パパママ冒険者、お仕事中(1)
そしてその頃冒険者は・・・依頼争奪戦
養育院がお預かりの子供たちの受け渡しにバタバタとしている頃、親たちの冒険者ギルドニベア支部での依頼争奪戦も朝から熾烈だ。
冒険者ギルドに寄せられる依頼は基本実力重視で様々な工房が原材料となる素材、薬草や獣などを複数冒険者に依頼して集まった数をギルドで取りまとめて引き渡したりしている。
だが一部依頼の中には受け付ける冒険者に条件を付けているものがあるときもある。
「なぁ!どうしてアルテム薬舗は男はダメなんだよ!差別じゃね!?」
手取りがよく今が旬の薬草ミンティとハラン、後はクスリという栗鼠の仲間を捕まえるの採取依頼に並ぶ女性冒険者の列に横入りしてイチャモンをつける冒険者がいる。
クスリはサイズもそこそこで狩猟の腕が必要で中級以上の技術が必要だけど、他は旬の薬草だから比較的手軽に見つけることができる。一見すると「おいしい依頼」をえこひいきで渡しているように見えなくもない。
依頼主であるアルテムは『一家にひとつ置き薬。お母さんと子供の薬は安心と品質のアルテム製』を売りに最近売上を伸ばす薬屋で風邪薬、お腹の薬数種、虫除け、かゆみ止め、湿布などが主力商品だ。
薬舗主人の妻が元冒険者で依頼を取りにくい女性冒険者を優先した採取を依頼している。
「はぁ?依頼の条件がそうなってるんだよ。私は満たしてるけどあんたはダメ。仕方ないだろ。」
「依頼がそうなってんだよ。」
「列に並んでる私らにいちゃもんつけてもしょーがないだろ。」
無事に受付に並んだ冒険者から一斉に反論が飛んでくる。
「だからなんでだよ!!じゃぁアイツは?あいつはいいのかよ?あいつはオッサンじゃねぇか!!??」
女性ばかりの列に並んだ一人の中年冒険者を指さしてさらにわめきたてる男。
「俺は母ちゃんと仕事するから大丈夫なんだよ。母ちゃんは今養育院回ってんだよ。」
むっとした顔で言い返すが列から離れる気はないようだ。
「こいつは嫁の使いっパシリなんだよね。」
「ちげーよ。分業だ。」
顔なじみなのだろう。並んだ男を冷やかすように女冒険者がわははと笑う。
「依頼争奪は体力使うからデカブツのがいいもんねぇ。」
「デカブツ関係ないだろ。お前だってデカブツじゃねぇか。」
「んまっ!!でもそれもそっかぁ。」
「薬草はわかるけどクスリは狩りだぞ。」
自分をそっちのけにして盛り上がり始める周囲に男はまだ不満があるのか仁王立ちで言いつのる。
「・・・しつこいな、コイツ。」
「てか、母ちゃんどころか父ちゃんでもないよな。」
「こっち構ってる間にあっちの依頼どんどんなくなってるけどあいつダイジョブなんかねぇ??」
「いや。もうあっちの依頼取るきないだろ?」
「こんだけしつこいから独り身なんかもしれないねぇ。」
ひそひそぼそぼそと交わされる会話の間もどんどんと受付作業は進み列は短くなってく。
「そこのお前、アルテムに行ったことは?」
いつまでも列にまとわりついている男に受付で冒険者の流れを監視しているロッソが近寄ってきて声をかけてきた。
「ないよ!」
噛みつくように返事をした男は目の前に立っているロッソの姿に息をのむ。
「じゃあまずは店の広告、読んでみろよ。」
ロッソのごつい指先は指示したのはギルドの壁に貼られている絵入りの広告看板。
母の膝に乗り薬をさじで与えられている親子の姿が描かれている。
『お母さんと子供の店。薬に篭める母の愛。
アルテム薬舗は現役のパパママ冒険者が手ずから採取し選び抜いた薬草を使い、家族みんなの健康に配慮して製造した優しい薬です。』
嫌々声に出した男が読み終わるとロッソは男の肩を軽くぽんぽんと叩く。
「だから女性冒険者、子持ちじゃないと広告に偽りあり、になるんだな。お前独身だろ?」
男の持っているカードをチラリと見てロッソが告げる。
「薬何て混ざたらわかんないだろうがよ。」
「ほほぉ。ギルドに詐欺の片棒担げって言うのか?」
ぼそりと口にしたけれどロッソの顔を見ると慌てて口をつぐむ。
「じゃあ聞くけどあんたの狩りはランクどれくらい?私は銅タグだけど先月実績25だよ。」
弓職らしい女性がずいっと出る。
「勝ちぃ。私30。週休2日。」
「罠で一網打尽1回で20です。おかげで子供と過ごせる時間が増えたもんねぇ。」
グッと詰まる男。どうやら実績は完全に彼女たちに軍配らしい。
「そういうこった。さっさと次の依頼を探しに行かないと今日はあぶれちまうぞ。それとも俺と訓練したいってなら俺は空いてるがな。」
ロッソの訓練は冒険者の間で高い評価を受けつつも恐れられるニベアギルド名物である。
にこやかな笑顔で迫るロッソに逃げ出す隙など見出すこともできず、男は諦めの悪いわが身を呪うことになるのだった。
もちろん優遇があれば除外もある。
「どうしてこの依頼私じゃダメなのよ!!」
こちらでは女性冒険者が高給な依頼の申し込み条件にクレームを申し立てている。
「仕方ないだろ。依頼主の指定条件だから。警備担当夜勤あり、予算の関係で余剰人員は雇えないから子持ちはダメだって。」
詰め寄られたカウンター担当者のエデンはため息まじりで受付冒険者指定条項を指し示す。
「先月まではそんなことなかったじゃないの。私前は受けたわよ。また来てって言われたのに。」
「面接までは紹介してもいいけど、まぁあの親方は頑固だから無駄な時間になるな。それなら最初から他の案件にいった方がよくない?」
「なあんかそう言うの腹立つんだけどなぁ。」
ギルドは今日も賑やかにお仕事遂行中である。
続きは明日投稿予定。
依頼を受けたら現場へGo!




