第二章 第十七話 天聖
次が第二章、最終話になります!
いつも更新遅くてすみません!
一日一回は必ず更新をしますので、ご容赦ください……
最後の力を振り絞り、なんとかエルダーを1体倒せた。
エクストラスキルが発動したということはレベルが上がっている。
自身の力が上がっているのもわかる。
(レベルアップで全回復もゲームと一緒か)
全員を救える。
魔物を蹴散らせる。
やることをやろう。
時間がないのですぐさま新しい職をセットすべく一覧を開く。
選択可能職業一覧
・大剣聖
・剛剣聖
・空剣聖
*天聖
米印の職が現れる。
(天聖?! レベル6の職じゃなかったか!?)
あくまでインカネートオンラインでの話だが、天聖はレベル6で選択可能になる職業だ。
派生は空剣聖から。
空という名が付く通り、軽やかに舞い、目には見えないほどの剣速で敵を切り刻む。
さらには跳躍が可能で巨大な敵、空中の敵に対しても有効になる万能型だ。
ヒバリは元々レベル5になれば空剣聖を選ぶつもりでいた。
しかし、その上位職である天聖が現れたのだ。
それを取る以外考えられない。
天聖を選択する。
「うぉお……!!」
体全体に力がみなぎってきた。
その力を噛みしめる。
今、この場では強者になったという自負がある。
もう悩むことも、迷うこともない。
その力を存分に見せつけよう。
直立から未だ距離のあるキングに向け、剣を軽く十振りする。
「……サザンクロスッ!」
傍目には振ったかどうかもわからない速度。
光の斬撃がキングを細切れにし、肉塊がその場でドシャッと落ちる音がする。
これは空剣聖のスキルでクールタイムがほとんどなく、連発が可能な優れたスキルだ。
そのままマリベルの元に走り、コボルトを殲滅する。
一振りする毎に2、3体のコボルトが倒れていく。
マリベルに近づくとグレイスボックスという魔法で自分を守っていた。
本来は氷で閉じ込める魔法だが、こうして防戦にも使えるのか、と感心した。
マリベル周辺のコボルトを殲滅すると魔法を解き、フッと崩れ、座り込む。
「マリベル! 大丈夫か!? ごめん、さっき負けそうになった……」
「ん、大丈夫。あなたが戦ってるのを見て私も頑張れたから。あとはレオンとリーアを助けてあげて」
「わかったッ!」
急ぎナックラーとマジシャンを倒しにいく。
今更エルダーがいようが関係ない。攻撃能力の高い敵から倒していく。
「一閃!」
走りながら一閃を使うといつもより飛距離が伸びていた。
レオンの周りにいたナックラーの8割近くが一撃で倒された。
そして残りをレオンに任せ、リーアの元に向かう。
「リーア! ごめん! 遅くなった!」
リーアはかなり傷付いていた。ところどころ風魔法で切り裂かれている。
エルダーの補助付きマジシャンたちの魔法を避けきれなかったんだろう。
「おっそいよ!! 残りは任せたからな! あたしは疲れたから下がる!!」
「了解! これ、使って。」
そう言って回復薬を渡す。
「サンキューッ! これは貰ったからなー!」
と言いながら去って行った。
(ちょうど周りに味方もいなくなったし大技使って見るか)
剣を両手で持ち、上段に構える。
「アトミック・レイ!!!」
構えた剣に光が集まり、発動と共に剣を振り下ろす。
集まっていた光は振り下ろされると同時に前方へいくつもの線に枝分かれし敵をまるごと飲み込む。
範囲は1km先にまで及ぶが、洞窟の中なので見える範囲までだ。
光に当たっている部分が消滅し、ダメージを与えるのだが、この場は狭かったため全てのコボルトが消滅してしまった。
(そういえば、レオンだけまだ戦ってね?)
すっかり忘れていたが振り返り確認すると、すでに全てのコボルトナックラーが倒されていた。
「あれ、レオン。戦ってるところを見てなかったけど、残ってたの全部倒したの?」
「ああ……まぁ、数匹のコボルトナックラーだったからな……」
無傷のレオンを見て評価を改める。
エルダーの強化が入っていただろうナックラーの群れを一人でどうにかしていたのだ。
短い時間とは言え、無傷でだ。
ゴブリンで言えばジェネラル15匹を相手に無傷でいたということになる。
転生者なのでは? と疑ってもいい程の強さである。
リーアは回復薬を飲んだからか、薄い傷は消えたようだ。
切り傷が残っているのは結構深めの傷だったのだろう。
「ヒバリ! 初めてみたけど、すごい強いな! でも最後のなんだよあれ! 最初から使えよ全く!」
ぶつぶつ言ってくるが、リーアをよく見るとストライカーのくせに脚が全く汚れていなく、すごく綺麗だった。
「脚がすごく綺麗だ」
「はい? 何言ってんだ!? 急に口説こうとすんな!」
バシッ
叩かれた。
(声に出ちゃってたの!? はずい! て、そうじゃなくて!!)
「いや、ごめん! 違うんだ。リーアはストライカーなんだよね? ナックルに血が付いてるのは殴ったんだなってわかるんだけど、今回、脚で攻撃した?」
「ん? 脚で? んー、してないな? なんで?」
(なんでじゃないよ……)
「ストライカーについて詳しく教える。戦力上がるからしっかり聞いて欲しい」
説明しようとしてると、ガバッと抱きつかれる。
!?
「ま、マリベル??どうしたの……??」
ズズッと鼻をすする音が聞こえる。
「ヒ、ヒバリさんが死んじゃうかと思った………そしたらいきなり強くなってビックリした……」
そう言いながら少し離れる。
「いや、ホントごめん! というか……皆さん! 本当にすみませんでした! 私の作戦ミスで皆さんを危険に晒しました!」
申し訳ございませんでした! と何度も謝る。
「結果オーライっしょ! 早く帰って報酬貰お!」
「そうだな。そもそもヒバリがいたから俺らは勝てたんだ。いなかったら間違いなく全滅してる。反省は帰ってからでいいんじゃないか?」
レオンもそう言って気遣ってくれる。
「ありがとう、じゃあ戦利品を回収して帰って報告しよう。ただしリーア、てめえはダメだ。」
一度言ってみたかったんだ。
「ああ!? なんでだよ!」
「えっ、すみません……何でもないです」
通用しないと嫌がらせにしかならないな。
「戦闘直後にストライカーのことを教えた方がわかりやすいと思うんだ。それにそこまで長くならないからさ」
「わかったよ。手っ取り早く頼むぞ!」
戦利品の回収などはレオンとマリベルにお願いし、簡単にストライカーとしての動きを教える。
基本的には、脚による強力なスキルがあるため、それに合わせた連撃を教える。
「なるほど、全然わからん!」
(それ! 知ってるやつの返しだろ!)
「じゃあもうこれからは脚を主体にして。騙されたと思ってやれば強くなるから。また一緒に依頼受けて、そのとき詳しく教えるよ」
「そうだな、それで頼む! 絶対また一緒にな!?」
そう言ってまた一緒に依頼を受ける約束をする。
「おーい、それ俺も参加したいぞ?」
リーアとの会話が聞こえていたのかレオンもそう言い出す。
「私もです」
マリベルも同様に。
「じゃあ、またみんなで依頼を受けよう! 魔物が活性化しているということだから、今日と同じような調査依頼はこれから増えると思うよ」
次もきっと一緒の依頼を受けよう。
その次も一緒だ。
だってもう仲間だから。
みんなで強くなっていこう。
今日のようなことが二度と起きないように。
リーダーとしての責任感をしかと感じながら、改めて決意する。
仲間って、いいなぁ。
次の更新はたぶん、明日です……




