人を除いて意気揚々とゴブリンたちの巣である洞窟に向かっていった。


「あんなお嬢ちゃんたちで大丈夫かなぁ」


俺は少し心配になるが、他人である俺に口出しする権利はない。


「まあ、人のことはともかく、依頼をこなすか」


俺はゴブリンの洞窟の近くにある薬草の群生地に向かった。



ボクの名前はカゲロウ。東方のジパングの出身で、こう見えても由緒正しい名門の出だ。


そんなボクが単身この帝国に潜入したのは、どうしてもある情報を探らなければならなかったからだ。


だから冒険者パーティーに潜入して市井の情報を集めようとしたんだけど……。

どうやら、入るパーティを間違っちゃったみたいだ。


「どうやら、あの洞窟がゴブリンの巣みたいだよ」


ボクが先行して収集した情報を伝えると、戦士たちはいっせいに剣や杖を振りかざした。


「よし、行くぞ!」


そのまま突撃しようとするので、ボクは慌てて止めようとする。


「ま、待ってよ」

「なんだ!怖気ついたのか」


嘲笑を向けてくる仲間たちに、ボクは根気よく説明する。


「まずゴブリンを巣から誘い出して、少しずつ倒そう。ゴブリンたちの小さい体に適合した狭い洞窟に逃げ込まれたら、剣や魔法をふるおうにも無理だよ……」

「関係ねえ。逃げられる前に殲滅すればいいんだ。いくぞ!」


戦士たちは雄たけびをあげてゴブリンに襲い掛かっていった。


「ほらほら、かかってこい!」

「死になさい」

「汚らわしい魔物たちよ。神の裁きを」


三人は順調にゴブリンたちを討伐していった。



「はぁ……はあ。これで全部か。あっけなかったな」


戦士が剣を振りかざして悦に入っている。洞窟の外に出ていたゴブリンたちは全滅していた。


「そあ、行くぞ」


戦士の号令で、ボクたちは洞窟に入っていく。洞窟の魔訶は予想通り狭くて、人ひとりが通り抜けるのがやっとだった。


「うう……嫌な予感がする……」


偵察として一番前にしたボクは、慎重に一歩一歩進めていく。その様子に戦士たちはいら立ち、騒ぎ出した。


「おい。何をぐずぐずしているんだ。さっさと行け!」


尻を蹴り上げられて、温厚なボクもカチンときてしまう。


「こんな暗くて狭い洞窟で走れるわけないじゃん」

「なんだと!」


言い争っていると、いきなり前方から太ったゴブリンがやってきた。


「グフフ。オンナ。ヒサシブリ。クンカクンカ」


まるで豚のように発達した鼻で、ボクたちの匂いをかぐ。


「やばい。こいつはオークゴブリンだよ。ゴブリンとオークのハーフで、確か強さも性欲も桁外れになってゴブリンの群れを率いるといわれている」

「関係ねぇ。こいつさえ倒せば依頼達成だ」


戦士たちは自信をもって剣を構える。


「オレノコヲウメーーー」


興奮したオークゴブリンは、通路いっぱいに広がる巨体を揺らして襲い掛かってきた。



狭い通路内で、オークゴブリンとの乱闘になる。


「くっ!このっ!」


戦士が剣を振り回そうとするが、壁に当たって跳ね返されてしまう。


「ファイヤボール!」

「きゃっ!」


魔術師が放った魔法は、オークゴブリンのぶよぶよした腹に跳ね返されてしまった。


「何しているんですか?ファイヤーボールなんかで倒せるわけないでしょ」


それを見た治療師が激怒する。


「し、仕方ないじゃん。こんな狭い場所じゃろくに魔力も集められないんだから」


魔術師はそう言い返す。その間にもオークゴブリンはよだれを垂らしながら迫ってきた。


「ボクが戦う」


姫様からもらった短剣を振りかざし、ボクはオークゴブリンに立ち向かう。この狭い通路で有効な武器は、これしかないみたいだ。


「くそっ」

「フハハ。ハラガカユイワ」


ボクが突き出した短剣は、ホークゴブリンの柔らかくて弾力のある腹に跳ね返させてしまった。


「まずい。こいつの体には刃物も魔法も効かないみたいだ。僕がこうやって時間を稼いでいる間に、なんとか体制を立て直して……」


そういって振り返ったボクが見たものは、仲間の三人が武器を放り出して走り出すところだった。


「こ、こんな狭い洞窟じゃ戦えねえ。撤退だ!」


女戦士が悲鳴を上げて逃げていく。


「ま、待ってよ」

「置いていかないでください」


続いて、魔術師と治療師もついていく。置き去りにされて、ボクは茫然としてしまった。


「そ、そんな。ボクを置いて逃げるなんて……」


絶望するボクの鼻先に、オークゴブリンが尻を向ける。


「クラエ。ヒュプノスブレス」

「くさっ!」


オークゴブリンの屁を嗅がされて、ボクの意識は遠のいていくのだった。



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