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七色の明日へ  作者: ohan
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第二話:親友

えーと、年表を作成してみると、エラーがありまして改めて書き直していきます・・・

ユーリとの会話を終えた俺は、醒めない興奮の中でなかなか寝付けないでいた。

新しく発見された衛星、人類が住める可能性、そして対抗勢力……。

火星での平凡な生活の中で現れた夢のような起爆剤。きっと俺以外の人でも同じだろう。

しかも、俺は地球での生活をあまりよく覚えていない。移住してきたときも、そんなに小さくはなかっただろうが、こちらでの生活が記憶の大部分を占める。

それでも忘れられないのは地球の青い空と、最後に別れた地球での幼馴染。

「地球か……」

(あいつは確か、地球に残ったんだっけか……)

もう戻れない地球に、時々思いを馳せる。

「もう戻れない故郷ってもなかなかアリだよねぇ…。なぁ、お前も早く来いよ。いや、もう来てたりするのかな」


俺は独り言を呟き、眠りに落ちていく。

**********



翌朝の新聞は、やはり新衛星のことでもちきりだった。開発部の研修生に対してでも、今日は多少の報告はあるはずだ。なにせ、発見したのが開発部で、これから拓くのも開発部なのだから。


(ん……?あれは……)

俺は良く知る姿を見つけると、駆けていって挨拶を交わした。

「よっ、レオおはよう!」

「あぁ、リクだね、おはよう」

「なぁ、見た見た?今朝の新聞!あ!昨日の号外でも知ってたか」

「残念、僕は開発部が発見してからすぐに情報がきたからね。情報部が握るより、早く知ってたよ」

「え?なんで?」

「開発部の若手エースだから……じゃない?」

屈託のなさそうな笑顔を浮かべてそいつは言った。

ぐ……こいつ俺が怒るのを知ってわざとこんな風に言ったな。

こいつも俺の火星での幼馴染、おなじ居住区ブロックに育ったレオ。銀の少し長めの髪と俺より小柄な体格。俺とユーリと同い年、でもって開発部の期待の星ときたもんだ。まぁ、こいつは小さい頃から何でもできたからな。俺より少しだけ……だけど。

「どーせ、お前もすぐに現場まで行くんだろ?若手エースさんよぉ」

「まさか!さすがのリクも木星までの距離を知らないわけじゃないだろ?」

「さすがのって……朝からそこまで喧嘩したいか、お前は」

「あーごめん、今のは素」

「よけい駄目だろ!!」

あははと、悪気もなく笑う。なーんでこんなやつがもう、現場に立ててるんだろうな。技術も知識も体力も、俺とそんなに変わらないのに。

「まぁ、実際問題、君ももうすぐに現場に立てると思うよ。ただ、シンラン先生は君に気づいて欲しいことが……あるんだと思う」

「お前は昔から……エスパーかよ!人の考えてることを……。それに、気づいて欲しいことだと?訳わかんねーよ。そもそもあの鬼教師に、そこまで深い考えがあるとは思えん」

「まぁ、あれだよ。地球の言葉にこういうのがあるらしい」

「突然に……なんだよ?」

「大器晩成」

「どーいう意味?」

「やっぱり、しばらくは無理かも」

怒って追いかける俺と、冗談だよーと言って笑って逃げるレオ。意味は後で、ユーリにでも聞いておこう。


**********



「『マーゼ・アレイン』唯一の火星か…洒落た名前だな」

「あの人の考えそうなことですよ。あれで結構見栄っ張りですし」

「ははっ違いない…」

「これで……迷ってるわけにはいかなくなりますね」

「迷いなんてあったのか?私は火星移住計画が施行されたときから迷ったことなどない」

「失言でした……。改めての決意ということに」

「その意味ではそうなるな。あちらの出方次第では、もう会議などと世迷いごとを言ってられない。開発部とは名ばかりだ」


火星から遠く離れた月のある場所での二人の男の会話であった。


**********


「なぁ、レオ?」

「ん?どうしたの?午前中の授業のノートならあとでコピーさせてあげるよ」

こいつは……、これも多分素だ。そしてノートも後で借りるけど。

「ノートは借りるとして……、妹さん元気か?」

「君がそんなこと気にするなんて珍しいね?なんかあったの?」

「いや、なんとなく……」

昨日、地球のことを考えていたからなんて恥ずかしくて言えない。俺はもともとそんな性格じゃないと思うし、やっぱり“前”を向いていたいから。

「きっと元気だと思う。最後に通信してから、随分たつけど……ね。それにこれからは忙しくなるし、あまり通信する暇もなくなっちゃうね」

「んだよ、少し冷たいんじゃねーか」

「何?好きなの?ロリコン?」


 リクがちっっがーうと大声を出して食事のトレイを投げるまでそう時間はかからなかった。

もっとも、ロリコンって何?と少しの疑問を持ってだが。彼、地球の言葉には弱いのである。


(ありがとうリク。そこまで気にしてくれて。君は顧みることを知らない人だと思っていたけれど)

「まぁ、いいや。俺たちには俺たちのすることがあるもんな」

「研修?っとと冗談だよ、冗談」

「ったく。俺も早く、現場に行きたいなぁー」


(それでこそリクなのかもしれないね)




ところで……

「なぁ、ユーリ?大器晩成って何?」

「大器晩成?誰がそんなこと言ったの?」

「レオが俺に」

「ぷっ」

「今吹いたな!?」

「吹いてないってば。なるほどなるほどっ。言い得て妙ね」

「なんなんだよー!」

というやり取りがあったのはまた別のお話。


**********


僕たちは知ってゆく。

僕たちは変わってゆく。

でも、変わらない人もいる。

いずれ、思いはぶつかる。

それでも人だから、いつかはきっと分かり合える。


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