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第二章 第四話 過去の戦争




 副ギルド長と無言の夕食も終わった翌朝。社宅のような6畳ほどのワンルームに早速お呼びがかかる。




コンコンッ


「ヒバリ様、起きていらっしゃいますか?」


コンコンコンッ


「ヒバリ様?」




爆睡しているヒバリである。


「すみません、ギルド長が呼んでいます……中、失礼しますね」


 言いながら、そっとドアを開ける。




 ベッドで幸せそうに寝ているヒバリを見つけ、ゆすって起こそうと近づき顔を見る。

 起こしに来たのは昨日対応してくれた真ん中の受付嬢である。


 彼女の名前はノエリア。歳は22歳。茶髪で肩までのストレート。琥珀色の目、身長は160cm程度で体型は標準なのだが胸が大きいため少しぽっちゃりに見える。


 そんな彼女はヒバリの顔がドストライクだった。


(ぇぇえ! こんな田舎者っぽいのに顔が可愛い!? 昨日は前髪で隠れて顔見えなかったけど、こんな顔してたんだぁ……)


 人の秘密を見てしまうとドキドキしてしまう。

 彼女はこの時それをそう認識した。


「ヒバリ様、起きて下さい。」


 軽くゆすっても起きない。




「ヒバリさん! 起きて下さい!」


 強めにゆすってみる。


 するとゆっくりと目を開け、昨日の受付嬢を寝ぼけながらも確認する。


「……………ぅわっ!」


ゴンッ


 勢いよく後退りし、壁に頭を打ち付ける。


 寝起きに見慣れぬ可愛い女の子が目の前にいる。誰でもビックリすると思う。


(なになになに!? どゆこと!?)


 急いで前髪を調節する。


「ヒバリさん、すみません。副ギルド長が昨日話してある、とのことで昨日の会議室に来て欲しいとのことです。中々、起きて来られなかったので起こしに来ました。勝手に中に入ったのはすみません」


 どうやら頼まれて起こしにきてくれたようだ。


「そ、そうでしたか。すみません、わざわざ起こしにきてもらって……」


「いえ、ではよろしくお願いしますね」


そう言って部屋から出て行く。




「………うわー、ビビった……」


(大げさじゃなく寝起き目の前に女の子がいるとか、どう対応するのが普通だったんだよ……)


 ノエリアは思いのほか顔を近くで覗き込んでいたようだ。




 早めに準備を整え、村人の服のまま昨日の部屋へ向かう。

 昨日の部屋の前でノックをするだけなのにまごつく。

 昨日の副ギルド長以上にギルド長が怖かったらどうしようかと考えている。


 するとちょうど昨日の受付嬢が3人分のお茶を持ってきていた。


「ヒバリさん、おはようございます。ちょうどよかったです。お茶を用意したので、ドアをノックしてもらっていいですか?」


 親しみやすくなってきている。話しやすくていいなと思っていると胸元に小さい名札があることに気付く。

 胸元だったためチラッと見た。逆にむっつりとか思われないかな、と余計なことを考えるが彼女の名前がノエリアだとわかった。


「ヒバリさん?」


 首をかしげてこちらを覗き込む。すかさず顔を逸らす。


「は、はい! ノックします!」


部屋の中にも聞こえる声音で宣言する。


ガチャッ


「早く中に入れ……」


 ノックする前に副ギルド長がドアを開ける。


 そしてギロリと睨まれる。




 失礼します、と部屋の中に入り、ノエリアが続く。


 奥に座っているのがギルド長だろう。壮年の穏やかそうな人だ。


「こんにちは。ヒバリさんだね。私はファサーム。

ニコラス・フォン・ファサーム、この街を含む、ファサーム領の領主だ。よろしくね」


 もっと大物が出てきた。


「こ、こんにちわ!私がヒバリです」


 貴族に対しての礼儀なんて全くわからない。とりあえず腰から頭を下げておく。


「ははっ、急に出てきてごめんね。そんなにかしこまらなくていいからとりあえず座ってよ。話が聞きたくて来たんだよ」


 これから尋問が始まるのか。すでに泣きそうな顔で絶望する。


 ノエリアは全員が座ったのを見て貴族であるファサームから順にお茶を出し、部屋を出て行く。


(確か子爵と言っていたよな、結構なお偉いさんだ……)


「さて、話というのは他でもない。今回ゴブリンから手に入れたという大剣から話は始まるのだがね……」


 そう言いながらファサーム子爵は話を始める。




 139年前、王国は戦争をしていた。


 相手は魔族。


 魔族は非常に強かった。


 強力な魔物を操り、時に戦場に現れ人間族を駆逐していった。


 人間族は魔族に対抗すべく、周辺諸国と同盟を結ぶ。


 グランドリア王国、ゴルグ共和国、ギアシーズ連邦、自由都市ネロ。


 人間、ドワーフ、エルフ、獣族、またその他の種族。


 彼らは団結し、力を合わせ魔族に立ち向かったという。


 だが魔族の王、魔王はさらに強大すぎた。


 数で優っていた人間族も、魔王には敵わなかった。


 そんな折、時の英雄たちが現れる。


 英雄は全部で30人。

 剣を持つもの、魔法を使うもの、己の拳が武器だというもの、気配を殺し不意打ちするもの、人々を癒すもの、聖の名を冠する武器を作るもの、仲間を鼓舞し力を上げるもの、魔物を逆に従えるもの。


 英雄たちは魔王に立ち向かっていった。


 被害は大きかったが、英雄たちのおかげで魔王は退いた。


 魔王がいなくなると魔族共々、魔物も少なくなっていった。




 だが近年、その魔物がまた増え始めた。

 その数は徐々に増えていったため調査が遅れていたが、結果は魔王の復活が予想されるものであったのだ。 

 3年前、Cランク冒険者であるアルヴィンは英雄の再来と言われるほど武勇に優れた冒険者だった。

 王国は調査としてアルヴィンを西の未開地域に送った。

 その他にも有能な冒険者を揃えていたが、誰一人帰ってくるものはいなかったという。


 そして今回、アルヴィンの愛用していたという大剣を持ち帰ったという話が出たのだ。

 今回領主はたまたま未開地域の再調査の話をするべく、この街にきていた。

 少しでも早く現場で指揮するためだ。であるのに、ヒバリの戦果の話を聞くべくギルドまで足を運んだ、というわけだ。


 ちなみに戦争によりギアシーズ連邦と自由都市ネロが壊滅し統合した。

 今は帝国都市ネロシーズとなっており、大陸の東側が人間族、西側が魔族の逃げた先となっている。


 そしてギルド長は、先に現場を確認してくるといいトトノ村に行ってしまったようだ。




「まぁかいつまんで話すとそういうことだ。話をしてくれるかね?」


 ファサームから直接尋ねられ、ここまで話を聞いて断れるわけがない。


「はい、話します……」




 やっぱり尋問みたいになってるなと思うヒバリであった。



次の更新は明日の夜予定です。

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