第一章 第九話 剣聖の力
ゴブリンを殲滅すべく巣に向かう。
(そういえばゴブリンの巣の性格な位置までは分からないな。そもそもゴブリンキングは村から出て来ないって話だったが、今回は森の中にいたよな)
ゴブリンキングと戦闘した位置も追跡スキルのおかげで分かったが、今となると場所はおおよそでしかわからない。
(マップ機能を試してなかったけどあるのかな? まずあれか、時間はまだあるんだしメニュー画面とか色々と試してみるか)
今までは異世界に来たり、そこで死の危機に陥ったりで異常事態に思考が追いつかず、改めて現状の把握に努めるのであった。
ふぅ、と心を落ち着かせ、祈る気持ちでカッと目を見開き、言葉を発する。
「メニュー!」
パッ、と目の前にはいつものステータス画面とは違った光景が広がる。
(あるんかーい!! もっと早く気付くべきだった……)
うなだれるヒバリは改めてメニュー画面を見直す。
メニュー
*ステータス*
*マップ*
*アイテム*
(マップあるじゃん! ステータスもこの項目にあるってことはマップもメニューを通さず開けるんだろうな。アイテムってのは持ち物とか装備のことだろう。まずアイテム見てみるか)
アイテムの文字に触れると、やはり思った通りの所持品一覧であった。
所持品一覧
・異界の服
・異界のシャツ
・異界のズボン
・異界の下着
・異界の靴
・ゴブリンナイフ
・火魔石(G)
先程ゴブリンから抜き取り、ポケットに忍ばせていた魔石の表記も出てくる。
赤色の魔石だったから火魔石なのだろう。
ゲームではGという表記はなかったが、これは大きさだとか魔物のランクだとかそういったことだろうと予想し納得するのであった。
(他に何も持ってないし、アイテムはこんなところか。次はマップだな)
マップを選択する。
パッと画面いっぱいにマップが広がる。
(やっぱり開けるんだな。中央に白く光っているのが自分か? 上が北、下が南だとするとこの右手東側、緑の線で囲まれてるのはハモンドさんのいる村っぽいな。全体の柵の形が一緒だ。反対に西側は少し先までは表示されているが、暗くなってて何があるかわからない。行ったことのないところは表示出来ないってことだな)
当てずっぽうだが西に向かうしかないなと歩き出す。
村の位置と村から離れて行ったゴブリンたちのルートを考え、ゴブリンの巣の位置を予測する。
(おそらくこっちの方に向かえば昨日の広場には出るだろう)
マップを閉じ、戦闘の準備を整え走り始める。30分ほど走り、覚えのある獣道に出る。
(予想通り、もう少し行くと広場だな)
動きを止め息を整える。
気配を殺し、少しずつ歩を進める。
広場に着く前から微かに声は聞こえてた。
だが果たしてここまでの規模なのかと目で見て確認するまでわからなかった。
広場には埋め尽くさんばかりのゴブリンがいた。数を数えられないほどだ。
それでもだいたいで考えると300匹以上はいるだろうか。
中央にはゴブリンキング、その横には大剣を持ったゴブリンジェネラルが2匹いる。
ゴブリンメイジ、ゴブリンソルジャーも数十匹はいそうだ。
(これは……ゴブリン村総動員か? 今まで動きがなかったと言っていたのになんで今になってこんなことになっているんだ?)
注意深くそれを見ているとゴブリンキングが話し出す。
「コレカラ、ニンゲンノムラニイク!イママデシズカニ、シテイタガメイレイガキタ!センリョクヲソロエタラ、ツギハ、マチダ!ツイテコイ!!」
カタコトなので聞き取りづらかったが何者かに命令されたと言っている。また、村のあとは街に行くと。
(街か。村より人口は多いはずだし村で女を攫い、戦力を増やしてから街を襲いに行くってことだよな)
街なら戦闘力の高い職業に就いた人もいるだろう。
簡単に壊滅するとは思えないが、ジェネラルクラスが増えると被害は軽くはならないだろう。
ゴブリンの強さを人間で表すとこうなる。
ゴブリンはレベル2の戦士や魔法使い、2人分と同等。
ソルジャー、メイジはレベル3の剣士や魔道士
、5人分相当。
ジェネラルはレベル4、剣聖や賢者などが12人でなんとかなるというところ。
キングに至ってはレベル5だ。強さの指針としては「計り知れない」と表現するのもやぶさかではない。
ヒバリはレベル4だが、体感でキングと1対1ならなんとかなると思っていた。
スキルの助けもあるが、自身の身体能力と経験からくる感覚的なところが多い。
だが、ジェネラルや他のゴブリンも一斉に来るような集団戦となると話は別だ。
(また釣りをするか? 今回はレベルアップが期待出来ない。スキル戻りも出来ないし、それだと怪我を負うと回復も出来ないだろうな。せめてまともな武器があれば……)
悩んでいるとゴブリンたちは進行を開始する。今夜、睡眠魔法で村全体を眠らせ襲いかかるはずだ。
この大群でゆっくり行進するとしたら時間の辻褄は合う。
また、やはりこの世界にきてすぐ出会ったゴブリンと村に来ていたゴブリンは偵察であったのだろうと思う。
村に来ていた10匹が作成開始可能だとキングらに伝えていた可能性が高い。
(そうなるとこの大群を倒したあと、偵察をしているゴブリンが何をし出すかわからない。なるべくすぐに村に向かった方がいいな。普通のゴブリン10匹程度ならハモンドさんが倒せると思うが無傷では済まないだろう)
この大群を倒したあとの行動を決めたところで、現状を打破する案は浮かんでこない。
(隠密スキルが高ければいきなりキングに不意打ち出来たんだろうけど、隠密はまだスキルレベルは1だしな)
気配を殺しながら大群を追っていると、少し離れたところに1匹でいるゴブリンソルジャーを見つける。
周囲の警戒だろうか。辺りを見回している。
(ソルジャーなら隠密1でもいけるか? いや、特に手はないんだ。時間もない。やるしかない!)
音を立てずにゴブリンソルジャーの後ろに回り込むよう動く。
ソルジャーは辺りを見てはいるが油断している。
(今だッ!)
ゴブリンナイフを手に、背後からソルジャーの首元へ一気に突き刺す。
顔は伏せたが血が吹き出ているので、多少自分にかかっているのがわかる。
倒れた音も出ないよう抱き止めて、体を掴み絶命するのを待つ。
ナイフが首に刺さっているため声は全く出せないようだ。
ソルジャーの力が抜け倒したのを確認し、ゆっくりと地面に寝かせる。
(パラメータでわかっていたこととはいえ、上位ゴブリンを苦もなく倒せるのはでかいな。これは剣聖の強さを過小評価しすぎていたかも知れない……)
だが次はキングの前に、最上位ゴブリンであるジェネラルが2匹いる。
この種族には2度殺されかけている。油断することなく対応しようと心がける。
ソルジャーの剣を鞘ごと奪い、血で濡れた顔を袖で拭う。
俺ってこんなにグロ耐性あったんだなと、血塗れになっても、汚いなー程度にしか思わないヒバリであった。
続きはまた明日投稿しますっ




