第三章 第一話 誰がために
第三章突入です!
毎日1話の更新を心がけていますが、出来なかったらすみません!
明後日は複数話投稿予定です!
ここはギルドの会議室である。
今は事の詳細を話し終わったところだ。
全てを包み隠さず話した。
話を聞いた子爵、ギルド長、副ギルド長は何も言えずにいる。
それもそうだろう、この街にいた最高戦力が亡くなったこともそうだが、圧倒的な魔族の存在と確実な魔王の存在。
それがもう目と鼻の先にいるわけだ。
人間族は窮地に立たされている。
沈黙が続き、重苦しい空気の中ヒバリが話し始める。
「俺は強くなりたい。そして魔族を殲滅する」
決意の籠もった声でそう切り出す。
「仲間だと言ってくれたんだ。俺はそんな風に言ってくれた仲間を忘れて生きていくことは出来ない。仇を取る必要がある。俺には……その力がある」
声は小さく淡々と、だが気弱にも感じられない。
実際、戦う力はあるだろう。
魔族を相手に単身生きて帰ってきたのだ。だが、そこまで安心出来るほどではない。
相手は魔王。魔族とは比較にもならない強さだ。
そんなヒバリの様子を見かねて子爵が口を開く。
「ヒバリくん、気持ちはわかる。痛いほどにね。でも、どうするつもりだい? 今の君からは一人で戦うって言っているように聞こえるよ?」
「……何かいい案があるって言うんですか?」
怪訝深そうに返事をする。
「ないこともないかな? 例えば、新たに仲間を募ってから……」
「俺にそのつもりはない!」
テーブルを叩き、声を張り上げる。
仲間を殺されたばかりの俺にそれはないだろうと怒った。
「ヒバリ! 子爵様に向かって不敬だぞ!」
ミケルが声を上げ、いつも以上に睨みをきかせてこちらを見ている。
「……すみません、取り乱しました。ですが、最初に伝えた通りです。俺には力がある。そしてその力は敵を倒すことによって成長するものなんです」
「ああ、こんな事態だ。多少は話し方が荒くても構わない。でも、そうか……。ではこの街を拠点として欲しいと言ったら応じてくれるかね?」
この街の防衛についてだろう。戦力が下がったんだ。それも道理である。
「この世界にはダンジョンがあるでしょう?俺はそこへ行きたいと思っています」
レベルを上げるのであればダンジョンが最適だ。
ダンジョンは魔物の巣窟、レアアイテム狙いで入るプレイヤーもいたが、レベル上げの代表的な場所である。
「ダンジョンは今、入場制限をしている。この街の近くにもあるが魔物が活発化している中で一人は危険だ」
ミケルがそう答える。だが、ギルド長レティシアは考えが違うようだ。
「私はヒバリさんなら行ってもいいと思います。強くなれる確信がおありなのですよね? 魔族……ひいては魔王の脅威を考えると頼る他ないかと」
レティシアはここまできたらそれもいいと言う。このことは王国へ知らせ、その後は各国にも知れ渡る。今は強者を募るべきと判断した。
「もっとも、ヒバリさんという戦力が欠ける恐れもありますが、何もせず手をこまねいているよりはよっぽど効果的だと思います」
話し合いの結果。レティシアの意見を採用することになった。
レティシアはヒバリに期待していた。何かが他の人とは違うと。
話が終わり早々にギルドを立ち去ろうとしているとノエリアに声をかけられる。
泣きそうな顔だ。
「ヒバリさん……、どこか行ってしまうんですか?」
「ああ、この街からは離れる。」
「……着いて行きたい、って言ったら連れて行ってくれますか?」
「……ごめん。やらなきゃいけないことがあるんだ」
これはノエリアを守るためでもある。
このまま幸せに暮らしてもいいだろう。
だが弱いままでは近いうち魔王に殺されることになる。
死んでしまえばそこで全てが終わる。
「じゃあ……いつか、帰ってきてくれますか……?」
俺はノエリアが好きになっていたようだ。
この子をなくしたくないし、笑顔でいて欲しい。
そう思う。どうせやり直すんだ、今のうちに聞いておこう。
「ノエリアは俺が好きなのか?」
「…………はい……」
その言葉を噛みしめたくなる。
でも今はダメだ。洞窟での出来事を思い出し、ぐっと堪える。
「そうか、ありがとう。さっきの質問だけど、今は返事が出来ない。でも一つ言えるのは、もし、また受付の3箇所で迷うことがあればノエリアの所に並ぶと思うよ」
そう言ってすぐギルドを後にした。嗚咽を漏らし泣しているノエリアを見ていられなかったし、そばにいたいと思ってしまいそうで怖かったからだ。
次の日には街を出た。
用意はいくつか回復薬を買い、到着までの食料を買っただけだ。
装備は変わらない。ノエリアが選んでくれた鎧と腰巻。武器はリーアお手製のユニローズソードだ。
ちなみにギルドで、今回の依頼の報酬は全てヒバリのものだと言われたが、自分の分だけをもらい残りは辞退した。
目的地までは馬車は使わず、走った。全力で走った方が速いからだ。苦しくなってくるが、あのことを思い出せばなんてことはない。
「ステータス」
随分と久しぶりにステータスを確認する。
称号:[ゴブリンキラー]、[コボルトキラー]、[ジャイアントキリング]
職業:天聖
レベル:5
ランク:E
HP:1150/1150
MP:452/452
STR:678
INT:424
VIT:567
AGI:891
EXP:312/6250
職業スキル
-バッシュ-消費MP3
-スラッシュ-消費MP5
-一閃-消費MP10
-サザンクロス-消費MP38
-アトミック・レイ-消費MP95
スキル
<体術:7>、<剣術:7>、<投擲:3>、<回避:5>、<追跡:5>、<隠密:4>、<夜目2>、<気配察知:3>、<魔法耐性:5>、<自己回復:10>、<鑑定3>
エクストラスキル
=起死回生=
(鑑定スキル……。ようやくエクストラスキルを確認出来る)
感慨深いものがある。
起死回生という未知のエクストラスキル。
これのおかげで助かった場面は多い。
その詳細を確認する。
=起死回生=
発動条件:レベルアップ
効果1: 必要経験値減少(全)
効果2: スタートオーバー
効果3:******
効果4:******
(やはりその効果は一つではなかったな。必要経験値減少は正直予想してたが(全)ってどうゆうことだ? それに効果3と効果4は伏せられているな)
先に効果1:必要経験値減少(全)を鑑定してみる。
『効果1:必要経験値減少(全)について』
・レベルアップまでの必要経験値が大幅に減少
・スキルの獲得までの必要経験値が大幅に減少
・スキルレベル上昇までの必要経験値が大幅に減少
・******
・******
項目は全部で5つある。開示されているのは3つだけだ。鑑定スキルが上がれば見れるようになるだろう。
(3つはおおよそ予想通りだ。残り2つについては内容が伏せられていて、今までの経験からも予想が出来ない)
次に効果3:******を鑑定してみる。
反応が何もない。やはり鑑定スキルのレベル不足が原因か……。
効果4も同じだろう。
最後に効果2:スタートオーバーを鑑定してみる。
『効果2:スタートオーバーについて』
規程のレベルに達した時、この世界での出来事をリセットします。
次の発動はレベル10です。
これは間違いない、この世界に来る前に戻る、やり直しのことを言っている。
なぜ次の発動がレベル10なのか、この効果はレベル2の時と4の時に体験しているが規則性がわからない。
レベルの上がった回数であれば1、3、9。この発動するレベルにどういう意味があるのか、考えが及ばない。
だがヒバリは安堵した。レベル10になればもう一度やり直せる。初めて出来た友とも呼べる仲間を、死なせずに済むと。
レベル10が最大値であるだろうこの世界であるならあと一回だけ、次に間違えれば取り返しがつかない。
誰かが殺されれば、もうそれらは救えない。もし村が、街が、国が滅んでしまえば、救えるものもなくなる。
「そうはさせない。攻めてくるなら全て殺す」
そのために強くなる。
仲間を守れるように、好きな人を守れるように、幸せを守るため。
ダンジョンに潜る。
是非、ブクマ、評価などお待ちしております!




