第一章 第三話 初戦闘
主人公はカタカナ表記のヒバリで統一します!
目覚めると窓から日が差し込み今日の天気を教えてくれる。
体を起こしながら、掛けていた布団もとい薄い布を気怠そうにめくる。
(疲れていたのかいつの間にか眠ってたな。晴れてるし早めに街に向かうとするか! 村長にも街までの道を聞いてみよう)
ぐっすりと熟睡してしまい、こんなに寝たのはいつ以来だと昔のことを思い出す。
寝床を出て昨日の食卓へ向かうも誰もいなそうだ。この村には特に用事がないため、早く動き出したいところであった。
「お、おはようございまーすっ」
誰かいるかなーと声を出し挨拶をする。
返事がない、どうやら出かけているようだ。
知らない人を家にひとりで置いて出かけるなんて不用心だなーと人ごとのように感じていると。
外で物音がすることに気付く。
なにか作業でもしているのだろう。
そう思い玄関から外に出ようとすると異常な光景を目にする。
(………………これはやばいっ……)
あまりの光景に身動き一つ出来ない。
先ほど聞こえた物音は近いてみると普段聞くことのない不快な音だった。
ゴブリン3体が何かをグジュグジュと音立て食べている。
その咀嚼音を聞くだけで、違いますようにと祈りながらも何を食べているか確信してしまう。
それは人だった。
辺りの地面が赤黒くなっている。
手足は切断され、仰向けに倒れており内臓は中心から散乱している。
目だけを動かしゴブリンを観察する。
腕を両手で持って食事をしているゴブリン。
お腹に顔を埋め、口を動かしているゴブリン。
さらに頭を切断しようと顔を持つゴブリン。
ちょうどその顔がこちらを向き、その死体が誰だか認識してしまう。
その死体は村長だった。
驚愕と恐怖を通り越し、急に殺意が沸いてくる。
見ず知らず記憶喪失を語ったいかにも怪しい他人を家に招き入れ、食事を出し、寝床を与えてくれた優しい人だった。
村長の脇には奥さんもいた。
すでに事切れている。
自分はここまで怒りを覚えることがあったのかと思うほど頭に血が昇っている。
ゴブリンには通常1対1では勝てない、という昨日村長から聞いた話もすでに頭から飛んでいる。
相手は魔物だ。包丁のようなナイフを腰にぶら下げている。
こちらも武器は必要だ。
振り返ると壁にはキレイな剣が飾ってある。1メートル弱のショートソード。
装飾もなく無骨ではあるが非常にキレイに見えた。
これを取ると音が出る。
音が出ればゴブリンがこちらに気付く。
気付かれたら不意打ちも出来ず3匹を相手にしなければならない。
未だこちらには気付かずニヤニヤと食事に夢中なゴブリンを見る。
(知ったことか!! ぶっ殺してやる!!!)
ガッ、ガシャッ!
剣を取るとゴブリンが反応する。
「グギャッ!?」
1匹がこちらにゆっくり歩いてくる。
ゴブリンへ向かい走り出し、怒りのままに剣を振るう。
予期していなかったことだからだろう。運良くゴブリンを右肩から袈裟斬りにし絶命させる。
「グギャーッ!」
残りの2匹が武器を取り向かってくる。
倒したゴブリンを確認すると、残りのうち1匹なナイフをこちらに振りかぶっていた。
首を狙ってきている。
(思ったより速い! 1匹目に集中しすぎて気付くのが遅れた!)
対応が遅かったため回避行動を取るがゴブリンのナイフは左の二の腕に直撃してしまう。
「うっ、ぁあッ! いっ、痛ってぇ…!」
左肩から血が溢れてくる。骨には達していないようだが、痛みで左腕は動かせない。
一旦距離を取ろうと後ろに下がりゴブリンと対峙する。
ニヤニヤと顔を歪めるゴブリンたち。
痛みに顔を歪めるヒバリ。左腕には激痛が走っている。
逃げたい衝動に駆られ、だったら最初から逃げれば良かったなと後悔する。
怖い。
死を目の前にし、急に恐怖がやってくる。
逃げるだけならなんとかなるような気がした。逃げ道を無意識に探していると、さらに目を逸らしたくなる光景が広がる。
そこら中で人が倒れ、血だらけだ。
女子供の姿は見えないが、おそらく巣に連れて行かれたんだろう。
倒れているのは男や老人ばかりである。
すでに村は壊滅していた。
だがゴブリンは目の前の2匹だけだ。こいつらを倒さないと何も出来ない。
安心して逃げることも、生きている人を探すことも。恐怖で逃げ腰だったヒバリは、周りの光景で覚悟する。
手前にいた、ヒバリを傷付けたゴブリンに斬りかかる。ゴブリンは避ける。
やはり思ったより速い。
「グギギャッ!」
また首を狙ってナイフを振るい飛び込んでくる。
……だと思っていた。
後ろ足に力を入れ体を前に押し出し、力一杯の体当たりをする。ゴブリンを宙に飛ばしバックステップで体を離す。
離れ際、のけ反りながらショートソードを右下から左上へ、思い切り振り上げる。
ゴブリンは宙に浮いた状態で姿勢が保てず、剣を避けられない。
そのままゴブリンの左脇から首を振り切る。
「ギッ…」
大した声も出せずに息絶える。
3匹目の持っている武器はナイフではなく弓だ。それを確認したのはこちらに狙いを定め、弓から矢を離した瞬間であった。
とっさに顔を守るように左腕を前に出す。
使い物にならない左腕を捨てるつもりで無理矢理動かすと矢が左腕に刺さる。
ゴブリンが次の矢を準備する前に倒さなければ、今度こそ自分の命はないだろう。
すでに二の腕に激痛が走っており、矢が刺さったことも気にせず前に走り出す。
剣を振り上げ、がむしゃらに叩きつける。
が、回避される。
また振るう。
それも回避される。
剣など持ったこともない、ましてや冷静に対応することが出来ないヒバリの攻撃は全く当たらない。
相手の武器が弓ではなくナイフであれば、今の動きの間で殺されていたかも知れない。
剣が当たらないことに焦り、さらに力づくで剣を振り続ける。
(あたれ! あたれ!! …あたれ!!!)
重みのある本物の剣を何度も振るい、右腕にも力が入らなくなってきた。
「はぁ……はぁ……この野郎……」
ヒバリが疲れ動きが悪くなるのを待っていたのか、ニヤニヤしだすゴブリンは持っていた矢をそのまま突き刺そうと飛びかかってくる。
後ろに下がろうとすると足に何かが引っかかり
そのまま倒れてしまう。
「う、ぅゎぁあ!!!」
倒れ込んだところにゴブリンが降ってくる。
「グギュッ!」
頭を狙ってきた矢尻を首だけで避けると、上を向いていた剣が、重力そのままに落ちてくるゴブリンに突き刺さる。
衝撃で矢を落としたゴブリンは拳を固めて顔を殴りつけてくる。
ゴッと音がするもすでに力は入っておらず人間の殴る力程度であった。
覆いかぶさっているゴブリンは次第に動きを止め、やがて息をしなくなる。
「はぁ、はぁ……はぁ……スゥーっ………ふぅ」
ゴブリンをどかし空を見る。
雲一つないよく晴れた青空であった。