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第三章 第十五話 サーシャとマイ


ゴールデンウィークに入って時間が出来るかと思いきや、全く変わらない日々です……。


更新遅くてすみません…




 マイ、サーシャの二人と食事を終え、宿に戻るとまだ夕方前だった。


 ダンジョンに入る時間にルールはない。今から向かっても問題はないのだが、元々ヒバリは時間をきっちり決めて行動するタイプなのであった。




 明日からのダンジョン攻略再開のため、荷物を整理しているとドアがノックされる。




コンコンッ




「開けていいぞ」


 ガチャッとドアが開き、誰かと思ったら入ってきたのはサーシャだった。


「ん? どうした?」


「お兄さん、もしよかったら話を聞いて欲しいの」


 あのサーシャがいつもより大人しく、塩らしい。


「ああ、構わないが……とりあえずそこの椅子に座ってくれ」


 サーシャに椅子に座るよう促し、自分はベッドに腰掛ける。




「それで、どうしたんだ?」


「あのね、ホントはこんなこと他の人に話したらいけないんだけど……お兄さんにも申し訳ないなって思うんだけどね……」


「うん、なんだ」


「お友達を教皇様から助けて欲しいの」




 とんだ爆弾が落とされた。






(教皇様ってレベル9だろ。まだ雲の上の存在…………でもないかも知れないか? 低レベルのまま役職として就いただけなら戦闘力はほぼないと思っていいはずだ)


 実際、この世界での教皇とやらの力は気になるが、助けて欲しいとはどういうことなのか説明を聞く必要がある。




「詳しく聞くよ」




 サーシャの話によると教皇は今、私利私欲の権化と化しているという。

 元々は人々を救い、癒し、導く人格者であったが、約1年前から金に執着し出し、奴隷を買い、気に入った女は全て幽閉するようになった。

 教皇は卑劣で、王国側にはいい顔をしており、教会内部で事を治めているらしい。


 そんな教皇に疑問を抱いたサーシャの友達は、直接話をしに行くも教皇に逆らった罪ということで幽閉されてしまう。

 もしかしたら友達が弄ばれているかも知れない。

 でも自分が行ったところで助けることが出来ない。

 マイたちに言えば助けてくれるかも知れない。

 だが実力がどうしても足りない。一緒に捕まってしまう恐れがある。

 王国も一部の人間はそのことを周知しているが、魔物の活発化に伴う問題に追われているから、という理由で動く気配がない。


 そんなときに圧倒的な力を持つヒバリが現れた。

 見ず知らずの自分たちに貴重な食料を分け与え、手に入れた財宝をいらないと言い、無傷で出口まで送り届けてくれた神にも等しい人。


 出会って間もないのに頼るのはおかしいことかも知れない。でも他に頼るところがなかったのも事実。

 ヒバリの優しさに付け込んだお願いだと分かってはいるが、すがる気持ちで頼みに来た。


 


 と、そう言うことだそうだ。




(1年前ってなんかキナ臭いな……魔王の介入とか考えられないか?)


「ちなみに聞くが、その1年前から怪しい奴が出入りしていた、とか聞いたことないか?」




 そんな分かりやすい話はないだろうな。




「あ〜、フードを被った黒い人なら見たことあるよぉ。教会に黒づくめって目立つもんねぇ」


 


(それだろ原因……)


 外見的に考えるなら、それは魔族かも知れない。

魔族が王国内に入り、教皇に何かした可能性がある。

 様子を見てみないことには、直接的な原因はわからないがフードを被った黒い人と言う話で魔族の介入は間違いなさそうだ。


 であれば、サーシャの友達を救うことはやぶさかではない。

 むしろ全力で駆逐する相手だ。




 だが、それは今じゃない。


 現状の最優先事項はレベル10になること。

 例え、これから王都に向かい、それを解決したところでレベルが上がればやり直すことになる。

 やり直したあと向かえばいいと思う。その方が確実だ。


「サーシャ、悪いが今すぐには行けない。だが約束する。必ず友達は救うよ」


「うん、わかったっ」


「友達の名前を聞いておいてもいいか?」


「アスカちゃんって言う特級巫女の女の子だよっ」


 特級巫女ってレベルは確かレベル6だったはずだ。それに名前が妙に日本っぽい。


(考えすぎか? もしかして転生者、なんて)




 話を聞いているとサーシャを呼ぶ声が廊下から聞こえてきた。


「あっ、マイちゃんほったらかしにしてたんだったぁ!」


 ここだよぉ、と言いながらドアを開け、マイを招き入れる。

 ここ、俺の部屋なんだが。




「悪いわね、サーシャが押し掛けちゃったみたいで」


「いや、いい。少し時間を持て余していたからな」


「それならよかったけど。で、何の話してたのよ」


 サーシャに詰め寄るマイ。


 なんでもないよぉ、とはぐらかしている。


(そういえばマイって名前も日本人ぽいよな。たまたまだろうけど)


「マイって日本知らないよな?」


 我ながら馬鹿なことを聞いたかも知れない。連日のダンジョンでやはり疲れているのだ。

 



 「……え、あなたもなの?」




(お前が転生者だったんかい!)




「……マジか?」


「マジかって、聞いてきたのはあなたじゃないのよ」


「まぁそうなんだが、サーシャの友達の話を聞いてそっちが転生者なのかと思ってたんだが……」


「アスカちゃんのこと? 彼女もそうよ、転生者」


「えぇ!? マイちゃんもアスカちゃんも転生者なのぉ!?」


 サーシャも知らない事実だったようだ。

 マイが内緒にしてね、と言い聞かせている。

 



「私がこの世界に来たのは、だいたい5歳頃の話。急に私が私だと認識することになったんだけど、孤児だったのよね、最初は。ほとんどホームレス状態。」


「そこでアスカと一緒だった、とそういうことだったりするのか?」


「そう、その通り。お互いこの世界での名前がなかったから、元の世界での名前で呼び合ってたの。私の本当の名前はヒロセ・マイ。アスカは、カグラ・アスカよ。」


 日本人の名前だ。懐かしさを感じる。

 

「そうか、俺はヒバリ・ケントだ。俺は転生者じゃなくて転移者だがな」


「転移……そんな風にこの世界に来る人もいるのね。ん、でもなんか聞き覚えがある気がするわ」


「俺もだな、どっかで会ったことあったか?」


「そうね、でも前の世界と合わせてかなり前の話だから覚えてないかも」


「もおっ! ふたりでずっと話してないでよぉ!」


 サーシャが拗ねて会話に割り込んでくる。確かに元々はサーシャから相談を受けていたんだった。

 だが、身近に転生者を見つけ、さらに救う対象が転生者でふたりも知り合いって言うのなら話をしても構わないのではないか、そう思った。


「サーシャ、マイには話をしてもいいんじゃないか? どちらにせよ、俺がメインで動くことになるんだ」


「うーん、でも……」


 色々と考えることがあるのだろう。無理に言う必要はない、実行に移すのはやり直し後だ。


「まぁ無理に話ことはないがな。とりあえず俺はマイにお願いしたいことが出来た」


「えっ、なによ」


「魔王討伐のパーティに入ってくれ。事情は詳しく話す」


「魔王!? 無理よ私弱いもの」


「そうでもない。これから絶対に強くなるはずだ」


 黙って鑑定を行う。


称号:「転生者」

名前:ヒロセ・マイ

職業:大賢者

レベル:5

ランク:G


HP:235/235

MP:330/330

STR:65

INT:417

VIT:89

AGI:184


EXP:356,222/6,250,000


スキル

<魔法(全):5>、<全属性補正:10>、<回避:1>、<魔法耐性:3>、<精神統一:5>


職業スキル

-レベル1魔法-一律消費MP5

-レベル2魔法-一律消費MP10

-レベル3魔法-一律消費MP35

-レベル4魔法-一律消費MP90


転生者スキル

=魔導を極めし者=




=魔導を極めし者=

発動条件:常時

効果1:職業固定(職業派生が魔系統のみになる)効果2:必要経験値減少(1/50)

効果3:全属性適正(初期から全属性補正:10)

効果4:魔導ブースト(思いの強さにより魔法の希望が変わる)




「マイ、お前化け物クラスに強くなるぞ?」


 ステータスを見ただけでわかる。

 レベル上げがしやすい魔法使いで転生者スキルによって全ての魔法の威力が何段階も上がりそうである。

 正直、羨ましい。


「そうなの? もしかして私、鑑定された?」


「ああ、勝手に見てしまってすまない。だがその力は正直憧れるよ」


 インカネートオンラインで魔法職を極めていったヒバリとしては嫉妬してしまうほどの能力だ。


「そうなんだ……ふふっ。もしもっと強くなれるなら、協力するわよ。魔王退治」


「もう結論出してしまっていいのか?」


「だってあんなに強いヒバリさんが憧れるほど強いんでしょ? だったらやるわよ」


 腕をグッと前に出し、ガッツポーズを見せ笑顔をこちらに向けてきた。


 見たことのある笑顔だった。






 思い出した……!




 思い出してしまった。




 本当は名前ですぐ気付くべきだった。




 この子……マイは…………






 同じ飛行機に乗っていた、後輩の彼女だ。




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