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第二章 第一話 オウロの街




村を出てそれなりに時間が経った。今は2日目のお昼頃である。


 そして道中では野宿で一泊している。


(めちゃくちゃ遠いじゃないか……)




 村を出るとき、村人たちが何か心配そうな顔でこちらを見ていた。今なら原因は明白だ。


(荷造りもせず、食料も持たず、戦利品の重い荷物のみ。徒歩だけで街に向かう、なんて知ったら誰でも心配するよな……)


 というか街までの距離を全く聞いていない。


(馬鹿すぎる……旅なんてしたことない現代人には思い付きもしなかった………………お腹減ったな……)


 今持っている荷物は戦利品だけだ。

 村で換金できないか聞いたら、村ではほぼ自給自足のため、買い取ってもらうなら街まで持って行かないとダメだと言われたのだ。




 結局あのあとゴブリンの巣には行かなかったが、戦闘を繰り広げた広場までは村から歩いて6時間程の距離だった。

 街までなら遠くても同じくらいかな、とタカを括ったのが間違いである。


 街までは林道だ。片道の馬車なら通れる程度の幅があるが非常にデコボコしていて歩きにくい。

 周りには何か動物がいるかも知れないが、捕らえたところで火を起こすことも出来ず、生食するしかない。

 見たこともない木の実や葉、キノコを見かけることはあるが、手を出すことはしない。

毒があるかも……の前に現代っ子には抵抗があるのだ。


 木陰に一旦座り昨日から定期的に呼び出してるコマンドを実施する。


「マップ」


 中央には白く光っている点があり、西側を見ると左端には村のかけらが映る。


 実は先ほど、3台の馬車とすれ違っている。おそらくその馬車だろう。

 自分から見てすぐ左手に3つ並んだ緑の点も見える。

 お腹も減り、街から来ただろう馬車に道を聞こうと思ったが、極度の人見知りであるヒバリにはそれが出来ず、通り過ぎていくのをただただ見ているしかなかった。


 マップの中央から右手を見ると少し先から画面が薄くなっており表示が変わって見える。

 さらにもう少し行くと、おそらく街である、村より範囲の大きい線も見える。


(距離的には走ればすぐ森を抜けそうだ。その先すぐに街なら少し走るか。疲れはそんなにない。お腹が減るかも知れないけど……)




 軽く走り出すと10分程度で林道を抜け、見晴らしの良い草原に出る。


 森は高い位置にあり、視線で下ると遠くに街が見える。


(うおおー! やっと着いた! 走っても全然疲れないし思ったよりスピード出るし、最初から走ればよかったな……)




 そして小走りで街に向かっていく。




 街の周囲までくると、街は大きな壁で覆われており、外敵が侵入出来ない作りになっている。

 入り口に門が見え、その門には2人の見張り兵士が槍を片手に立っている。


(門番か。ますますそれっぽくなるなぁ。とりあえず声かけないと中入れてくれないよな。門閉まってるし……。)


 知らない人に声をかけなければいけないと緊張からか顔を伏せているヒバリ。

 さらには背に大剣、腰に剣とナイフを持った、村人あるまじき格好をした怪しい男だ。


 さすがに止められるだろう。


(だいたいここで一悶着あるんだよな……何もありませんように……何もありませんように!)




 祈りながらも声をかける。


「止まれ! 何のようだ?」


 声をかけるはずが、逆に高圧的に声をかけられビクッとする。


「こ、こんにちわ……ぼ、冒険者になりたいのですが………な、中に入れてくれますか?」


(よし! ちゃんと言えた!)


 どもっているのは考えていない。


「トトノ村からきたのか? 冒険者に夢見てる若者か……まぁ、最初は大変だろうけど頑張れよ!」


 そう言って景気付けてくれ中に案内してくれた。


「あ、ありがとうございます!」


 となぜか救われた子犬のような目で門番を見ながら中に入るのであった。






(な、何も起きない……? それならそれでいいんだけど、街に入るのに税金とかかかるかと思ってたし、お金持ってないから何か問題が起こるかと思ってたな……)


 完全に行き当たりばったりである。




 中に入ると、いわゆる中世の街並みであった。

 人も多く立派な家も多いが、村側の門は裏手だったようで、密集した住宅地になっている。

 街の反対側にお店とかがありそうだ。


(なんかワクワクするな!! とりあえず冒険者になって身分証作ってから戦利品売ってご飯にしよう!! そうしよう!!)


 テンションが上がり、ご機嫌な様子だ。




 冒険者になるには、冒険者ギルドで登録を行わなくてはならない。

 インカネートオンラインでもそれは同様だ。ただし、ゲーム内だと登録料が2万ゴールド必要であった。

 ご機嫌なヒバリはそのことすらも全く忘れている。

 むしろ端金だったため覚えてもいなかった。




 中央に向かって歩いていると、少しずつ色々なお店が出てくる。

 その中にはもちろん露店なども多くあった。


 今は現金を持っていないため、早く買取に持っていこうと冒険者ギルドへ足を早めている。


(冒険者ギルドな。……………どこにあるんだろ……)


 お得意の迷子である。人に聞くことも出来ない。

 スマホがあれば検索をかけたりマップを使ったりしていたのだが…


(マップぅぅう!!!)


「マップ!」


 目の前に街のマップが現れる。


 村を出る前にある程度試していたのだが、メニュー画面からステータスやマップなどは他の人には見えない仕様になっているようだ。

 気兼ねなく表示出来てありがたいなーと思うヒバリであった。


 表示させたマップを見ていると色々なお店が確認出来る。

 一つ一つ、マップ上のお店に触り、何のお店なのかを表示させていく。

 宿屋や、武器屋。服屋や、ご飯屋などが表示されていき、冒険者ギルドも表示された。


(あった!! ここだ! って目の前じゃん!)




すでに目の前が冒険者ギルドだったようである。




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