第三章 第八話 スカイドラゴン
シルクキャタピラーの大群を倒し、第十二階層への階段を探すヒバリ。
道なりにずっと進んでいるが、未だ階段は見つかっていない。
「そもそもこの道、延々と続いていくな……」
異次元に迷い込んだんじゃないかと思うほど風景も変わらない。
そんなことを思っていると後方から気配を感じ、振り向く。
遠目に空を飛ぶ魔物が見える。
鳥型の魔物かと思い注視していると、かなりの速さで向かってきているのがわかる。
「なっ! 速い!」
高速の魔物が自分目掛けて飛んでくる。
細長い体に翼が付いていない、小さい手足で白いヒゲを生やした緑色のドラゴン。
スカイドラゴンだ。
「う、嘘だろ……」
全力で逃げるヒバリ。
スカイドラゴンはレベル6。今のレベル5のヒバリよりもワンランク上の魔物だ。
ドラゴン種の中では弱い方だが、それはドラゴンの中での話。
ドラゴン種の最頂点はレベル10なのだ。
何かしらのエラーにより、レベル5で天聖という本来であればレベル6で就く職業になれてはいるが、そのレベルまでいくと基本、1対1は避けたいところだった。
「なんで11階層にこんな高レベルな魔物が出てくるんだ!?」
悪態を吐きながらも必死で逃げる。
が、すぐに追いつかれてしまう。
スカイドラゴンの口の前に魔法陣が現れたと同時に突風が吹き荒れる。
周囲の地面を抉り、草木は細切れになっていく様子を見て、大きめの跳躍を行い回避する。
だだっ広い草原に逃げ場はなかった。
やるしかないと覚悟を決めたヒバリは跳躍した空中で、そのまま宙を蹴り、スカイドラゴンに肉薄する。
一閃の構えを取り、スキルを放つ直前、真横から尻尾の打撃が飛んできた。
「くそッ!」
回避は間に合わないと断念し、空中で体を捻りガードの態勢を取る。
と、同時に尻尾の衝撃が体を突き抜け、遠くへ吹き飛ばされる。
地面に体を打ち付けるも、すぐに迎撃態勢に移る。
スカイドラゴンはまた口の前に魔法陣を用意していた。
(間に合うか!?)
「アトミック・レイ!!」
ヒバリの渾身のスキルは、スカイドラゴンから放たれた魔法とぶつかり合う。
ややヒバリの方が強く、残った光の筋がスカイドラゴンに突き刺さる。
「ギュォオ……!」
痛みに怯んだスカイドラゴンは体をくねらせ隙を作る。
それを見逃すはずもなくスキルを叩き込む。
「一閃! バッシュ! サザンクロス! スラッシュ!」
スキルのコンビネーションにより、スカイドラゴンを追い詰める。
もちろん、スキルの合間に通常の斬撃を幾重にも挟んでいる。
凄まじいまでの攻撃の嵐。息を止め、一気に片をつけようと一心不乱に剣を振る。
これでどうだ、と思いスカイドラゴンの様子を伺う。
目を凝らすとスカイドラゴンの表面には透明な膜が張っており、ダメージを幾分か軽減していたようだ。
「ギュァァアアアア!!!」
スカイドラゴンが咆哮を行うと、体がビクッと震え、身動き出来なくなる。
(しまった……!)
スキルの一つである咆哮だ。威嚇スキルに近いものではあるが、完全に身動きを止めるスキルである。
硬直時間はレベル差により変わるが、今回はスカイドラゴンの方が上だ。
高速の戦闘の中で数秒間、身動きが取れなくなるのは相当な痛手である。
スカイドラゴンを見ると一際大きな魔法陣が口元に現れていた。
(オイオイ……あれをモロに食らったらただでは済まないぞ…………どうする)
数瞬のうち、スカイドラゴンから魔法が放たれる。
それは極太の光線だった。薄く緑がかって光る光線は周囲を消滅させていく。
直撃すると思った瞬間、硬直が溶けた。
が、もう回避は間に合わない。
空に向かい一閃を行う。
直撃するもすぐにその光線から逃れることに成功したヒバリは空中で攻撃に転じる。
「ぐっ……アトミック・レイ!」
まだ光線を吐き続けているスカイドラゴンに、ヒバリのスキルが直撃する。
お互いの攻撃が止み、ヒバリは地面に着地。スカイドラゴンは血だらけになり、ふらふらしている。
「ッくぅぅ、全身火傷したみたいな痛みだ……」
幸いなことにスカイドラゴンの攻撃は光属性であったため、天聖の光耐性により大ダメージを受けずに済んだ。
一方で、スカイドラゴンは風属性のため、光属性に耐性がない。
現状ではヒバリが優位に立っている状況だ。
「ステータス」
称号:[ゴブリンキラー]、[コボルトキラー]、[ジャイアントキリング]
職業:天聖
レベル:5
ランク:E
HP:936/1150
MP:168/452
STR:678
INT:424
VIT:567
AGI:891
EXP:898/6250
職業スキル
-バッシュ-消費MP3
-スラッシュ-消費MP5
-一閃-消費MP10
-サザンクロス-消費MP38
-アトミック・レイ-消費MP95
スキル
<体術:7>、<剣術:7>、<投擲:3>、<回避:5>、<追跡:5>、<隠密:4>、<夜目2>、<気配察知:3>、<魔法耐性:5>、<自己回復:10>、<鑑定3>
エクストラスキル
=起死回生=
(まだHPに余裕はあるが、MPはもう余裕がない……だが温存もしていられないな)
スカイドラゴンは未だ戦意が衰えず、こちらを睨んでいる。
傍目には満身創痍に見えるが、手負いの魔物に油断すると返って手痛い反撃を食らう恐れもある。
(遠距離攻撃だな)
石を拾い、サイドスローで全力で投げつける。
スカイドラゴンほどスピードがある魔物ならおそらく回避されるであろう。
それを見越して投げつけた石はスカイドラゴンのやや左側を狙い、避けた先に曲がるように計算した。
「一閃! サザンクロス!」
ガッと石が直撃した音が聞こえ、同時に避けた先、石が当たった箇所へ一閃の斬撃を入れる。
そして振り返りざま、サザンクロスで斬り刻む。
「ギュゥゥァァ……」
「アトミック・レイ!」
間髪入れず最大威力の攻撃をゼロ距離で見舞う。
さすがのスカイドラゴンももう立てないだろう。
ズズン……
そしてスカイドラゴンが消えていく。
「ハァハァ…………勝てた……」
バタッ
思わぬ強敵との戦闘を終え、背中から大の字になり倒れる。
HPに余裕はあるが、ゲームとは違い、実際の緊張感やスタミナの問題で疲れは出ているのだ。
数分経ち、10階層に戻るか、先に進むか悩んでいたが、今回は先に進もうと思う。
階段の途中であれば休憩することも出来るためそこでMPを回復させてから新たに20階層を目指していくつもりである。
スカイドラゴンの魔石を拾おうとするとドロップ品が見えた。
落ちていたのは綺麗な薄緑色の透明な玉と、鱗、爪だった。
ビー玉大くらいの玉はおそらく宝玉だ。ドラゴン種から低確率でドロップするレアアイテムである。
持ち帰りはするが、売るのがもったいないなという思いが強い。
「これは売らずに取っておくか。使わないかも知れないが換金する必要もないだろう」
荷物を整理し、ステータスを確認してから先に進むことにする。
称号:[ゴブリンキラー]、[コボルトキラー]、[ドラゴンキラー]、[ジャイアントキリング]
職業:天聖
レベル:5
ランク:E
HP:986/1150
MP:25/452
STR:678
INT:424
VIT:567
AGI:891
EXP:3898/6250
職業スキル
-バッシュ-消費MP3
-スラッシュ-消費MP5
-一閃-消費MP10
-サザンクロス-消費MP38
-アトミック・レイ-消費MP95
スキル
<体術:7>、<剣術:7>、<投擲:3>、<回避:5>、<追跡:5>、<隠密:4>、<夜目:2>、<気配察知:3>、<魔法耐性:5>、<自己回復:10>、<鑑定:3>
エクストラスキル
=起死回生=




