表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七色の明日へ  作者: ohan
12/34

第十二話:黒白に狂い咲いて

「久しぶりの地球だな……」

シンランはそう呟き、開発部専用船を降りる。メギドは中に積んだままである。本来なら船の操縦は、専任の船長がいるのだが、任務の危険から、今回はシンラン自ら船を地球まで操縦してきた。よって、今シンランの周りにはだれもいない。

地球に降り立ったシンランは、その空気に顔を歪ませ、思わず口を覆ってしまう。

「くっ……、昔より大気の汚れも酷い。あまり、生身のまま動きまわらない方がいいな」

そして、地球でのもう一つの大きな問題は重力である。普段トレーニングを欠かさずこなしているシンランでも、やはり多少の違和感を覚える。また地球には、火星に移住した者を忌み嫌い、襲いかかって来る者もいる。それはしょうがない感情だとシンランは思う。いつか、地球の人間全てを火星へ移住させる――――。火星政府はそう謳っているが、実現するのはいつになるのか分からない。私が報いを受けるのも仕方のないことなのかもしれない、ともシンランは思った。それでも彼女は……、今はまだ倒れる訳にはいかなかった。

「ひとまず、情報部がメギドに類似した機体を見つけたというポイントまで向かわなければ」

シンランは、船に格納してあるメギドを地上に出すと、それに乗り込んだ。メギドならば、大気の汚染は気にせずに移動できるし、急な襲撃があっても難を逃れることができる。でもそれは、シンランにとって気持ちの良い行いではない。火星移住者が、強大な“力”を誇示しつつ地球を歩くのだ。地球に住む難民の人たちにとって、それは間違いなく嫌悪の対象となる。しかし、地球にもメギドと同タイプの機体が存在する可能性がある以上、決して油断は出来なかった。シンランは覚悟を決めて、メギドを操り、ポイントへ向かう。


情報部の示したポイントはすぐに見つかった。何故なら、それはあまりにも目立っていたから。

寒々しい、荒涼とした荒れ地にそれはあった。工場と形容するには、いささか粗末で簡素な、しかしそれは明らかに、何か大きなものを作るための建物だった。

「あの中に、あれが……」

シンランは自身の乗るメギドのコックピットから建物を眺めながら、情報部から提供された映像を思い出した。

「レータ……」

そして、想い人の姿が頭をよぎる。彼がこの件に関わっているかは定かではないが、その可能性もある。

「あれは……?」

シンランは、その工場の近くに、民家と呼ぶにはいささか大きすぎる別の建造物を見つけた。もし使用するならば、人が明らかに十数人で暮らすことが出来そうである。目を凝らすと、近くに植物を育てているようでもある。つまり、誰かが生活をしているということだ。

シンランは、自然にそちらの方角へ、メギドの脚を向けていた。行ってどうなるというものでもない。それでも、あそこに関係者が暮らしているのならば、話が聞きたかった。もちろん、何故あんなものをと、問い詰めるつもりではない。ただ、聞きたいのだ、それを造ったことへの真意を。

「なるほど。ここか」

「……!?誰だっ!?」

突如、メギドのスピーカーから声が聞こえた。メギドの通信は開放してあったが、この地球で、このスピーカーから声が聞こえてくることなど、彼女はまるで想定していなかった。シンランは思わず声を上げ、辺りを見渡した。

「火星政府直属の特務部隊『ユグドラシル』隊長、ヴェクト=ホムラと申します。そちらは、シンラン開発部部長とお見受けしますが」

「……!」

シンランは、声とともにその声の主も視認する。いや、正確には恐らくそれだと推定した。彼女の背後には、メギドのようであり、メギドではない、多少チューニングされているそれが五機、大地に立っていた。その中の一機が前に一歩出ていたので、先程の声はこれのパイロットであると、彼女は推定したのだ。ただ、その話の内容は彼女には全く理解が出来なかったので、返答すべき都合のよい言葉も見つからない。

「特務部隊、ユグドラシル……?私は聞いたこともない……!それは確かにメギドのようだが、お前らが火星政府の人間だという証拠を示せ!」

「申し訳ありません。私たち自身の存在は公にはされていないのです。そして、私たちが火星政府の人間であるという証拠を示す必要性も感じません。私達は、火星政府から特命を受けて地球に参りました。それを遂行せねばなりません」

「なんだと……?それなら、なぜ火星政府は私の地球への調査を許可した?おまえたちがもし本当にその特務部隊だとして、お前たちを地球へ寄越すなら、私を地球へ向かわせたりはしないはずだ」

「それは私が知り得ることではありません。それに私たちに与えられし任務は、シンラン部長……、あなたと同じとは限りません」

この男、口調は丁寧だが私に対して、何も話すつもりがないどころか、見下してさえいると、シンランは思った。だが、もし彼らが地球の人間か、テロリストであるならば、とっくに私を攻撃しているはずだ……とも、彼女は考えた。

(一体こいつらは何なんだ……!?何の目的があってここにいる……?)

「なるほど……。話さなければ納得できないようですね。いずれ分かることですし、我々の請け負った任務をお話しましょう。我々の任務はメギドに類似した機体の確認とそれの破壊。そして、それに関係する人物を火星へ連行すること」

「なんだと……!?それが火星政府が、お前らに与えて任務だと?馬鹿な、横暴すぎる!」

シンランは憤慨した。それが、ただそこにあるだけでそれを破壊するなど、勝手だ。

「しかし、あなたも分かっているはずだ。メギドは戦いの道具にもなるということも、それが地球側に存在することの脅威も。本来ならば、地球にメギドなど必要ないはず。では、必要な人間は?マーゼ・アレインではないのですか?ただいま火星でも、火星政府内にスパイがいないか、洗っている最中です。ご安心ください。誰も傷つけるなと、きつく言われております。私だって戦争がしたい訳ではないのです」

それは、正論だった。シンランは、それに何かを言い返そうとするが、言葉が見つからない。

「―――――!?」

何か言葉を出そうとしたその刹那だった。例の工場の大きなシャッターが開いたのだ。もちろん、ただ開いただけではない。そこから出てきたのは、先程までの話題のメギド類似機体が二機。これが、メシアという名を持つことなど、シンランもヴェクトも知らない。

「まさか、見つかってしまうなんてね。そちら火星政府の人間ですよね。地球に何のご用でしょうか?そんな機体もの持ち出して我々に支援でしょうか」

(この声は……)

スピーカーから聞こえる声に、シンランははっとする。その声を最後に聞いたのはいつだったか。幾年もの時を重ねても、それは変わることなくそこにあった。記憶を、想いを呼び覚ます、懐かしい声。

「それが、地球で開発していた機体か。何の為に?」

シンランのそんな動揺など露も知らない特務部隊長は、冷静に答える。まるで、こうなることが分かっていたかのように。

救世主メシアです。僕たちの未来の為です。地球に住む人間が火星に移住する為にはそちらと対等にならなくてはいけない!」

「戦争がしたいのか!?それは戦いの道具だ!我々が全て破壊する!」

「どの口が!僕たちは僕たちの暮らしを守る!行くよ、リン!」

「了解!」

もう一機のメシアのパイロットと思われる女性の声が、スピーカーを通して、レータ以外のパイロットにも聞こえた。

二機のメシアの脚部から煙が噴き出る。そして、それは猛烈なスピードで五機のメギドへ向かっていく。

「総員、二機の機体を鹵獲せよ。但し、絶対に殺すな。機体は多少傷つけても構わぬ」

「了解」

四機のメギドも二機のメシアを迎え撃とうと構え始めた。ヴェクトの機体は後方で待機している。

シンランは、声を振り絞って叫んだ。それは、二人が望んだ再会ではなかったかもしれない。それでも、二人は再び出会ってしまったのだ。

「レータあぁぁああああぁあ!!」

地球で、誰も望まない戦いが始まった―――――。



**********


私はカレンさんと共に次回のフォーラムの内容などを調べる為に、資料などが置いてある部屋へ行こうと歩いていた。昨日のフォーラムは最後に苦い思いをする事となったが、内容自体は成功であったと言っていいと思う。カレンさんも手ごたえを感じているみたいだった。私がそんなことを考えながら歩を進めている時だった。前方から二つの人影。

「また会ったわね、こんにちは。もっともわざわざ出向いてきたのだけれど」

サクラ=セブンスと、アルト=コウザキ!何故、こんなところにいる……。私たちの何かがバレたというのか……?

「フィエン=リーシャ。あなた、火星政府地球研究所で働いているわね?そして、地球に住む難民とも時々コンタクトを取っていたそうじゃない?ちょっと確認したいことがあるから、来てもらえるかしら?」

「別に、任意同行だ。無理にとは言わん。ただ、時期が早くなるか遅くなるかだけの違いだけだと思うが」

サクラ=セブンスとアルト=コウザキは勝ち誇ったように言った。何故、私が地球研究所で働いていたことが問題となっている?地球の人々……。レータさん、リンさん……。私は思考を張り巡らす。そして、一つの答えに辿り着く。

メシアか――!

そうか、私がメギドのデータを彼らに渡したことが彼らにバレているのか……!いや、バレていなくても、時間の問題だ。もしそうなれば、芋づる式に私たちの組織のことまで漏れてしまう可能性もある。どうすれば……!?

「ふっ、ばれてしまってはしょうがないな!」

「……!?ふがっ……」

カレンさんは急に私の首を締めるように片腕をかけ、もうひとつの腕で銃を抜き、私のこめかみに当てた。

(カレンさん、何を……!?)

私はそう言いたげな目でカレンさんを見た。何を考えているんだ……!?

(いいから、黙っていろ)

カレンさんは私の耳元で、静かにそう呟く。

「まさか、ここまでバレるとは思わなかったな。私たちがこいつを使って、地球のやつらと手を組んでいたことなど」

「……!?どういうこと?あなたもクロだって、自分から告白するつもりかしら?」

サクラ=セブンスは困惑したように言う。自分たちの思惑通りに事が進まなくなってきたようだ。

「私も?いいや、違うな。クロは私だけだ。私はこいつを利用したに過ぎない。だから、今となってはもう用済みなんだよ。組織のことをべらべら話す前にむしろ殺したいくらいだ」

……!?カレンさん、何でそんな嘘をついているんだ?そんなことして、この場が乗り切れるのか……!?

「ただ、私がこいつを今ここで撃ち抜いた瞬間、あんたたちは私を捕えるだろう。それでは、私も困る。取引と行かないか?」

「取引?」

「あぁ、そうだ」

カレンさんは、相変わらず表情を変えずに言う。私には、その目論みを読み取ることはできなかった。もっとも、今の姿勢ではまともに顔を見ることすら厳しかったのだが。

「私はこいつを解放したくはないが、さすがにそんなにうまい話はないようだ。私はこいつ、フィエンを解放しよう。その代わりに、お前たちは宇宙で私と闘え。私は自分のメギドを用意してある」

(何だって……!?部長二人相手に闘う?無茶だ、そんなの!)

私は、必死に訴えるような瞳でカレンさんを見る。否定の言葉も口から出かかりそうだった。

「……!」

しかし、カレンさんは更に強い眼光で、私を睨みつけた。『口を出すな』と、瞳が言っている。

何か、策でもあるというのか……!?

「なるほど、私たち二人を相手に勝てる自信があるというのだな?」

アルト=コウザキが、舐められたものだとも言いたげに凄む。

「待って、アルト。そんな言葉信じられないわよ。そのまま逃げるかもしれないんだから。それに、そんなことしなくても、ここで捕えればいいじゃない。別に人質が一人いても、いくらでも手段はあるでしょ?」

サクラ=セブンスがそう言ってアルト=コウザキを制した。

さすがに、落ち着いてる。これで、カレンさんの策も通用しなくなったのか?私は不安げに、私を捕まえたままのカレンさんを見る。

(え……?)

驚いたことに、カレンさんは口の端を持ち上げて、微かな笑みを浮かべていた。まるで、勝ったとでもいわんばかりに。

彼女の思い通りに事が進んでいる……?今の私には何も分からない。


ボフッ!!!!!!


「え……?」

突如、大きな音とともに私は煙に包まれた。私を捕まえていたカレンさんの感触もなくなった。

すぐに振り向こうとしたが、突如意識が飛んでいきそうな衝動に襲われてしまい、身体に力が入らない。

「カレンさん……?」


薄れ行く意識の中で、フィエンが無意識に発した仲間への声、それがカレンに届くことはなかった。


**********


こんな強引なやり方で済まない、フィエン。

カレンは、自分のメギドが置いてある出口に向かって走りながら、ここにはいない仲間に謝った。

でも、作戦は成功した。これで、フィエンに疑いの目が向けられることは恐らくない。いや、あるかもしれないが、あいつは賢い。私が用意したピエロを演じきるだろう。私とあいつがつながっている証拠など何もないのだから。

最後に放った煙幕弾は、ほんの一時的に意識を失わせる効果がある。意識を失っているフィエンを確認した彼らは、応援を頼んで私を追っているはずだ。しかし、応援が部屋に到着するまでには、フィエンは目を覚まして、逃げることができるだろう。もしそうでなくても、あいつならうまく立ち回る。私に適当に罪を押し付けて、被害者ぶればいいのだから。

ただ、この場合自分が逃げ切れることは計算に入れていない。この道が宇宙空間に通じる一本道であることなど、彼らは当然知っているだろう。だから、すぐに防衛部に連絡を入れて、防衛部の乗ったメギドを、出口に向かわせているはずだ。私がメギドに乗れれば勝算はあるかもしれないが、もしメギドまで向こうの支配下にあったならば、私の完全な負けだ。いや、もし乗れても、後から追ってくる、部長二人の乗るメギドに勝たなくてはいけない。

「それは問題ない……」

私がメギドに乗れば――いや乗れなくても――例え誰だろうが必ず倒す。私は私の正義を貫くまで。


カレンは昨日のフォーラムでの子供達とのやり取りを思い出していた。

**********


フィエンとカレンが、サクラとアルトに呼びとめられた直後のマーゼ・アレインの本基地では、マーゼ・アレインを統べる男、隊長が迷っていた。確かに、そろそろ行動に移さなくては……、地球の民だって限界が近いはず。それにNOAHの開発へ向かうかもしれない火星政府への牽制にもなる。しかし、一度動くことへのリスクも大きい。そんな葛藤の中にある時だった。一人の男が、慌てて報告に部屋に入ってきた。ちなみに、今隊長と呼ばれる男がいる部屋は、マーゼ・アレインのオペレータールーム。火星政府の情報部には到底及ばないが、いくつものコンピュータが置かれている。

その男は、いかにも緊急の報告であるかのような仕草をして言う。

「隊長、ただ今地球から連絡が入りました!といっても、地球からの連絡であるので、ラグが認められるのですが……!」

「地球からだと?フィエンが関わっている、メシアの開発者たちか?」

地球から自分達の所へ連絡を寄越すなど他に考えられないが、念のために聞き返す。

「ええ。メシアの工場が火星政府に発見され、戦闘が開始されたようです。至急、応援が欲しいということです!」

「もう、迷っている暇もありません。隊長、英断を!」

コンピュータの前に座っている男が、隊長と呼ばれる男を振り返り鋭い声で問う。今回のマーゼ・アレインのプランの考案を行ったのも彼である。

その時、また別のインカムをつけた男が、振り返って叫ぶ。

「隊長、大変です!フィエンさんとカレンさんが、アルト=コウザキ防衛部部長と、サクラ=セブンス情報部部長に、呼び止められ、近くの部屋へ連れて行かれたと報告が!」

「なんだと!?あの二人が?何故だ……!?」

隊長と呼ばれる男は一瞬動揺したが、フィエンと同じように理解する。

(メシアの製造が彼らの知るところとなり、地球で働いているフィエンが疑われているのか……!)

それは彼にとって、うかつだった。火星での製造は、もちろんすぐに発見されることは分かっていた。しかし、火星政府が地球の監視を行っていないという事実は確認のしようがない。だから、見つからないことを祈っていたのだ。

「隊長!彼らを助けるためにも!……いや、違う……。彼ら二人は作戦には必須……!そんな……、彼らを助ける為に彼らが必要だなんて……、酷い矛盾じゃないか……!」

コンピュータの前に座っている男は、頭を抱えて唸る。

「大丈夫だ、私が行く。私は彼とは顔見知りだから。私が、私とフィエン、カレンは仲間だとでも言えば信じるであろう。それに実行するのはお前たちだ……すまないが」

隊長と呼ばれる男は、毅然として言った。申し訳なさそうに、最後に謝罪の言葉を述べたが、声色に先程までの迷いはない。

「それは構いませんが……隊長と、あの子供が?」

「あぁ、以前少しだけ話したことがあってな。それは任せてもらおう。それと、もう一つの方も私に任せてくれ、当てがある。情報部と防衛部を同時に無効化する作戦『ラビリンス』を開始する。火星政府を抜けださせないさ」

マーゼ・アレインを統べる男、オーベルト=アケルトは決意する。今ここが動く時だと。


**********


カレンが逃走したあとの部屋には、意識を失ったフィエンと、アルト=コウザキ、サクラ=セブンスが残された。部長二人は落ち着いて状況を整理する。そして、意識を失っているフィエンは後から来る応援に任せて、二人でカレンを追うということになった。それはカレンの思い通りの展開なのだが、それを二人は知る由もない。アルトが、防衛部に応援を頼もうと端末に触れようとした時だった。その端末から、アルトに通信が入った。

「コウザキ部長ですか!?こちら防衛部!」

「あぁ、今こちらから連絡しようとしたところだ!そっちの連絡はなんだ!?」

焦るようにアルト=コウザキが端末に向かって問う。

「はっ、それが……数機のメギドを盗まれました!」

「な……メギドを盗まれただと!?馬鹿な!裏切り者でも出たのか!?」

アルトが、端末に向かってそう叫ぶのを聞き、サクラ=セブンスも驚いたように、アルトを見る。

「はい、カメラなどを確認したところ、開発部のレオ=アケルト他数名かと思われます!」

「開発部のレオ=アケルト……だと?優秀な人材と聞いているが。で、そいつはどこにいる!?」

「それが……、情報部にも連絡をしているのですが、いまだに発見できておりません」

「メギドを数機も持ったまま、姿を消せる訳ないだろう!いや、他数名と言ったな?まさか、仲間共々もうメギドに乗って宇宙空間に出ているということは?」

「有り得なくはありません……。ただ、目下捜索中ですので、連絡が入り次第そちらにも伝えます。ところで、そちらからの連絡は?」

「あぁ、しようと思ったが色々狂ってきた。確かハルカは今、パトロールに行っているな?」

「えぇ、その時間です」

「ならいい。引き続き報告を頼む。それとなんとか人員を割いて、至急『ポイントD―37』へ向かわせてくれ。そこに一人男が意識を失っているはずだから、確保を頼む」

そう言って、アルトは端末の電源を一旦切ると、再びどこかへ連絡をかけているようだった。

「ハルカか?今どこにいる?うむ、把握した。『ポイントC―15』へ向かえ。そこにメギドが一機あるはずだ。誰も乗っていなければそれを鹵獲しろ。もし乗っていれば、しばらく足止めを頼む。私もすぐに向かう。無理はするな、頼んだぞ」

「ハルカちゃんを向かわせたの?」

心配したように、サクラが問う。

「仕方ない。メギドが他に数使えなく、防衛部がてんてこ舞いの今は。それに私はあいつを信頼しているからな。あいつならオペレーターなしでも闘えるはずだ。もっとも、私たちも今からすぐに向かう。私のメギドは別の所に置いてあるから、無事なはずだ。行くぞ、サクラ」

「えぇ!」

二人の部長は、決意を瞳に宿らせ覚悟を決める。やっと掴んだ平和を脅かす者共の尻尾。絶対に逃さない。未来を生きる子供たちの為に、今自分達に出来る事は全て行う。


**********


あぁ、父さん?何?連絡はしないでと念を押したはずだけど?

え……?そんな……、そんなこと信じられる訳がない。信じられる訳がないだろ。

だってあいつは火星政府の研究所にいるんだろ?一番安全じゃないか。

戦争……。そんな大げさな……。でも……。

なら、僕はどうすればいい?

そんな!?そんなこと……!

くっ……仕方ない。もし本当なら悪いのは僕らだ。馬鹿だね、なんで歴史を繰り返すんだっ……!

でも、勘違いしないで。父さんの思想に賛同する訳じゃない。僕は確かめたいだけだ、真実を。そして、助けたいだけだ、妹を―――。


13話で1部終わる予定だったのですが、終わりそうにありませんね。

次回『第十三話:僕らのたたかいの詩』


生きることは戦うこと。戦うことは生きること。

いくつもの空に命煌めく。

ありがとう、ごめん。さよなら。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ