アクダンカン
私たちは憲兵に拘束され、帝都の商業街近くにある豪華な屋敷につれてこられてしまう。
「なぜ憲兵本部ではないのだ?」
「ぐふふ。長官命令だ。貴様たちは憲兵隊長アクダンカン様がじっくり取り調べてやる」
ひげの憲兵の言葉に、私の不安が高まっていく。
「ギャウギャウ」
タマも見知らぬ場所に連れてこられて不安になったのか、不安そうに鳴いていた。
「大丈夫ですよ。お話すればきっと分かってくれると思いますから」
姫はそんなタマを抱き上げ、宥めていた。
私たちは屋敷の中庭に面した応接室につれてこられる。
待っていたのはいかにも悪そうな顔をした中年男だった。
「ぐふふ。こいつが聖女とやらか。それに金色のドラゴンとは、高く売れそうだ」
その中年男は私たちをみるなりいやらしそうな眼付でなめまわし、タマを値踏みした。
「無礼者!私は王族護衛騎士エリス・フォン・ヒラテ。そしてこちらは第五王子トランス様の婚約者、サクラ・ミズホ・ジパング様だぞ、控えよ!」
私はそういって脅しつけたが、中年男はせせら笑った。
「……嘘をつくな。何が騎士に姫だ。そんな高貴なお方が孤児院で酒など飲んでいるわけがない」
中年男は私の言葉を鼻で笑うと、威張りながら名乗った。
「ワシは帝都の治安を守る憲兵隊長アクダンカン様だ。貴様たちが孤児院に居座るせいで、迷惑しておる。だが……」
アクダンカンは姫をねっとりと見つめる。
「下賤の者とはいえ、聖女と呼ばれるだけあって美しい。ぐふふ。そのほう、ワシの妾にならんか?スラム街にいるより贅沢をさせてやるぞ」
「お断りします」
姫はにっこりと笑いながら、差し伸べられた手を払いのけた。
アクダンカンは一瞬不愉快そうな顔をするものの、すぐにいやらしい笑みを浮かべる。
「ぐふふ。いくら反抗しても無駄じゃ。おい。アレをもってこい」
「はっ」
傍に控えていたひげの憲兵が部屋を出てい行く、しばらくしてもどってきた奴は、その手にまがまがしい黒い首輪をもっていた。
「それはなんだ?」
不安になる私をあざ笑いうのように、アクダンカンは得嬉々として話し出した。
「これは、重犯罪者用の『隷属の首輪』だ。奴隷よりさらに地位が低い『奴婢』に対して使われる。これをつけられた者は、主人の命令に逆らえなくなるのだ」
アクダンカンは首輪をもてあそびながら、憲兵たちに合図する。憲兵たちによって、私たちは押さえつけられた。
「放せ!」
「ぐふふ。まずはドラゴンからだ」
動けない私の目の前で、アクダンカンはタマをつかまえる。
「ギャウギャウ」
「くくく……ドラゴンの血は若返りの薬となり、鱗からは伝説の武器が作れると聞く。殺さぬようにじわじわと血と鱗をはぎ取って、永遠に金づるにしてやろう」
暴れまくるタマを押さえつけ、首輪をつける。
「ギャッ」
「ふはは。今日からお前の主人は私だ。動くな」
首輪をつけられた瞬間、タマの体に電流が走り、ぐったりと倒れて動かなくなる。
「くくく……首輪が正常に作動しているか、試してみるとするか」
アクダンカンは動けないタマの尻尾の鱗を一枚はぎ取り、そこから流れ出た血をビンに入れた。
「ギュィィィィィィィィィィィィィィィィ」
無理やりしっぽの鱗をはがされたタマは、痛がって泣きわめく。
「放せ!」
私はこれまでにない怒りを感じ、そのまま強引に押さえつけている男たちを振り払い、タマにかけよった。
「ギュ……」
タマは私の腕の中で、苦しそうにあえいでいる。
その時、抱きしめているタマから強力な魔力が伝わってきた。
「タマ……お前だけは守ってみせる」
私はタマを守りたい一心で、全身から魔力を放出した。
「な、なんだこの光は……結界?」
タマを中心とした球形の結界が生まれ、私たちを守るかのように包み込んでいった。




