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パーティ

「えーーっと、王子?」

「これで問題解決じゃの。めでたしめでたし」


王子は扇子を広げて妙な踊りをしますが、本当にこれでよかったんでしょうか?


親分さんは何度も壁に打ち付けられて、とうとう泣き出してしまいました。


「な、なんでこんなことするんだよぅ!俺たちは何も悪いことしてないのに」

「悪いことをしていないじゃと?」


王子がじろりと睨みつけると、親分さんは懐から借用書を取り出して突き付けてきました。


「この契約書をよくみろい」


どれどれ……借金金貨1000枚を期日までに返せない場合は、孤児院の立ち退きに合意しますって確かに書かれています。


「お、俺たちだって貸した金がかえってこないと困るんだ。こうなったら、憲兵所に訴えるぞ」


こまりましたね。兵士さんたちを呼ばれたら、王子がつかまってしまうかもしれません。


「なあ、頼むよ。さっきガキたちを奴隷にするって言ったのはわるふざけだ。謝る。俺たちにも生活があるんだ。金を返すか、大人しくここから出て行ってくれ」


親分さんが鼻血を出しながら土下座して頼んでくるので、なんだか可哀想になってきました。


「仕方ないのう。カゲロウ、さっきの賞金を出すがよい」

「え?これ?」


カゲロウが戸惑いながら賞金が入っている袋を渡すと、王子はそれを親分さんに向かって投げました。


「これでよいな?」

「あ、ありがとうございます」


袋の中身を確認すると、親分さんはぺこぺこ頭を下げながら借用書を渡してきました。


「お、親分。話が違う。勝手にそんなことをしたら」


それを見ていた子分さんたちが反対していますが、親分さんは彼らを怒鳴りつけます。


「うるせぇ。とにかく金は返してくださるっていうんだ。こんな目にあってまで、これ以上あいつの言う事を聞く義理はねえ。すんません。俺たちゃこれで失礼させていただきます」


親分さんは子分さんたちを引き連れて、馬車にのって帰っていきます。後には微妙な雰囲気が残されました。


「あ、あの、王子。勝手に賞金を使っちゃっていいの?あれはハンケツ仮面に渡すお金じゃ?」

「心配するでない。余はハンケツ仮面の親友じゃ。困っている者を救うために使うのじゃ。必ず納得してくれると信じておる」


カゲロウの問いかけに、なぜか王子は自信たっぷりに答えました。


「さあ、ともかく、これで借金は無くなった。子供たちよ、これからしっかりと梅酒を作って金を稼ぎ、自立するのじゃ」


王子の宣言に、子供たちがワーッと歓声をあげるのでした。




今、私たちは孤児院の庭で、ささやかなパーティをしています。


「白い顔の兄ちゃん。強かったなぁ。やくざたちをボコボコにして」

「いやいや、俺はハンケツ仮面が強いと思う。あんなでっかいモンスターを倒したんだぜ」


子供たちが、今日私たちを救ってくれた二人のヒーローについてお話しています。


彼らはどっちが強いか言い争っていました。


そうですね。私も王子がまさかあれほど魔法を使えるとは思いませんでした。


「ギュウギュウ」


その王子は、タマちゃんに焼き肉をあげています。


「そうかそうか。おいしいか。たくさん食えよ」

「ギャウ」


タマちゃんは嬉しそうに、王子に身を摺り寄せました。


あれ、そういえばなんでタマちゃんハンケツ仮面様と一緒にいたのでしょう。


疑問に思った私は、王子に聞いてみることにしました。


「王子はハンケツ仮面様と親しいのでしょうか。タマちゃんをお預けするぐらいに」

「そ、そうじゃ、親友、いや兄弟といっても過言ではないのぅ」


王子はとぼけた顔をして、あさっての方向をむきます。


『余』という自称を使い、王族にしか現れないといわれる伝説の竜尾鱗を持つハンケツ仮面様。王子が彼と同じ風の魔法を使い、タマちゃんが二人に同じように懐いているということは……。


私の頭の中で、いくつかのピースが繋がったような気がしました。


「王子、ぶしつけなお願いですが、お尻を見せてくださいませんか?」


そう言われた王子は、ビクッと体を震わせて首を振りました。


「い、いやじゃ。恥ずかしい」

「何が恥ずかしいんですか。いつもお尻丸出しで城内を逃げ回っているくせに」


エリス様が呆れていますが、今の態度で確信しました。


「そうですか。それでは、王子からハンケツ仮面様によろしくお伝えください」


王子が動揺して汗だくになっているので、これ以上の追求はしないことにしました。


(ふふ。王子との結婚は政略目的で、好きも嫌いもないとおもっていましたが、なぜか今はうれしいですね。この人が婚約者でよかったです)


そんな温かい気持ちに浸っていると、セリナさんがやってきました。


「あの……えっと……お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか」


セリナさんは、なぜかもじもじしながら聞いてきました。


「そうじゃな。余のことは白面の者とでもよぶがいい」

「白面様。私たちを救ってくださいまして、ありがとうございます」


上気した顔でぺこりとお礼をします。そういえば、彼女は王子に救われたんでしたっけ。


「余は何もしておらんぞ。そなたたちを救ったのはハンゲツ仮面じゃ」

「いいえ。私たちが自立して生きていけるよう手を尽くしてくれたのは白面様です。心からお礼申し上げます」


セリナさんは、王子に真っ赤な顔でお礼をいいました。


「それで……あの、私をあなた様の奴隷にしていただきたいのですが」

「ど、奴隷?」


王子はびっくりしています。もちろん私も耳を疑いました。


「な、なにゆえ?」

「その、お借りした金貨1000枚の代わりになるとはおもえませんが、頑張ってご奉仕しますので」


セリナさんは、恥ずかしそうにスカートをたくし上げながら申し出てきました。


「ご、ご奉仕?ぐへへ」


あらあら、一瞬だけ王子から邪悪な気配が。ここは私がたしなめないといけませんわね。


「あらあら。いけませんよ。あなたみたいな少女がそのようなことを言うのは。自分の身は大切にしないと」


こほん。ここは年長者として叱ってあげないといけません。私は優しく微笑みながら、諭してあげました。


「でも……」

「お気になさらず。あなたが今なすべきことは、孤児院の仲間を大事にすることです。王子もいいですね」

「は、はい」


王子は素直にうなずいてくださいました。よろしい。


「ひ、姫が怖いぞ」

「あんな姫初めてみた。どうしちゃったんだろう」


エリス様とカゲロウが何かひそひそお話しています。


なんですかそのおびえた顔は。私は人としてのモラルを説いているだけですよ。少女に手をだすなど、たとえ王子であっても許されることではありません。


「王子。婚約者として少しお話があります。こちらに」

「は、はい」


そのあと、たっぷり説教させていただき、王子としての心構えを学んでいただくのでした。


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