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第三章 第六話 転生者との出会い




 ミリアに連れられ、ギルド脇の裏路地で話をすることになった。




「昨日のこと、内緒にしておいて下さい!」


 向かい合うとすぐに昨日の話になる。なにやら事情がありそうだ。


「内緒にするというと、裸を見たことか? 忍者のことか? それとも……転生者のことか?」


「!? そこまでわかって……裸を見たことは永久に忘れて下さい! てゆうかあなた何者なんですか……?」


 きっと同郷なのだろう。秘密にする必要もない。どうせ仲間にするのは次のスタートオーバーの後だ。


「俺は転移者だ。まだこの世界に来て数ヶ月程度だがな」


「…………ッえぇ!?」


 ヒバリがこの世界にきた成り行きを説明していくと、ミリアは真剣な顔になり、今までの境遇を話してくれた。

 

「私は、元日本人です。前の名前は加藤志乃。15歳のとき、この世界に来ました。この世界では16歳なので合わせても雲雀さんより年下ですね」


そう言って微笑んだ。


 日本では事故に遭い、死んだと思ったらこの世界に転生したこと。

 両親ともに獣人で冒険者だったのだが、ミリアが生まれたことで引退。

 その二人に育てたられたことにより自分も冒険者となったが、他に比べて圧倒的なまでに強くなりすぎた。

 心配した両親は、未開地域に連れ出されないようそのことを秘密にしろという話になり、今の受付業務の職に就いた。

 だが、結局のところすでにCランクだったため、業務命令で魔物の討伐は続けていた。

 それが評価されてしまい、結局Bランクになってしまった。

 新たに未開地域への調査という業務命令もきたが、未開地域に行くならこの国を離れるというと拠点防衛という体で周辺の魔物討伐に止まっているとあう話だ。


 また、自身のステータスは確認出来るが、転生者スキルは忍道であるということ以外わからないという。


「転生者スキルは忍系統の派生のみ、必要経験値減少、二刀流、隠密ブーストの4つの効果があるみたいだぞ」


「えぇっ! そんなに効果があったんですか…………二刀流は知らなかったので今度から試してみます。それと、このことは内緒に……」


「ああ、わかった。別に言いふらすようなことでもない。面倒になるだけだしな」


  そしてここから本題の話を切り出す。




「この世界には、魔王がいる。魔王は人間族を滅ぼそうとしていて、すでに魔族による手で犠牲者もいる。俺の仲間は殺された。魔王を倒しにいく。お前の力が必要だ。付いてきてくれないか?」


 ストレートに伝えたつもりだ。現時点ですでに魔王の脅威は目前であるのだから話は早い方がいい。


「……仲間の方は転生者だったんですか? 私は…………死にたくないです……」


「やらなきゃいずれやられる。この街ももちろん、国もなくなる。両親も死ぬぞ?」


「でも、私は……死ぬのが怖くて……」


 話はわかっているのだろう。ギルドにも魔王や魔族の情報は少なからず伝わっているはずだ。

 だが転生前に一度死ぬ体験をしたからか、その恐怖が植え付けられているのだ。


「そうか。なら俺が、圧倒的な力を持っていれば付いてくるか? さらにそのレベルまでお前を引き上げることが出来ると言ったら?」


 そう、スタートオーバーという効果が発動するのはレベル10になってからだ。 

 その後、再度ここに訪れれば圧倒的な力が手に入っている状態である。

 レベル10がソロで魔王討伐は不可能だが、同レベルの仲間がいれば容易になる。

 今はそれを見越して確認しているのだ。


「そう……ですね。もしあなたがここのダンジョンを一人で攻略出来たとしたら……それほどまでに強いというのなら、協力しますよ。今の話からして魔王と戦わざるを得ない状況ですし」


「わかった。では、ダンジョンを攻略したら誘うとしよう」


 思ったより条件が緩かった。そんな条件ならスタートオーバー前に達成予定だ。


「でも無理ですよ? このダンジョン攻略した人いませんし。大昔ですけど、おそらく転生者だった30人で挑んでも断念した話ですから」


「いや、是が非でも攻略する。俺は魔王も魔族も許さない。それに黙って殺されるのも嫌だしな」


 そう言って話を終え、ミリアは業務へ戻り、ヒバリはダンジョン攻略に戻る。




 ダンジョンに向かう途中、長時間潜るための食料などを買い込む。

 宿屋でもある程度はもらってきたのだが、今回はダンジョン内で一泊するつもりだ。


 今はいつどこに魔王たちが攻めいるかわからない状況のため、早々に攻略の手を進めておかなければならない。






 そんな状況であるのに、ダンジョンの入り口に到着すると揉め事のニオイがした。


「あぁッ? 俺たちゃわざわざ遠いところから来てやってんだぞ? なのになんでダンジョンに入れねぇんだよ!」


「ですから、今は魔物の活発化の影響もあって入場を制限しているんです。生きて帰れる保証もないんですよ!?」


 どうやらダンジョンの受付で許可証を持たない冒険者が駄々をこねているようだ。




 今はダンジョン産の魔石や、宝箱からのアイテムが高騰している。

 ダンジョン内に潜れる冒険者が限られていることで供給が少なくなっているからだ。


 ギルド側もなるべくならダンジョンでのアイテムを確保してきてもらいたいと思っている。

 だが、規制されていては従うしかないのである。


「うるせぇ! こっちは30人フルでいんだよ! そう簡単にやられる訳ねぇだろ!」


「ち、ちょっと! ダメですよ!」


 いくぞ野郎ども! と言いながら荒くれ冒険者たちは受付の静止を振り切り中に入って行った。




(魔法使いが圧倒的に少ないメンツだったな。1階で苦戦しそうだ)


 自分もダンジョンに入るため、受付に行くとかなりぐったりした様子でしゃがんでいた。


「大丈夫か? 俺も中に入るぞ」


 カードの許可証を提示する。


「ああ、はい、問題ありません。先ほどはお騒がせしてしまいすみません……」


「いや、大丈夫だ。勝手に入って行ったがどうなるんだ?」


「許可なく勝手に入ったとなると罰金があります。ですが……許可がないということは基本的には戻ってこれる強さもないと言うことになります。全滅しても自己責任です……」


「そうならないように実力を測ってから、ってことか、なるほどな」


「ええ、そうです。許可をもらった方々はその力を認められたからという事です」


 いわゆるお墨付きということだ。許可証がなければ入れないというのは死ぬ可能性が高いから、罰金は抑止として設けてはいるが、勝手に入れば自己責任である。


 先ほどの冒険者たちは生きて帰ってきても罰金が待っている。

 これに従わず逃げれば最悪冒険者証の剥奪になるそうだ。




 身勝手な冒険者をわざわざ助けることもないなと感じ、ヒバリはダンジョンの攻略を再開する。




今日はこれで更新最後です!


明日また更新します!


明日は2話更新したいと思っております!

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