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第二章 第十話 ドラゴンとの邂逅

寝る前だから更新は間に合ったことに……!!




 洞穴に入ると中はさらに蒸し暑かった。


 振り返りマリベルを見ると、汗一つかかずにすまし顔だ。

 ブレないな、と思いながら少しずつ奥に進んでいくと奥から多数の気配を感じる。

 マップを表示させ気配の元を確認すると、進んでいった先は広場になっているようだ。


「マリベルさん、この先に広場があります。おそらく魔物が複数います。どんな魔物かはわかりません。どうしますか?」


 マリベルに指示を仰ぐ。


「戦闘は避けた方がいいです。でも調査が目的でここまできているので、様子は伺いたいです」


「了解しました。では、危ないので私一人で確認しにいこうと思います」


「ダメ。二人で確認するのが調査の目的。私も行きます」


 強い意識でそう言われ、断ることが出来なかったヒバリは、何かあればすぐにでも逃げようと思いながら奥に進んでいく。




 嫌な予感を感じながらも、気配を殺し広場の様子を伺う。






 そこには圧倒的強者であるインフェルノドラゴンが佇み、こちらを見ていた。






(ッッッ!!!? ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!!)




 マリベルを抱きかかえ、全力で逃げる。


(目が合った! ヤバイ! 戦ったら二人とも絶対死ぬ!!)


 自己防衛機能が全開で警笛を上げる。


 マリベルをかかえるとき力づくだったため、ウッとうめき声が聞こえたが全力で無視して走り出す。


 インフェルノドラゴンは格が違う。


 通常のドラゴン種であればレベル5から始まるが、インフェルノドラゴンはレベル7相当の魔物だ。

 強さで言うと魔王の1つ下。たった1つしか変わらないのだ。

 レベル4で無双楽しいとか思ってるヒバリは間違いなく瞬殺される。


 もし街が襲われれば大した時間も保たずに消し済みになるであろう。


「ちょ、ちょっとなんですか! 離してください!!」


 マリベルが声を上げ暴れ始める。


「離さない!! 見てないのか!? インフェルノドラゴンがいたんだぞ!!」


 今までのヒバリからは感じたことのない様子からマリベルも黙ってしまう。


「……あとで話を聞かせてください……」


 観念したようで静かになる。




 幸いなことにインフェルノドラゴンは追って来なかった。

 そのまま馬車に駆け込み、すぐに街に戻ってくれ! と叫ぶと御者も何かあったんだと思い、急いで馬車を街に向ける。


 


 街に戻るまでの間、火山で見たことをマリベルに話す。


 話を聞いたマリベルは、確かに巨大な影は見たが、見たこともない魔物だったという。

 それよりも周囲にいたファイアドレイクの数に驚いていたそうだ。


 あれは間違いなくインフェルノドラゴンだ。ヒバリは確信している。


(あの圧力と覇気……目が合っただけで冗談でなく死を覚悟させられた……幻なんかではない)


 火山に幻影魔法を使う魔物はいないのだ。


 街に着くまで常にマップを表示させ、空を確認し、追手がこないか、インフェルノが動き出さないか、注意深く確認しているのだった。






 街に着き、ギルドに向かう。


 とりあえずは無事に街に帰ってこれたが、この先どうなるかわからない。

 なぜなら"インフェルノドラゴン急襲"というクエストがインカネートオンラインにあったからだ。


 街を襲い、王都に向かっていくインフェルノドラゴンを複数パーティで協力して討伐を目指すというものだ。

 今、この世界でそんなことをされたら滅んでもおかしくないと感じた。


 


 ギルドに到着し、依頼の内容に関して緊急の要件のためギルド長か副ギルド長を出してくれと受付でお願いする。

 ちょうど両名ともいるようだ。背の高い受付嬢は、ヒバリの顔を確認すると「2階会議室におられますので、そちらにお願いします……」と教えてくれた。


 受付嬢は、あんなにかっこいい人いたっけ!? と自分を疑う。

 ノエリアの選んだ鎧と腰巻、それと急いでいたため前髪がズレて顔が全開になってしまっていたせいだ。


 マリベルとともに会議室に向かう。

 ノックをすると「どうぞ」と聞こえる。

 失礼します、と中に入るとミケルと若いエルフがいた。


(ここでエルフ!! でも今は伝えるべきことを先に伝えよう)


「火山での護衛依頼を受けたヒバリと申します。マリベルさんと調査に向かいましたが、非常事態だと思われたのでご報告に来ました」


 ずいぶんとテキパキと話すようになっている。

 こと、戦闘が絡んでいる案件はあまり緊張しないヒバリなのである。


「そうか、ご苦労。椅子にかけてくれ。こちらも報告することがある」


 イスに座るとまずはエルフが挨拶をしてくる。


「ご挨拶が遅れました。私はこの街のギルド長、レティシアと言います」


 レティシアは完全に大人の女性という感じだ。出るところは出て引くところは引いている。エルフなのでわからないが歳は若そうだ。

 長い金髪ロングで目は垂れ目。耳も横長に垂れ耳だ。

 見た目だけで言えば誰が見てもドストライク! と言うほどの美貌である。


 お互いによろしくお願いしますと挨拶をし、早速、火山の報告を行う。




 報告はヒバリが行った。

 

 火山の外側にはあまり魔物はいなかったこと。

 奥の方にもファイアドレイクはいなかったこと。

 マリベルも知らない、新たな洞穴が出来ていたこと。

 中にはマリベルいわく、大量のファイアドレイク。

 ヒバリいわく、インフェルノドラゴンがいたこと。


 そしてインフェルノドラゴンと目が合ってしまったため、全力で帰投したことを告げた。




 レティシアはそれは本当かと顔が青ざめる。

 ミケルがこちらを睨み話し出す。


「インフェルノドラゴン? 聞いたこともない。お前、嘘の報告をしていないだろうな?」


 いつもの10倍はキツい目でギロリと睨まれる。


「やめなさいミケル。インフェルノドラゴンは存在します。言い伝えの中では、ですが」


 レティシアが止めてくれる。さすがギルド長。ありがとうございます。


「言い伝えって……私も知り得ない、エルフの言い伝えをなぜこの男が知っているというのですか?」


「それはわかりません。ヒバリさんの人となりなどは追々知っていこうと思っています。それよりインフェルノドラゴンがいたという報告事態が問題なのです。ましてや今回はギルド職員も同行していてその影を見たと言っています」




 レティシアは当時のギアシーズ連邦に連なるエルフの国出身である。

 そこで戦争の折、エルフの国はインフェルノドラゴンによって滅ぼされたとされている。

 魔族の手も多かったため、その事実を知るものは少なかったが王族の末裔であるレティシアにはそれが受け継がれていた。


 そんな厄災が目と鼻の先にいる。そのことに焦っているのである。


「火山から戻っている間、常に警戒を怠らず注意していましたが追ってくる様子はありませんでした。

それに私たちが生きてこの場にいるということはインフェルノドラゴンはまだ動かない、と言うことかも知れません。その気なら一瞬で死んでます」


 ヒバリが自身の予想を語る。


「そうですね……少し取り乱しました。インフェルノドラゴンについては秘匿として下さい。広めると街が混乱に陥ります。下手に動くよりも様子を見ましょう」


 この場での話し合いはそのようになった。


 後日、領主であるファサームを含め議論するとのことだ。


「今回はご報告ありがとうございました。あとで報酬を受け取っておいて下さい。それともうひとつ、こちらからの報告になります」


 そう言って両手を合わせてから、書類を見せてくる。


「ヒバリさんをEランク冒険者として承認しました。これからも頑張って下さい」


 ギルド長から昇級が確定したことを告げられる。


「それとすみません、もう一つ聞きたいことがあります」


 


 これで最後だとヒバリは尋ねられる。


「私は昨日までトトノ村の奥、ゴブリンの現状調査に行っていました。ヒバリさん…………ゴブリンキングの死体がありましたが、あれはあなたが倒したのですか?」




 またなんか起きそうだ、と思いながらも、今更嘘を付く必要はないと判断しそれを肯定する。




続きは明日更新しますっ!

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