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後始末

「エリス様、大量発生した魔物の駆除は終了しました」

「そうか、後始末は任せる」


私は兵士と冒険者に街道の再開を任せ、姫が滞在する宿に戻ってきた。


「戻ったぞ。姫はお部屋でおくつろぎか?」


宿の主人に問いかけると、彼は真っ青な顔をして口ごもった。


「そ、ぞれが、姫はここにはいらっしゃいません」

「なんだと!この宿にご逗留していただくようお願いしているはず。どこに行かれたのだ!」

「そ、その……」


主人はなかなか姫の居場所をつげないので、私は不審に思った。


「はっきり申せ!」

「ひ、ひい、申し訳ありません」


宿の主人は土下座すると、姫が正体不明の女たちに誘拐されてしまったことを白状した。


「ばかな!なぜそんな事になったのだ!」

「そ、それは、姫が来られる前から元々湯治客として滞在していた女なので、まさか賊だったとは露にも思わず」


それを聞いて、私は魔物の大量発生が偶然ではなく、姫をこの村に足止めするための策だったことに気づいた。


「ハンケツ仮面は?姫の護衛を頼んでいたはずだ」

「姫を追ってあちらの方向に行きました」


それを聞いて、私は宿を出てすぐに追いかける。


村の外に出たところで、半裸の女の集団が逃げてくる所に遭遇した。


「ま、まさか雇い主が魔物だったなんて」

「助かってよかったわ。姫には悪いけど、殺されちゃったらハーレムも意味ないもんね」


それを聞いた私は、乗馬のまま女たちの前に立ちふさがり、剣を突き付けた。


「貴様たち!姫をどこにさらった」

「ひっ!」


剣を突き付けられた女たちは、恐怖のあまりその場にへたり込んだ。


「い、命ばかりは助けてください」

「いいだろう。すべて吐け」


私は女たちの口から、姫誘拐事件の黒幕に第二王子トラリスとビスマルクがいたことを知った。


「くっ!、姫が危ない」


私は女たちから小屋の場所を聞き出すと、全速力で馬を走らせる。少し走ったところで、小屋が見えてきた。


「姫!ご無事ですか?……って、え?」


小屋に飛び込んだ私が見たものは、気絶している第二王子トラリスと、それを苦労して縛ろうとしている下着姿の姫とカゲロウ殿だった。


「えっと、ロープで縛るのってどうやるのかしら。姫としての授業で習った気がするんだけど。こうかな」

「姫様、それは亀網縛りといって、特殊なプレイ用の縛り方です。あと、ろうそくも必要ありません」


えーっと。これはどういう状況だろうか?変態プレイの真っ最中にお邪魔してしまったのだろうか?


「あ、エリス様。ちょうどいいてころに来てくださいました。私たちを誘拐した犯人をお引渡しいたします」


ものすごくいい笑顔の姫に言われて、私はハッとなった。


「姫、ご無事でようございました。この度の責任はすべて私にあります」


私は姫の前に跪いて詫びる。そんな私を、姫は笑って許してくれた。


「いえ、お気になさらず」

「……誘拐犯のビスマルクは、カゲロウ殿が倒してくれたのですか?」


私は床に散らばったビスマルクの残骸を見て、思わず顔をしかめてしまった。


しかし、カゲロウ殿はゆっくりと首を振る。


「違います。エリス様が護衛にとつけてくれた、ハンケツ仮面に助けられました」

「ハンケツ仮面に……。して、奴はどこにいったのですか?」

「私たちを助けてくれたあと、風のように去っていかれました」


そうか。またしても借りができてしまったな。この恩は命がけで返さねば。


「本当に、変態だけど大した男だよ」

「どこの誰とも知れぬまま、お尻を向けて去っていく……それに、あのお尻の金色の鱗、あれは伝説の竜尾鱗?ふふっ。まるで物語に出てくる勇者みたいな方ですね」


あ、あれ?カゲロウ殿と姫の顔が上気している。も、もしや、二人はハンケツ仮面のことを。

まずい。それはまずいぞ。姫とは身分が違うのだ。奴のような男は、やがて騎士となり私と……はっ。私は何を考えているんだ?


私はなぜか胸の奥にかすかな痛みを感じながら、姫たちを護送するのだった。


サクラ姫誘拐未遂事件はすみやかにエリスによって報告され、主犯の第二王子トラリスとビスマルクの死体は帝都モンゴリアンに運ばれる。


「よくもワシの顔に泥を塗ってくれたな……」


皇帝トランは、自分の前に連れてこられたトラリスを鬼のような顔で見つめた。


「ち、父上、お許しを。私はただトランスのような愚か者に姫を嫁がせたくなかったのです」

「黙るがいい。愚か者は貴様じゃ」


トランは冷たく言い捨てると、処罰を言い渡した。


「第二王子トラリスの王位継承権と身分をはく奪し、追放処分とする。ひったてい」

「はっ」



トラリスはがっくりと肩を落としながら、連れていかれた。

その様子を、ほかの王子や王女はあざけりの視線で見送る。


(くくく。勝手に自滅した)

(これでまた一人競争者がいなくなった。この調子でほかの奴らをけおとしていけば……)


トランは嬉しそうな王子や王女を見渡すと、ため息をついて、御前に跪く女騎士に声をかけた。


「エリスよ。姫の様子はどうだ。この度の不祥事にお怒りになられて、婚約解消など申し出てはおられなんだか?」

「いえ、ハンケツ仮面と名乗る冒険者に救われ、むしろ大変ご機嫌がうるわしいご様子でした」


エルスから詳しい報告を聞くと、トランはひげをひねりながらうなり声をあげた。


「その者、なかなかあっばれな者よな」

「はっ。誠の騎士の心をもつ者だと思います」


エリスはなぜか顔を赤らめながらそう答えた。


「うむ。いずれ褒美を取らそう。それからエリス、引き続き姫の護衛を命じる。もちろんその夫となるトランスもじゃ。やってくれるな」


「はっ。お二人は命に代えてもお守りさせていただきます」


エリスは顔をあげて誓うのだった。


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