第三章 第十四話 休息
ステータスは必要な情報だけ表示させるようにします!
充分に湯船に浸かり、疲労も回復したヒバリは5人組と食事に来ていた。
ちょうど夕飯時で翠の夕暮れ亭の食事処も混雑しており、皆私服を着ている中ヒバリだけ鎧を着ており浮いているように感じる。
今度私服を買っておこうと心に決めた。
「ヒバリさん、改めてダンジョンではありがとうございました」
全員からお礼を言われるが、そこまで気遣った覚えもないし、たまたまだと伝えた。
「それで、みんなで相談して決めたことなんですが、譲ってもらった戦利品の中で換金して得たお金だけは渡そうということにしたんです」
そうは言うが、お金も今は執着がない。
いずれリセットする世界でお金を貯めても仕方ない。
次のやり直し後であれば貯金もするつもりではあるが。
「いや、本当にいらん。生活出来るだけの金はある。それに俺はダンジョンを攻略するつもりだ。おそらく腐るほど金が手に入る予定だ」
遠慮ではなく事実である。
「そ、そうですか。そこまで言うなら……なら! 何か手伝えることはありませんか?」
「ないな……いや、しいて言えばだが」
「なんですか! なんでも言って下さい!」
食い気味に来られ少し引いてしまう。
「ここのダンジョンについて知っていることがあれば教えて欲しい」
「……ヒバリさんより詳しくはないと思いますが、僕らで知っていることでよければ」
注文したご飯と飲み物が届き、食べながら話を聞くことにする。
まず、彼らは実は王国の調査団であること。
今回の魔物の活発化に伴い、ダンジョンの入場制限を行ったが、現状でどうなっているか調査に着ていたらしい。
王国騎士団副長のアルフレド、同じくガング。王国諜報部隊副長のザックに宮廷魔道士のマイ。王国全土に広がるアトノス教大司祭のサーシャ。
全員若くして才能のある者たちで調査に向かったらしい。
情報では異常なまでの魔物の大群が発生していたり、ダンジョンの深度以上に強力な魔物が出てきたりすると聞いており、現状の確認を任されたらしい。
通常、ダンジョン内の魔物は外に出ることが出来ないが、それが実際に起きてしまった場所もあるとのこと。
そういった異常が出ていないか、一つ一つ確認するためにダンジョンを回っているようだ。
「俺が聞きたいのは内部構造、出現する魔物についてなんだが……」
「あっ、すみません! 自分たちのことを話しすぎました」
お酒も進み大した話が聞けなくなったので、もう大丈夫だと伝えた。
アルフレドとザックは酒に弱い。ガングは酒に強く。サーシャも強いのか様子が一切変わらない。マイは元々飲めないようで今は果実水を飲んでいる。
彼らには懐かれてしまったようで、是非一緒にと色々誘われたが俺には俺でやることがある。
「色々と助けになってくれると言う申し出はありがたいが、俺は仲間を作るつもりもなければ、さっさとダンジョンを攻略したいと思っている。あまり構って来なくていい」
少し言い方はキツいが、突き放すように伝えないと付いてきそうな気がしたのだ。
「す、すみません……でも僕ら、当分はここの宿を取ってますので、何かあったらいつでも声をかけてくださいね」
「ああ、心に留めておくよ」
そう言ってお金を置き席を立とうとすると、さすがにここはおごりますと言われ置いたお金を返された。
風呂にも入り、充分に食事も取り、あとは寝るだけではあるが、経験値だけは確認しておこうとステータスを開く。
EXP:25370/31250
大群のデスマンティスを倒したおかげで相当経験値を稼げている。
「このペースだとダンジョン攻略の前にレベル10になりそうだ」
思っていた通り、ダンジョンはレベル上げの聖地と言われていただけある。
ワンフロア独占どころか入場規制のある今はダンジョン独占状態である。
思っていたより早く目的を達成出来そうで喜びを隠せない。
お酒もそこそこ入っており気分が良くなっている。
今日は気持ちよく寝れそうだ。
次の日、今日は買い出しに出る。
20階層までに拾ったアイテムをギルドで売却してから買い物をする予定だ。
今回、ギルドで売却するのはスカイドラゴンの魔石以外全てである。
スカイドラゴンの宝玉は何かに使えないかと思い、取って置くことにした。
ギルドに着き、買取カウンターに向かう。
前回と変わらずドワーフみたいなおじさんに買取をお願いした。
「これはキマイラマンティスの魔石か、お前さん、ダンジョンに潜り始めたのは最近じゃなかったか?」
「そうだな、2日前だ」
「もう20階層に到達したのか……このご時世によくそこまで……さぞ強い仲間がおるんだな」
仲間がいる訳ではないが、話を膨らませるつもりもないため否定しない。
「これが買取金だ、確認してくれ」
礼を言い、金貨が大量に入った袋を受け取りギルドを後にする。
今日の買い出しは私服と食料、それと魔法袋と呼ばれるマジックアイテムだ。
魔法袋は一見普通の袋に見えるが、容量はその数十倍にもなり、荷物の持ち運びがだいぶ楽になる代物だ。
いわゆる異次元収納である。
高価な品物ではあるが、今日の買取金で購入は間に合うはずである。
アルフレドたちにそんな強い人がなぜそれを知らないんだと若干詰められたが知らないものは知らないのだ。
ゲームでは標準搭載だったためあえて探すこともしていなかったが、よくよく考えればあってもおかしくないなと思った。
マップを確認しながら昨日教えてもらった魔道具屋に向かい、10分ほどでお店に到着した。
店内に入ると雑貨屋のようで色々なものが売っていてお目当の品がどこにあるかわからない。
店員に聞いた方が早いと声をかけると魔法袋は店内には並べておらず、カウンターの奥にあると言う。
(さっさと声をかけて正解だったな)
「大中小と3種類ありますが、どのサイズがご入用ですか?」
見てみなければサイズが全くわからない。
「基本的にダンジョンに持ち込む食料と戦利品を入れるだけだが、どれが適正なんだ?」
「それでしたら小か中でしょうか、小は食料と魔石などの小物であればかなりの量が入ります。中だともう少し大きい魔物素材なども多く入りますよ。大は資材運びなどに使われることが多いですね」
であれば中で充分か。
「では中をくれ。これで足りるか?」
先ほど受け取った金貨の入った袋をカウンターに置く。
「ありがとうございます、確認させて頂きます」
金貨の袋には約100枚入っている。昨日小さいサイズでも金貨20枚程度はする、と聞いていた。中でも金貨100枚あれば足りるだろう。
「お待たせしました。こちらお釣りになります。代金は中サイズで金貨60枚となっております」
妥当なところかと思う。
ちなみに魔法袋の大は金貨150枚もするそうだ。必要なかったが、大をくれと言っていたら赤っ恥をかいていたところだ。
次に食料を買う。
早速買った魔法袋を試して見たくなり、大量に食料を買い込んだ。
嘘だろ、と思うほど全てがすんなり魔法袋に収まった。
途中、軽食を行い私服を買いに行く。
食料品店でオススメされた服屋に入り、中を物色していると聞いた声が聞こえてきた。
「あら、これなんかいいわね?」
「よくお似合いですお嬢様」
「ホント? こっちのもいいわ」
「そちらもよくお似合いですよ」
マイが大量の服を買い込んでいるところだった。
見なかったことにして、適当に自分の服を買い外に出る。
すると突然、何かに抱きつかれた。
「へっへ〜、お兄さんみっけ!」
「サーシャ、お前は服買わないのか?」
敵意がなかったため、全く気付かなかった。
「私も買ったけど、マイが長いんだよねぇ」
「なるほどな……」
同じ街、同じ宿を取っているのであれば巡り合うのも不思議ではないが、こうもばったり会うのも何か縁を感じる。
「お兄さん一緒にご飯いこーよぉ」
今日はダンジョンに潜らず、準備を整えてから明日30階層を目指すつもりである。
ご飯くらい一緒でいいかと思い了承する。
が、待てど暮らせどマイが出てこない。
(時間かかりすぎだろ……)
「遅いな……」
「マイは昔からこんな感じだよぉ」
「昔からの付き合いなのか?」
「うんっ、小さい頃からの友達なんだっ」
聞くと王都で一緒に育ってきた幼馴染みだと言う。
アルフレドたちとは仕事に就いてから知り合ったらしい。
ダンジョンの調査も長く行われており、5人はすでに見知った仲になっているという。
「お兄さんももうお友達だけどねっ」
こういうやつってたまに心に刺さることを言い出すよな、と少し傷心の心が暖まるのを感じた。
下を向き感傷に浸っているとサーシャがまた変なことを言い出す。
「あっ、お友達だけどちゃんとお兄さんのことは好きだよぉ?お嫁さんにして欲しいくらいにねっ」
ニコニコしながら冗談なのか本気なのか、そんなことを話してくる。
「ヒバリさんじゃない。どうしたのよこんなところで」
「たまたまサーシャに飯を誘われてな。マイが戻るのを一緒に待ってたところだ」
「あら、ごめんなさい。結構待たせたんじゃない?」
「いや、今日は俺もオフの日だ。問題ない」
「そう、なら早速ご飯に行きましょ」
「いこいこーっ!」
マイはマイで面倒見が良さそうでお姉さん気質な感じだ。
サーシャに振り回されてそうなってしまった可能性が高いが……。
マイとサーシャに連れられて、オススメのお店に向かって歩いて行く。




