第三章 第十二話 絶星
更新遅くなりすみません!
階段で10分ほど休憩を取り、第十四階層へ降り立つ。
代わり映えのない、11階層から続く草原である。
「おそらく出てくる敵がデスマンティス主流になる。数もそれなりに出てくるはずだ。討ち漏らしがあるかも知れないから気をつけておいてくれ」
5人にそう話し、次の階層に向け走り出す。
すれ違いざまにデスマンティスを倒していく中、少し先に大量のデスマンティスが見えた。
(ここは広範囲スキルで片付けよう)
アトミック・レイを発動すると、目算だが1km以上先まで光が分岐し魔物たちを屠っていく。
何匹いたかわからないが、かなりの経験値が入ったに違いない。
「「「えぇ……」」」
「おーっかっこいい!」
ヒバリが走りながら敵を殲滅すると、後ろからドン引きの声と称賛の声が聞こえてきた。
「いちいち止まってられないだろ。なるべく早く20階層に行きたいんだ」
そう言ってまた前を向いて走る。
魔石は進路上にあるものはスピードを落とさずに拾っていくが、遠い場合は放置した。
それでも取りきれない量が落ちているが、それは後ろのメンツが拾うだろう。
そしてまた次の階層に辿り着く。
第十五階層はそこら中にデスマンティスが歩いている状態だった。
こういう光景が気持ち悪いんだよなと思うも、散らばっているなら今が試し時かと満を辞してスキルを使う。
「絶星!」
スキルを発動すると自分の周囲に8色の剣が現れ、ふわふわと宙を漂っている
火、水、風、光、雷、土、氷、闇。
この8属性が基本属性である。
剣帝までは特に得意属性がないが、苦手属性もない。
全てに適応出来るようになり、全ての属性に対して耐性も付く。
属性値は決して高くないが、全属性の剣を扱える。
試しに赤い火の剣を手元に寄せてみると、考えただけで目の前にやってきた。
(おお、本当に操作出来るな)
空高く飛ばしてみる。
火の剣は物凄い勢いで飛んでいった。
どこまで行くのかと思い、そのまま遠くまで飛ばし続けていると目には見えなくなる。
そうすると感覚で自動で戻ってくるのがわかった。
(視界で確認出来る範囲までということか?)
どの程度、自在に操ることが出来るのかと4本をさらに浮かせ、見える範囲のデスマンティスに向かわせる。
ヒュンヒュンと音を出して飛んでいき、あっという間に4匹倒すことが出来た。
飛んで行った4本は消滅したようだ。
操作は見える範囲、複数を同時に操作可能、操作自体は自由自在、ダメージを与えると消滅する。
こんなところか。
最後に、触れるものなのかと手元に寄せる。
問題なく持てた。が、すぐに消滅してしまった。
持った瞬間は確実に物理的な感触があったが、次第に薄れていき、煙のように消えてしまった。
なんとなく理解した。
「絶星!」
もう一度、8本の剣を常備し、先を進むことにした。
「そろそろいくぞ」
「は、はい。それにしてもそのスキルは……」
「かっこいい〜っ!!」
アルフレドは驚き、サーシャは褒めてくれた。
走り始めると絶星の剣の有用さがわかってきた。
攻撃したいときは自在に扱え、急に襲いかかってくる魔物に対しては効果絶大、自分が反応するより早く自動迎撃してくれる。
さらに攻撃と同時に各属性の効果が現れる。
火の剣は敵に攻撃すると斬った箇所が燃え上がる。
雷の剣の時は電流が走っていた。
今現在、MPの回復速度は1分につきMP10回復する。
現状だと絶星の消費より魔物の出現の方がが遅い。
常に発動させていてもMPが減ることはない。
多少スピードを上げ階段を目指していく。
レベル4のデスマンティスを大量に倒し階段に到着する。
次は第十六階層だ。
例により一旦休息を行う。
残っている食料で軽く食事を取り、20階層までの時間を計算する。
平均して1階層4時間、残り4階層進めばボス部屋に辿り着く。
20時間か。次の階層で仮眠を取ってから一気に進むとするか。
食料も残りわずかである。6人分ともなると、分け合ったとして大した量はない。
あまり時間をかける訳にはいかないな。今は少し無理をさせてでも先に進んでおくべきだ。
「よし、いこう」
「あ、待って。魔法でよければ水の補給が出来るわ」
そう言ってマイは水の球体を浮かせている。
「飲み水としてもいけるのか、ならお願い出来るか?」
「ええ、もちろんよ!」
水を入れていたボトルを渡すと、少し嬉しそうにして水を補充してくれる。
全員分の補給が終わったのを確認し、攻略を再開する。
16階層も問題なく進み、第十七階層へ降りる階段に到着する。
「みんな、お疲れ。かなり疲労が溜まってきているだろう、ここで一旦仮眠を取りたいと思う」
5人はホッとした表情をし、仮眠について同意してくれた。
「数時間後、一気に20階層まで行くつもりだ。走っているだけでつまらないと思うが体力はしっかり回復させておいてくれ」
そう伝え一人、壁に背をもたれて仮眠を行う。
食事は起きてから食べたい派なので取っておいている。
水分補給はマイのおかげで万全だ。
アルフレドやガングは鎧を脱ぎ、倒れるように眠りについていた。
ザックは階段に寝そべり真っ直ぐに寝ている。寝相が良すぎる。
マイとサーシャはしゃがみながら体を寄せ合っている。
そしてそんな様子を見ていたヒバリも少しずつ眠くなり、やがて完全に寝てしまう。
目が覚めると冒険者たちはすでに起きていた。
気を遣って起こさないようにしてくれたのかと思い、アルフレドすまないと一言伝えると、「いや、サーシャが起きないので……」と言っていた。
謝り損だった。
「サーシャ、おい起きろ」
起きる気配がない。
口がωになっていて気持ちよさそうに眠っている。
「おい、起きろッ」
激しめに揺さぶっても起きて来ない?
「この子、一度寝るとなかなか起きないのよね……」
そうは言ってもここはダンジョン。
なぜここまで熟睡出来るのか不思議だ。
「寝てたいなら寝かせておこう。俺が担いで走る。途中で目も覚めるだろ」
「ヒバリさんにそこまでしてもらうのはさすがに申し訳ないっすよ……」
「そうだな……」
「…………任せてくれ」
「そう言うなら任せるが、スピードが遅くなるようなら代わってくれ」
そして攻略を開始する。
16階層も問題なく進んでいたが、デスマンティスの他に新たな魔物が現れた。
ブルーホークという空を飛ぶ鳥だ。
その名の通り羽が青い鷹のような魔物で、空から羽を飛ばしてくるが、絶星が標的を認識すると飛んできた羽を蹴散らしながら一撃で倒していってくれた。
攻略のスピードも落ちることなく、走り続けることが出来た。
絶星は非常に有用なスキルだと改めて認識した。
サーシャが起きたのは結局、第十七階層に辿り着いてからだった。
そんなに寝るなんて何か異常があったのかと心配もしたが、寝起きの開口一番に「ご飯は?」と言っていたため単純に寝ていただけだったようだ。
緊張感のかけらもない。
続いて18階層、19階層と進んでいき、ようやく第二十階層への階段に辿り着いた。
「ようやく辿り着いたな。ここで一旦、休憩をしよう。おそらく20階層のボスも一人で倒せると思うが、念のため休息は入れておく」
わかりましたとうなずく5人。
ここで最後の食事を取り、充分に休息を取れたと判断したらボス部屋へ行く。
食事をしていると、ふと思い出したことがあった。
(ボス部屋って確かパーティごとにしか入れなかったよな……今こいつらとはパーティじゃないんだが、もしかしてヤバイか……?)
インカネートオンラインでは違うパーティがボスと戦闘をしていると、別のパーティは中に入れず、外で待機することになる。
人気のボスは順番待ちで溢れ返っていたこともあった。
もしかしたら一緒に入れないかも知らないと、どうしても気になってしまったので、アルフレドに聞いてみることにした。
「扉が閉まるまでに入れば問題ないと思いますよ、一度閉まったら確かに戦闘が終わるまで開かないですけど」
ということで一安心だ。
あとの心配ごとは、ボスが強すぎる敵だった場合である。
今回、なぜか11階層でスカイドラゴンと戦うハメになった。
正直、スカイドラゴンは熟練のパーティでも壊滅しておかしくない強さだ。
レベルが上がった今なら前回ほど苦戦しないにしろ、光線の被害はこの5人に及ぶかも知れない。
起こり得る悪い事態を考えていたが、やはり入って見なければわからない。実のない話である。
考え事をしていると、サーシャがスススッと近寄ってきた。
「どうした?」
「いやぁ、お兄さん他のパーティに入ってたりするのかなあと思ってですね」
勧誘に来たようだ。
「俺は一人でいい。来世で縁があればお願いする」
「ら、来世……」
ガーンという音が聞こえて来そうなほどショックな顔をしているサーシャ。
「じゃあ私たちがお供になるのはどーですかぁ?」
「…………足手まといだろ……」
ガガーンという音が聞こえて来そうなほど驚愕の表情を浮かべるサーシャ。
「ううっ……私強くなるもんっ」
そう言いながら離れて行った。
「では、準備はいいな? ボス部屋に入るぞ」
「「「はい!」」」
返事を聞き、扉に触れるとゆっくりと開いていく。
何が出てきてもいいように剣は抜き、絶星を発動させ中に入って行く。
明日からなるべく多めに更新出来ればと思っておりますっ!




