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第一章 第十一話 一閃




 2匹目のゴブリンジェネラルを倒した直後、後ろに控えていたゴブリンたちが一斉に襲いかかってくる。


(息つく暇もなしか……)


 そのまま走り出しゴブリンたちを一撃で倒していく。


 キングは奥の方に逃げており、キングの周辺に固まっていたソルジャーとメイジもこちらへ向かってくる。


(本能剥き出しだな。おかげで思ったより楽に倒せそうだ)




 今更、ソルジャーやメイジに苦戦するヒバリではない。

 時折り不意打ちをくらうが、耐久値の高さもあって、前ほどの傷を負うことはなかった。


 数だけは多かったが少しずつ減らしていき、遂に残りはキング1匹となった。


(さすがに疲れてきたな。キングは……復活したか、片目でこっちを睨んできてる。長期戦にならないよう一気に片をつけよう)




 ゴブリンの腰巻で血が付いた剣を拭い、キングを見据える。



 まだだいぶ距離はある。


 だがヒバリには勝てるという確信があった。


 ジェネラルの大剣は使わない。扱い慣れてしまったソルジャーソードがいい。




 キングがググゥ…と呻くように唸りながら棍棒を持ちこちらに向かってくる。




 あと100メートル程度か。剣を鞘に戻し、構える。




 ゲームをやっていたときは、これって剣聖のスキルなのか? と疑問に思っていたが、これはこれで理に叶っているなと今は思う。


 キングとの距離、残り30メートル。


 あと半分ほどか。

 剣は抜かずに全身の力を抜く。


 左足は折り曲げ前へ。

 右足は後ろに伸ばしきる。


 左手はそっと鞘にそえる。

 右手は鞘に納めた剣を握り前傾姿勢を取る。




 距離が15メートルほどになったとき、左足と右腕に力を込める。




「一閃!!」




 スキルの属性は光。


 剣を抜く瞬間、対象に向かって光の線が現れる。


 その光をなぞり剣を差し出す。


 狙いは体の中央、魔石のある場所だ。


 ヒバリの姿が消え、瞬間、キング後方15メートルの位置に現れる。


 ヒバリを見失ったキングは辺りを見回す。

 

 後ろを振り返ったとき、視認したと同時にキングは口を開け白目を剥く。




そして最後に力を振り絞り短い言葉を話す。




「マ、オウ、サ、マ………」




 ゴブリンキングは魔王の命を何一つ叶えられずに倒れた。






「……………っぷはッ! た、倒せたぁ……」




 ヒバリも力尽きるように仰向けに倒れる。


 ゴブリンキングは胴の半分程度を斬られており、中央の魔石にギリギリ到達していた。


(一発で決まってよかった……連発出来ないし、決めきれなかったらジリ貧だったよなきっと。キングは一応まだ格上なんだよ……)




 ゲーム内の話ではあるが、通常格上はソロでは倒せない。

 仲間を集い、パーティを組んで倒せるかどうかなのだ。

 レベル3のソルジャーですら同レベルであれば6人パーティ推奨である。

 レベル5のキングに至ってはレベル4のジョブだと20人以上集まってプレイヤースキル次第だ。


 この世界の人間はほとんどレベル1なんだろう。命をかけて格上を倒さなければならない。


 それも1度ではなく繰り返し繰り返しである。


(というかキング、倒れる間際に不安になること言ってたな……魔王様って……ゲームだと魔王ってレベル8からだったよな。さすがに俺一人で倒すのは無理だぞ……)




 ゲーム内でもソロが多かったが、魔王レベルになるとそれはなかった。

 ゲーム内トップランカーたちに誘われ、やっとのことで倒せたのを覚えている。

 一度倒すと同じ魔王は二度と現れなかったが、他にも魔王は何体か出てきた。




(とりあえず村に向かうか)




 魔王は街を標的にするよう指示を出していたが、おそらく王国そのものを狙っているだろう。


 もしかしたらありがちな世界征服狙いか?


 いずれにしても魔王戦の前に仲間を見つけなくてはならない。


(ほとんどレベル1の世界からレベル8以上って見つかるのかな……てか存在すら怪しいぞ……)


 この世界では無一文だったことを思い出し、急いで戦利品の回収を行うのであった。




 村に到着すると、のどかな畑仕事している光景が見える。

 時間は夕方頃か。日も暮れ始めている。


(向かってる間にゴブリン見かけなかったけど、偵察に来てたやつらはどっか行ったのかな? あの大群にまみれてたのか?)




 村の入り口に立っていると農夫に声をかけられる。


「おまえさん、血だらけだが大丈夫か?」


「あ、す、すみません。傷はないです。全部返り血なので大丈夫です」


 全く大丈夫なんてことはない。普通に返り血だらけなのだ。服の七割方、血に塗れている。


 農夫は「なんだコイツ?」みたいな顔をしている。




「ん? お前誰だ? どうしたんだその血?」


 後ろから聞き覚えのある声が聞こえ、すぐに振り向き返事をする。


「あ! ハモ……。だ、大丈夫ですよ。全部ゴブリンの返り血です」


 大丈夫ではない。通常、魔物と接敵することのない世界だ。

 ハモンドは「何言ってんだコイツ?」みたいな顔をしている。


 ある程度、事情を説明する。


 自分は冒険者だということにしてゴブリンキングの話は避け、街から依頼があったためゴブリンを討伐しにきたと伝えた。


 村長からはゴブリン討伐についてお礼を言われた。

 特に依頼をしたわけではないが、たまに現れるゴブリンに困っていたという。

 年に一人か二人は犠牲になっていたらしい。

 誤魔化すつもりで適当なことを言ったが実際に冒険者がゴブリン退治にやってきてくれることがあるという。


 そして今回の目的は達成したので街に戻るつもりだと話す。


 街の場所が分からないため、方向音痴ですみませんどっち方面でしたっけ? ととぼけて聞くと村長からも「大丈夫かコイツ?」みたいな顔で見られるのであった。




 今日はもう暗くなるということで、そのまま村長宅でゴブリン討伐のお礼だと一泊させてもらうことになる。


 朝になり少し警戒して起き上がるも、キッチンには村長の奥さんがおり、ご飯の用意をしているので食べて行ってと言われ朝食を頂く。


 相変わらずの薄味だ。でも安心する味だった。




 昨日のうちに服を洗濯させてもらい、代わりに村長の好意で村人の服を一着もらう。

 隣の街で働いているという村長の息子さんの服だそうだ。

 着る機会ももうないだろうからとくれたのだ。何から何までありがたい。


 洗濯した服が乾いたか確認をしてから身支度を整える。

 村長たちにお礼を伝え、昨日聞いた街の方角に進む。


(全員救えたようでよかった。あのスキル戻りがなかったら俺もとっくに死んでたよな……)




 改めてこの村に来てからのことを思い出す。


(だが実際は根本的な解決にはなってないんだ)


 魔王がいる。


(仲間も欲しいけど、まずは自分も死なないように強くならないといけないな!)




今後の目的を定め、ヒバリは街に向かって歩き出す。






第一章 ゴブリンキング討伐編 完




第一章完結です。

今日中に第二章の続きを投稿しまーっす!

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