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七色の明日へ  作者: ohan
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第十八話:禍根刻む光の風

月は、火星が本格的に人間の住む地として整えられる前から、居住区としての役割を果たしていたので、火星が栄えてからも、寂れることなく在り続けた。もっとも火星で暮らすか、月で暮らすかは各々の自由で、ある意味ではより閉鎖的であり、ある意味では底抜けに自由であるというのが、月の特徴であった。つまり、世間の風習に馴染めぬはみ出し者が、多く流れ着くのが月であったりしたのである。

故に、マーゼ・アレインは月の出身者が多い。俺、ハヤブサと、シアルが出会ったのも月だったのだ――――――。


3年前、俺は――――――――月にいた。

「食い逃げだーっ!!あっ、そこの兄ちゃん!そいつ捕まえておくれよお!」

「あぁ!?」

でっぷりとした身体でエプロンをつけている、いかにもメシ屋の主人といった風体のオヤジが、恐らく俺に向かって叫んでいる。ギャンブルに負けて苛々としていた俺は、不機嫌な声を発すると、“そいつ”と思われる姿を睨みつけた。

“そいつ”は見たところ、帽子を目深にかぶっていたので顔まではよく分からなかったが、背丈からしてどう考えても子供だった。

「ふん…………」

あんな年端もいかぬ子供が食い逃げをしなくてはいけない世を呪ったが、それとこれとは話が別だ。叫びながら必死に走っているあのオヤジにも、あいつの生活があるだろう。いや、重力が地球の六分の一であるので、走ってという言葉は適切でないかもしれないが。

「恨むなら、この時代を恨みな……!」

わざとらしく気障っぽい言葉を呟くと、多少心得があった体術を用いて、食い逃げ犯に組みかかろうとした。足を絡ませ、相手の身体を浮かして、そのまま地面に叩きつけるつもりだった。六分の一Gの元では大した怪我はしないだろう。

「……何!?」

そいつは、見事な身のこなしで宙をくるりと周ると、そのまま俺を組み倒そうとした。

「だが、まだ甘いな」

俺は相手の腕を掴んだまま、倒れ込んだ。

「……捕まえたっと。まだ、月の六分の一のGに慣れてないな。地球からあがってきたばかりか?」

勝ち誇った顔で俺はそいつに訊いたが、そいつは何も答えなかった。

すぐ後ろから例のオヤジが駆け寄ってきた。

「すまんな、兄ちゃん!あー……観念するんだな坊主!」

俺に笑って会釈すると、すぐに厳しい表情になり、オヤジは食い逃げ犯の帽子を吹き飛ばした。

「ほら、何か言ったらどうなんだ!?」

オヤジは問い詰めるように唸った。

「……あうぅ……ぐすっ……ひぐっ……っご、ご……ごめんなさい」

肩を震わせ、顔を俯けその“少女”は嗚咽を漏らしていた。

「女の子……だったのか……」

ふぅ、と俺はため息をついた。なんだか、無性に気の毒に思えてきた。よくよく見ると、まだ十二、十三かそれぐらいの少女である。

「なっ、泣けば許してもらえると思うなよ!」

オヤジの横顔から同情の一片が読み取れるが、だからといって許してやることは出来ないだろう。彼にも生活がかかっているのだろうから。

「あーっ!オヤジ!俺が払うから、ここは見逃してやってくれ」

柄にもなく面倒なことに関わっちまったと、独りごちながらも、俺は金をオヤジに渡した。

「ったく!物好きだねぇ……。いいか、お嬢ちゃん。今日はこの男に免じて許してやるが、次はないと思えよ?」

偉そうに講釈を垂れているが、垣間見せたほっとしたような表情を俺は見逃さない。オヤジも、こんな少女相手に手荒な真似はしたくないのだろう。俺はふとしたところで感じた良心に、知らず口元が綻んだ。

「分かってるさ。こんな子供が盗みを働かなきゃ生きていけない世の中が間違ってるってな」

無念そうに天を仰ぐと、オヤジは静かに言った。

「そうだな……、こいつは俺がなんとかするよ。もう二度と同じことを繰り返させないためにな」

「あぁ……頼むよ。それが俺達大人の使命だ」

少し含むところを感じさせる言葉を、オヤジは残していった。なるほど、鈍感そうに見えて気付いていたのか。

 

 「えへへ……ありがとうなのです」

オヤジが去ると、先程の泣き顔からは想像できないほどの眩しい笑顔を少女は見せた。

「あれ、お前泣いてたんじゃ……っ!?」

「嘘泣きです。あの場合しょうがなかったんです……。あのっお金は必ず払いますからっ……」

「俺とオヤジを……騙したんだな?」

「だっ、騙しただなんて……そんなつもりじゃ……」

「でも、泣けば……いや、泣いているところを見せれば、なんとかなると思ったんだろ?」

少女は言葉を失くして、再び俯いている。俺は踵を返すと、少女の元から去ろうとした。

(胸糞悪いことしやがって……!)

「あのっ……待ってください。行くところがなくて……」

「それも……演技なんだろ?」

追いすがって懇願する少女に、俺が考えうる限り最大限の冷たい声で返した。

「あ、あの……」

少女はそれ以上言葉が見つからないようだった。少々大人気ないと思ったが、これくらいは教育上許されてもいいだろう。

「ふんっ……地球に狼少年て話があるんだが、聞きたいか……?」

「え……?」

少女は困惑して、首を傾げた。


 俺は、一応は自分の住処ということになっている所へ、少女を連れて行った。

「もう……嘘は吐くなよ?それくらい、俺なら分かる」

入口を端末認証で開けると、振り返って俺的に凄みを利かせた声で言った。もっとも、あんまり様になってないとは思うのだが。

「え、でもさっきは……」

「へっ、ガキだねぇ。お前の三文芝居に突き合ってやったんだよ。俺もあのオヤジも」

俺は少女を見やると、二ヤリと笑った。

部屋の内装は質素なものだった。ここに長居するつもりはなく、仮住まいのつもりで借りたものだったからだ。なんだかんだと、半年程ここに滞在していることになる。

初期家具として置かれていたソファにその少女を座らせると、俺は近くのパイプ椅子に腰をおろした。

「さて……それじゃあ話を聞かせてもらおうかな。嫌だってんなら構わないが」

シアルと名乗ったその少女は、俺の予想に反して、自分の生い立ちを事細かに話した。それは、確かに耳も塞ぎたくなるような悲惨な人生だった。ただ、その表情に変化は見られず、淡々と事実を述べているだけだった。そして、その言葉に嘘がないことも明らかだった。

この時は、抗うこともせず状況を甘受している俺に似ていると……そう思っていた。

「ふーん……それで月にねぇ……」

俺は一呼吸置いてから、続けて言った。

「何でそうまでして生きたいんだ?これから生きていて何か良いことでもあるのか?正直に言ってやる。お前の前に、綺麗な夢を見せてくれる王子様は現れねーよ。この世界はくそったれだ。」

俺は苦々しげに吐き捨てた。

「夢があるから……どうしても叶えたい夢があるから」

しかし、動揺する素振りを見せる事もなく、少女はさらりと言った。

「夢……だと……?」

シアルは、くすりと笑うと瞳を輝かせて、自分の夢を語った。それは、俺がいつの間にか失いかけていた光だったのかもしれない。

俺は、随分な思い違いをしていたことを気付かされる。この少女は、現状を甘受して諦めている訳ではない。彼女はただ、揺らぐことのない自分を持っているだけだ。どんな状況であれ、悲観することも、逃げ出すこともせず、巡る時代の中で、ただ自分の信じる道を歩んでいるだけだったのだ。

「参ったね、こりゃあ……」

 

 その後、俺達はマーゼ・アレインに入ることになる。

なってやろうと思った、お前の王子様に。お前の夢を叶えてやりたいと思った。こんなくそったれな世界で、終わっちまってる世界で、女優になって映画に出たいだなんて甘ったるい夢を、何の疑いもせずに語るお前を笑顔にさせたいと思った。偽りの笑顔じゃなくて、真実ほんとうの笑顔に。初めて誰かの為に生きてやろうと思った。


俺は記憶の旅路から、現実へとかえる。時間を確認すると、オペレータ席に座っているエクスルへと確認をとった。

「エクスル。これで第一フェイズは、完了だろ?そろそろシアルの方へ、向かうぞ」

「了解です。悟られないように頼みます」


**********


「敵機の可能性あり……ちゅうことやな?」

「えぇ……。こちらでも別のポイントで未確認機体を確認している。そちらの詳しいこともまだ分かっていないのだけれど。少し様子を見てみましょう」

ハルカとユーリの耳に、冷静であろうと努めるサクラの声が聞こえた。

「ええんか、そんなんで?何かあってからや、遅いんやで!?」

「ハルカ、落ち着いて。どうしたのよ」

「あれが、敵かもしれんのやろ?落ち着いてられへんわ!」

ユーリの宥める言葉も、ハルカの耳には入らない様子だった。

ピー……ガガガ……

「あ、あの……、防衛部の方ですか?」

突如、開いてあった回線より入った音声通信により、二人ははっとなった。

「誰や!?どこにおる?」

「こちら、そちらの位置から見える機体の内部にいるのですが……」

ハルカの獣の様な鬼気迫る尋問に、悲壮感を漂わせる女性の声で返事がかえってきた。まだ幼さの残る、甲高いその声の持ち主は、まだ私やハルカより年下だろうと、ユーリは推測した。

「通信を受理しました。貴方は誰ですか?何故、その機体に乗っているのでしょうか?」

ユーリが落ち着いた声で、見知らぬ少女に問うた。この際に、サクラにも聞こえるように回線の音量を上げておいた。

(サクラ部長……!)

そしてユーリは、相手に気取られないように小声でサクラに合図を送った。

「わ、私……マーゼ・アレインの人に捕まってしまって……ここに閉じ込められているの……。開け方も分からないし……私どうすれば……」

「落ち着いて聞いてください。まず、貴方の名前を教えてください。そして、そのマーゼ・アレインの人達の特徴と様子を教えてください」

ユーリの声が緊張で少し強張った。

「は、はい……」

その少女は、震えた声でゆっくりと話し始めた。もっともこれも、シアルにとっては作戦の内である。時間は稼げれば稼げるほどいいのだから。その全てを話し終える頃には、かなりの時間が経過していた。

「つまり、シアルさん。貴方は、歩いているところを捕えられその機体に乗せられた。そしていつの間にか、意識が失い気が付くとそこに閉じ込められていたと……そういうことですね?」

「はい……」

「相手は、一人だった?」

「はい」

一人と答えたのもシアルのブラフだった。情報は可能である限り、撹乱させられるだけ異なる方がいい。

「それにしても酷いやっちゃな……。か弱い女の子掻っ攫って人質にしようなんてな……」

「ハルカ、やつらはテロリストよ。普通の思考能力を適用させては駄目よ」

シアルは、歯ぎしりして悔しがった。何でこんなことを言われなければならないのだろう。フィエンさんも、レオさんも、エクスルさんも、カレンさんも……ハヤブサも、みんなとっても良い人だ。分かっていたことだけれど、耐えるのは辛い。でもそれが私の任務だと、シアルは我慢した。

「そうやな……あいつらには、人間の心なんてあれへんのやろな」

この一言で、シアルの中の押さえていた気持ちが溢れだした。それは止めどなく激情となって、心と身体を支配していく。

「違うっ!あの人たちはそんなんじゃない!!みんな……すごく優しくて……」

二人は黙って、シアルの絞り出す声を聞いていた。

「ね、かまかけて正解だったでしょ」

「ユーリの考えることは、末恐ろしいなあ。敵には回したないわ」

ハルカは、苦笑した。

「お互い様……、あら、気をつけて!動いて来るわよ!」

突如、シアルの乗るメギドが動きだした。腰に据えられたハンドガンを抜くと、闇雲に撃ち始めた。その一つが、ハルカとユーリの乗るメギドの胴体をかすめた。

「くっ、正体を現したな!やっぱりさっきまで、うちらを騙してたんやな!」

ハルカの乗るメギドは同様にハンドガン抜くと、容易くシアルの乗るメギドの持つハンドガンを撃ち落とした。

「いやああっ!来ないでっ!来ないでっ!」

シアルは、我を忘れて叫んでいた。

今度は実体剣を抜きスラスターを吹かすと、ハルカ達目がけて突進を開始した。

「サクラ部長!どうしましょうか!?」

ユーリがサクラに指示を仰いだ。

「うまく捕縛出来ない!?もうすぐ増援も行くと思うから!」

「やってみます!出来るわね、ハルカ!?」

「当たり前や!」

ハルカは同様にスラスターを吹かし距離を保つと、ハンドガンでシアル機の剣も撃ち落とした。正確無比で無駄のない射撃だった。思わず、ユーリも息を呑むほどだった。武装は、これで全て解いた、そうハルカは、確信した。

「まだよ!この反応は……腰背部に……、粒子ソードを持っている!?気をつけて!」

「ホンマか……!?粒子ソードなんて、メギドへの実用化は公式にはなされてないはずや……」

「でも、この反応は……。マーゼ・アレインは私達の知らない未知の力を持っているとの話もあるし、用心して!」


 「てめえらあああっ!その機体から離れろっ!」

ユーリ、ハルカ機の音声通信に無理矢理男の声が割り込んだ。ハヤブサである。

ハヤブサは、焦っていた。嫌な予感はあった。でもまさか、戦闘になっているなどとは思いもよらなかった。状況は最悪だった。

「なっ……敵の増援!?ハルカッ、九時の方角から、敵機接近!サブモニターに出す!」

サブモニターを見て、ユーリは一瞬目を奪われた。その機体の美しさに。

(え……?この機体は……地球の新型……!?性能も詳しく分かってないのに……)

ユーリは音声通信を受けると、その位置から敵機の座標を割り出し、サブモニターに映した。それは、サクラ部長がシンラン部長から聞いたという新型そのものだった。盗まれたメギドが粒子ソードを装備していたことを考えるとなんら不思議ではない。彼等は、マーゼ・アレインは、新しい力を持っていたのだ。

「え?ちょっと……!?ハルカ?」

ユーリ、ハルカ機は、構えたハンドガンから無数の粒子ビームを撃ちだし、シアル機の装甲を次々に剥がしていった。相手は粒子ソードを振り回すが、こちらの機体をかすめもしなかった。そうしている間にも相手の機体は、その各部がスパークを帯びて、誘爆をおこしていた。

「ハルカッ!?相手を殺すつもり?やり過ぎよっ!」

「あぁ……そのつもりやけど?」

「え……?」

ユーリの背筋がゾクリと震えて、見渡す景色が反転した。にべもなくハルカは言い切ったのだ。

いつの間にか、サクラ部長との通信は途絶えていた。ここは、自分の意思で動かなければいけない。

「そうはさせねーよ!」

音声通信共に、ユーリ、ハルカ機とシアル機の間にもう一機純白の機体が割り込んできていた。ユーリが先程モニターで見た機体であった。

「新型っ!?もう来たっていうの?早すぎる」

「ユーリ!相対速度を!」

「え……えぇ……」

ハルカに言われてはっとして、ユーリはコンソールパネルに手を伸ばした。確かに、自分達が生き残ることが最優先である。余計な雑念は、私達を殺す刃にも成り得る。

今度の敵機は先程までのメギドとは段違いの動きを見せた。機体の性能もそうだろうが、なによりパイロットの腕が違う。生半可な覚悟で剣を交えては、足元をすくわれるとユーリは思った。

機体と機体がすれ違う刹那、メシアの携える粒子ソードが、ユーリ、ハルカ機のハンドガンを叩き斬った。その手元の爆発から回避するため、ハルカはすぐに機体をバックさせると、実体剣を抜いた。

「うちに剣を抜かせたことを……後悔させたる」

ハルカの瞳はえものを狩る、狩人の様にギラついていた。


 ユーリの瞳に映るレーダーには、複数の機影。それは待ち望んだものだった。

「こちらの増援が来たわ!」

編隊を組んで三機のメギドが戦闘に介入した。防衛部からの増援であった。

見事なコンビネーションで、三機のメギドはエクスル、ハヤブサの駆るメシアに粒子ビームを浴びせていく。銃撃と銃撃の合間を縫うように、休む余裕など与えないかのように、容赦のない攻撃だった。ユーリ、ハルカ機も含めれば事実上の四対一の構図であった。

「くっ……エクスル!こんなのいつまでも続けられるものじゃねーぞ!」

「分かっていますっ!……ただ、こんな状況どうすれば……」

エクスルも必死にコンソールパネルを叩いて、幾つもの計算式を構築しては破棄していく。シアル機を庇いつつ、被弾しないように戦闘を続ける。戦い慣れたハヤブサであっても、それは、相当な消耗を強いた。

「やばっ……!」

粒子ビームがメシアに直撃し、機体を大きく揺らした。一度、制御が効かなくなった機体に、あとは面白いように攻撃が当たった。粒子ビームは、メシアの純白のボディを抉っていった。

「これで……終わりや!」

ユーリ、ハルカ機は実体剣を大きく後ろに引くと、メシアの前に躍り出た。後は、完全に動きの止まった獲物を狩るだけだ。コックピット目がけて、勢いよく実体剣を突き刺した。

ユーリは言葉なくそれを見つめていた。これが、ハルカの答えなら責めるべきではないのかもしれない。もう覚悟は決めたではないか。ここはやるか、やられるかの世界なのだ。

「えっ……」

予期しない事態に、ユーリは言葉を失くした。

ハヤブサとエクスルの乗るメシアは、太刀を受けてはいなかった。純白のそれに覆いかぶさるように、黒き機体が、両手を広げて仁王立ちの姿で浮かんでいた。機体の各部がスパークを帯び、無数の火花を散らしている。

原形を留めないほどに破壊され尽くしたその機体のコックピット部分は、ユーリ、ハルカ機の実体剣に深々と貫かれていた。


「は…ヤ…ぶ……サ……にゲ……」


 俺は、消えゆくようにか細いその声に聞き入っていた。良く通る彼女のソプラノボイス。女優になるより、歌手を目指した方がいいんじゃないのと褒めると、子供の様に喜んで歌を歌った彼女。

いや、俺から見たらあいつなんてまだ子供で……、だから俺が守らなきゃいけなくて……。


「シア……ル……?」


 ハヤブサは、散りゆく光の粒を茫然と眺めていた。それは絶え間なく雨の様に降り注いだ。

なんて美しいんだろう。漆黒に塗りつぶされた宇宙にそれは、狂ったように舞っていた。光の風が、一筋、二筋、あぁ……数え切れないほどのそれは、永遠にも感じられる一瞬を通り過ぎていった。もう二度と戻らない光景を、それはスクリーンのように映し出した。そして最後には、メギドの黒々とした装甲の欠片が、当てもなく宇宙を揺らめいているだけだった。

あいつは……どこに……?


「シアル―――――――――――――――――ッ!!!」


 ハヤブサは、絶叫した。

シアルの乗ったメギドが爆散した後に、それは痛ましいほど響いた。


**********


次回、『第十九話:邂逅の果て』


フィエン、レオ、ヴェクト、カレン、そして『彼』。

思惑は交錯し、この度の戦いは終結する。

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