第二章 第十六話 絶対絶命
そろそろ第二章終わります!
ちなみに閑話は当分予定ないです!
作戦?も決まりいよいよコボルトキング戦である。
まずはマリベルの魔法、フローズミストだ。
広範囲、ここで言うとコボルト部屋を対象に、少しずつ霧がかかってくる。
その霧に気付いた時には全身が凍っている、という恐ろしい魔法だ。
攻撃力はないが、人間相手に向けたら集団戦では無双出来る広範囲妨害魔法である。
ゲーム内では耐性を上げるのが常識のため、ほぼ通用しなかったが。
今回は不意打ち、かつキングも含め、耐性が0である。
これが初撃で決まるというのはでかい。
キングのような格上であればものの数秒で解けるだろうが、その数秒で片を付けるつもりである。
マリベルには魔法を打ったあと、エルダーがいなくなるまでは隠れているように指示をする。
エルダーを倒し切れずに凍結が解けたとき、真っ先に狙われるのはヘイトを持ったマリベルだ。
格下のコボルトだとしても大勢に囲まれてしまえば後衛は敵わない。
マリベルは納得し、うなずく。
レオン、リーアは最速でエイダーの元に向かい、これを殲滅。
敵の凍結が解けても、二人でエルダーのみを狙って欲しいと伝える。
エルダーを殲滅出来次第、マジシャンから倒して行ってもらう。
そしてヒバリはキングを抑える。
作戦を伝え、準備は万端だ。
さぁ、コボルトを殲滅しようか!
「マリベル、フローズミストだ!」
「はい!」
詠唱を開始して5秒。
辺りが霧に包まれる。
「行くぞ!!」
「「了解!」」
レオンとリーアが返事をする。
レオンとリーアはものすごい速さでエルダーに迫っている。
凍結しているのはキングを含めて全員。
うまくいったな、と思い、キングに集中する。
「一閃!」
ガギィーン…
ヒバリの渾身の一撃は、コボルトキングの大斧により防がれてしまった。
(えっ! 動き出しが思ったより速……っ!?)
そのまま大斧の腹で壁に吹き飛ばされる。
(うっ、あ!)
ダンッ!
壁に激突し、地面に落ちる。
(痛ってぇ……あ、頭から血が……まだキング無傷だぞ…? やばくないかコレ。)
間違いない。魔族によるブーストがかかっている。
ほっといたらすぐにでも村の殲滅戦が始まっていたに違いない。
魔族がいた時点でそこまで考慮していれば状況は変わっていたが、今更それを嘆いても遅い。
仲間を信じ、自らがキングと対峙せねばならない。
キングはこちらを見て雄叫びを上げる。そして大斧を構え、走ってくる。
頭がボーッとしていて、視界がスローに見える。
レオンたちを見る。
すでにエルダーの3体目にトドメを刺したところだ。
まだ他のエルダーも凍っている。あっちは大丈夫そうだ。
マリベルの隠れている岩陰を見る。
今にも飛び出して来そうに前屈みになって声を上げていた。
「ヒバリさん! 勝って下さい! 負けたら嫌です!!」
心配をさせていた事に気付き、一気に目が覚める。
(こんなところで負けるやつが魔王討伐したいからと誘ったって来てくれないよな。よし! やるぞ!)
もう一度気合いを入れ、こちらからもキングに向かって走り出す。
キングが大斧を振るう。ギリギリで避けると斧は地面を割る。
斧を持っている方の手首にバッシュを行う。
「ガァッ!」
と一瞬叫んだが、斧を落とすことなく、そのままこちらに振るってきた。
硬い。
身を屈ませ、斧を避ける。
屈んだまま今度はスラッシュだ。
両足首を狙うも、防御力が高く、致命打にはならない。
そのとき斧を持ってない左拳が飛んできた。
避けられないとわかると剣を盾にし、ガードする。
また飛ばされてそうになるが、自分からバックステップを行い、衝撃をやわらげる。
少し距離を置き、お互い出方を伺うように動かなくなる。
遠くでレオンとリーアが戦っている音が聞こえる。
凍結が解けたか。
今はレオンたちを背にしてしまっているため、確認することが出来ない。
キングを前に視線を逸らすことは、死を意味する。
気になるがキングをどうにかしなければならない。
みんなに自分がやると言い切ったのだ。
剣を右に構え、一閃の構えを取る。左腰の鞘からはもちろん抜けている。
これは騙しうちのためだ。
スキルの連撃で押してみようと思い、キングに隙を作ろうとしている。
案の定、大斧を構えて身構え始めた。
(まぁ魔物なんて基本的に頭は使わないのかも知れないな)
大斧からはみ出している左足に向けてスラッシュを打つ。
と同時に勢いのまま剣を鞘にしまい、一閃を発動する。
スラッシュで左足が傷付き、反射でガードが緩んだ胴を目掛けて一閃が直撃する。
「ァァアア!!」
痛みからか声を上げるキング。
(こっちもMPが怖いからそろそろ倒しておきたいところなのだが……しぶとい……)
当たりどころが浅く、2度目の一閃でも倒し切れなかった。
足に力を込め、そのままダメージを与えていこうと思い切り掛かった瞬間、うずくまっていたキングの裏拳が直撃する。
地面を転げ回り、飛ばされたあと慣性で止まる。
(……痛い。骨折れてるだろ……力も入んないよもう)
諦めかけていてもキングの攻撃は止まらない。
追いかけてきたのか、顔を上げた瞬間、大斧が降りかかってくる。
反射的に剣でガードし、また大斧がやってくる。
攻撃に転じれない。
防戦一方となる。
それが約1分間続く。たった1分だが、緊張感のある戦いはそれ以上に感じた。
何度かバッシュを使い、攻撃を逸らしてきたが、限界が近いなと感じる。
(体力が……もう保たない……)
ジリジリと下がりながら攻撃を受けていると大きな岩があり、思わず飛び込む。
深呼吸を一回、先制攻撃をされる前に岩陰からキングに向かい飛び出す。
すると遠目にコボルトの群れが見えた。
マリベルが襲われそうだった。
レオンはナックラーに囲まれている。
リーアはエルダーを倒そうとしているがマジシャンに阻まれている。
凍結中のコボルトたちを倒しきれなかったのだ。
ゴブリンキングを倒したという実績、その余裕から相手を見誤り、危機に陥っている。
全て自分の責任だ。
(絶対絶命じゃん……俺みたいなのが指揮したからこうなったんだ。まだ仲間を持つのは早すぎたんだ)
後悔先に立たず。
今更何を思っても、もう遅い。
現状は解決しない。
もし、この状況を解決出来るとしたらそれは何か。
エクストラスキルだ。
(そうだ……レベルアップが近いはずだ。もしレベルが上がれば全てが逆転する。レベル5にさえ、なれれば……)
メタルゴーレム、コボルトエルダー、その他に複数パーティで倒した魔物がいる。
「ステータス!」
今は経験値の項目しか見ない。他を見ている余裕がない。
EXP:1247:1250
(あと……1体!!)
この際、コボルトキングは放っておく。
残り僅かとなったMPを使用し、レベルアップするとしよう。
「うおおおお!!!! 一閃ッ!!!」
キングの攻撃を全力で避け、一番手前にいたエルダーに向かい走り出す。
そしてエルダーを一撃で倒した時。
また、久しぶりにあの声を聞いた。
『エクストラスキル =起死回生= 発動します』
また明日更新します!




