素材集め 続
モッチースライムを回収した俺たちは、次のモンスター生息地に赴く。
そこは、ドカイナ村から少し離れた所にある山中だった。
「うう……もうやだぁ。お風呂に入ってもまだべとべとしているよ」
「しっかりしろ。姫のためなんだろ」
泣き出しそうなカゲロウをはげましながら、俺たちは山を登っていく。
しばらくいくと、きれいな小川が流れる沢に出た。
「あっ。みてみて。かわいい」
そこで一心不乱に何かを洗っている生物を見て、カゲロウは目を輝かせる。
それはアライグマのような魔物だった。
「油断するなよ。あれがコ―ガンウォッシャーだ。とりあえずこれをつけろ」
俺はカゲロウに、小さな木のシールドのようなものを手渡した。
「どこにつけるの?」
「こうだ」
「えっ?な、なにするんだよう。えっち!」
抗議するカゲロウを無視して、彼女の忍び装束のガーターベルト前部にシールド取り付けた。
「なんだよこれ。これって貞操帯みたいじゃん」
「いいか?コ―ガンウォッシャーは自分の股間袋に小豆に似た卵を隠して孵化まで守り抜くという性質がある。その時卵が腐らないように、定期的に水洗いするんだ。その状態の時に不用意に近づくと……」
自分の股間を指さす。
「男女関係なく襲われて、股間を洗われるんだ」
それを聞いたカゲロウは、真っ赤になった。
「うう……変態。帝国ってこんな魔物ばかりなの?」
「我慢しろ。姫の為に小豆をもってかえるんだろ。ほら、行くぞ」
そう言い捨てると、俺は魔物に近づいていく。
「うう、はずかしい……貞操帯を付けて外を歩かせるなんて、どんなプレイなんだよぅ」
カゲロウはぶつくさ文句をいいながら、ついてきた。
「まず、俺が囮になるから、隙を見て後ろから倒せ」
「わかった」
カゲロウは油断なく短剣を構えて、コ―ガンウォッシャーの後ろにまわる。
「へいへい。タマタマぶらりんタマぶらりーん」
俺はコ―ガンウォッシャーの前に出ると、自分の股間を見せつけた。
「グァ?」
おっ?うまく興味を引けたかな?ウォッシャーは俺の股間を凝視している。そして、少しずつ手を伸ばしてきた。
(いまだ。やれ!)
(うん!)
カゲロウが背後から襲い掛かろうとしたとき、俺の股間から金色のドラゴンが出て、ウォッシャーの手をひっかいた
「ギャウ」
「グェッ?」
ウォッシャーは、びっくりして手をひっこめる。
「ㇷガッ」
タマキンは、俺の股間を守るかのように威嚇の声をあげた。
「た、タマちゃんなにしているんだよ。これじゃ作戦がだいなし……うわっ」
カゲロウが叫び声をあげる。俺の股間に手を出せなかったウォッシャーは、ターゲットをカゲロウに変えておそいかかっていた。
「こ、こら、やめろ。あっ。助けて!」
カゲロウは必死に股間のシールドを死守しようとするが、鋭い爪でガーダーベルト自体を切られてしまう。
「い、いやーーーーー!」
自然豊かな小川に、カゲロウの叫び声が響きわたるのだった。
「いい?今日のことは絶対に誰にも内緒だよ」
ボクは何回もハンケツ仮面に念押しする。
「わかったわかった。洗われてしまったことは誰にもいわんよ」
「だから!」
口元に手をあててしーっとすると、ハンケツ仮面は苦笑して頷いてくれた。
「まあ、よかったじゃないか。なんとか材料は用意できて」
そういわれて、ボクは袋の中を確認する。モッチースライムの体とコ―ガンウォッシャーの卵がそろった。これでダイフクが作れるね。
「それで、報酬なんだけど……」
金貨を渡そうとすると、笑って首を振られた。
「いいさ。いいものを見れたしな」
「このスケベ!」
ボクは真っ赤になって、ハンケツ仮面をポカポカと殴る。
「あ、あの。ボクはこう見えてジパング国の貴族の娘なんだ。その、恥ずかしいところをみられちゃったし、こうなったら責任取って、両親にちゃんと挨拶して……」
「おう。帰ってきたのか!一杯付き合えよ」
大事なことを言おうとした時、狩りから帰ってきた冒険者たちに声をかけられてしまった。
「よし、ぶぁーーーっといくか!」
「あ、ちょっと……」
ハンケツ仮面は冒険者たちと肩を組んで、行ってしまった。
「あーあ。行っちゃった。ちゃんと責任取ってよね。嫁入り前の娘のあんな所をみちゃったんだから」
ボクは一つ肩をすくめると、後宮に帰っていった。




