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第一章 第八話 三次職




 かすかに聞こえたスキル発動の声が脳裏に残っている。


「………っ!」


 今回は声を押し殺したため、周りから変な目で見られることもない。




(俺は……死なずに済んだのか。また戻ってきた……いや、戻って来れたのか。今回はキングにやられたあと戻ってきたんだよな。やっぱり死に戻りスキルなのか?)


 いつものよう考察を開始する。



(待てよ……最後死ぬ直前、振動があったがあれはなんだ? もしかしてキングが倒れた振動か? それでタイミングよくレベルが上がったと………いや、レベルが上がったかどうかはわからない。実際心臓を狙ったがそこは外れたはずだ。向こうでステータスを……って、あ! 今ステータスって開けるのか!?)


「ステータス」ボソッ


 周りに聞こえないよう小声で呟く。


(……………何も起きないか)




 そうこうしていると後輩たちが隣に座る。


(まぁ、どうせすぐ異世界に戻るんだろ? そこで確かめればいい)




 未だ目的も理由も分からない転移を繰り返す。




 異世界への転移も3回目となると慣れたもので、視界が確保される前にはすでにステータスを開いていた。






称号:[ゴブリンキラー]、[ジャイアントキリング]

職業:剣士

レベル:4

ランク:ー


HP:78/78

MP:20/20

STR:59

INT:14

VIT:45

AGI:48


EXP:8/1250


職業スキル

-バッシュ-消費MP3

-スラッシュ-消費MP5


スキル

<体術:4>、<剣術:4>、<投擲:2>、<回避:2>、<追跡:3>、<隠密:1>、<気配察知:1>、<魔法耐性:3>


エクストラスキル

=起死回生=




「おおっ! 称号が2つも付いてるぞ!」


 思わず声に出してしまう。インカネートオンラインだと称号の取得は難題であった。

 自身に対しプラスの効果をもたらすのもがほとんどで、プレイヤーは称号を得ようと試みるも、その無理ゲー加減に大多数が諦める。

 獲得条件が例えば、雑魚敵の大量討伐であれば非常に楽な部類だ。


 ただし大量というのは少なくとも100万体からなのだ。

 そんな称号が一気に2つも取得出来たのは思っても見なかったことだが非常に僥倖である。


(確かゴブリンキラーはゴブリン種に対して有利に立ち回れるという付与効果があったな。ジャイアントキリングは格上をソロで倒すと手に入る、ソロ時の対格上ステータス補正の称号だったよな)


 実際、ジャイアントキリングは取得条件が厳しいため、ほとんど持ってる人を見かけなかった称号だ。

 パーティ攻略が主だったインカネートオンラインでは有用性も少なくて取ろうとしてる人もいなかった。


(ステータスもそうだがスキルがガンガン上がっている。このスキル構成を見ると、エクストラスキルの発動前までの経験がフィードバックされているみたいだな)




 前回のゴブリンキング戦を思い出す。


(キングはSTR、AGI特化型みたいだった。おそらくSTR寄りだ、STRありきの速さだろう。今のステータスとスキルだとやはり敵う相手ではないな。前回は運が良かっただけだ)




 異世界、ステータス、スキル、またそれらの急激な上昇がオンラインゲーマーとしては胸躍る内容であったため、強くなった、俺なら出来る、と慢心していた。


 結果、油断も油断。


 自分より圧倒的上位の魔物に全く気付くことなく、殺されるところだった。

 あれが魔法使いで耐久が低かったら、と考えると身震いしてしまう。


(村人も救えなかったしな。もう油断はしない。出来ることは全てやり尽くそう。まずは職業の確認だ)


 そうこうしているうちにゴブリン3匹が奇声を上げ向かってくる。


(ちっ、職業は後回しか……まずは武器の確保をしよう)




 石を1つ拾い上げる。

 明け方ではあるのだが、まだ空は暗く月明かりでゴブリンの影は確認が確認出来る程度だ。

 だが投擲のスキルも手に入り、影だったとしても居場所はわかる。


(次スキルを獲得出来るなら夜目は欲しいところだな)


 全力でゴブリンに向かって石を投げつける。前回より速度の増した石はうなりを上げ、ゴブリンの頭にぶつかる。

 石が当たったゴブリンは頭が砕け、後ろ向きに飛ばされながら倒れる。


 次の石を拾い、全力で投げる。


 残りのゴブリンは何が起きたのかもわからず轟音を上げる拳ほどの石によってただ倒されていった。


(さて、職業だな)


 慢心と余裕は違う。今回は戦闘力に差があったため余裕があったのである。


 そして職業選択画面を開く。




選択可能職業一覧

・剣豪

・剣聖

・大剣士




(三次職キター!!! ゲーム通りならこれでベテランの域に入るはずだ! 候補は剣豪、剣聖、大剣士か)


 この三次職は武器により分岐が分かれる。剣豪は刀、剣聖は剣、大剣士は大剣だ。


 今手に入る武器で考えると


村長の自宅のショートソード

ゴブリンソルジャーのショートソード

ゴブリンのナイフ

ゴブリンの弓矢

ゴブリンメイジのステッキ(木の枝)


 である。


 選択肢は限られてくる。


 剣聖の文字に触れる。


 一度ステータスが閉じられるため再度ステータスを表示させる。




称号:[ゴブリンキラー]、[ジャイアントキリング]

職業:剣聖

レベル:4

ランク:ー


HP:178/178

MP:70/70

STR:129

INT:54

VIT:96

AGI:105


EXP:8/1250


職業スキル

-バッシュ-消費MP3

-スラッシュ-消費MP5

-一閃-消費MP10


スキル

<体術:4>、<剣術:4>、<投擲:2>、<回避:2>、<追跡:3>、<隠密:1>、<気配察知:1>、<魔法耐性:3>


エクストラスキル

=起死回生=




(……これ、かなり強くなってないか……? 思ってたよりステータスが上がってる)


 体も軽くなり、今ならなんでも出来そうな気がする。

 インカネートオンラインはレベルアップ毎に上級職へ転職出来る。同系統は最大9派生まで。故に最大レベルは10までである。

 剣聖系統で進めていくと、対ボスに有利な性能に特化していく。

 もっともレベル10まで上げれた猛者は数えるほどであったが……。


 今回はゴブリンの持っていたナイフを拾い、当面はこれで凌いでゴブリンソルジャーから武器を奪えばいいと思う。


(さて、ゴブリンキングは体の中央を刺しただけですぐ倒れたみたいだが、そこには何かあるのかな)




 倒れているゴブリンに近づき体の中央にグシュッと音を立てナイフを突き立てる。

 すると何か固いものに当たる。骨かとも思ったが、それはナイフを避けるように動く小さい石のような感触だった。

 気持ち悪いなと思いながらもそれを取り出すと赤い半透明のビー玉ほどの宝石みたいなものだった。


(これは、魔石か! そうか! ゴブリンキングを倒せたのは、この魔石を割ったからなのか!)


 ゲームでも敵を倒すと魔石が手に入ることがあった。

 毎回ではなく確率で手に入るドロップ品だったがこの世界だとそれは、戦闘により破壊したか無傷だったかの違いになる。


(さて、今ならキングには苦戦するだろうが、このままゴブリンの巣を叩くことが出来るわけだ。どうするかな)


 今までと同じ流れでいくと、すでに最初のゴブリンは倒してしまったためハモンドさんの村には単身で訪れることになる。

 魔法耐性があるので、睡眠魔法はレジストすることが出来るとは思うが確信はない。

 村長のショートソードは惜しいがまたあの悲劇を見る可能性がある以上、同じ行動は出来ない。


(胸糞悪い光景を見るくらいなら、このままゴブリンキングを倒せばそれで済む話なんだよな)


 本来、義理堅く温かい心の持ち主であるヒバリは異世界に来てからというもの、それが顕著に現れ始めている。


 今後の目的が決まりゴブリンの巣に向かい歩み始める。




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