最下層で最終業務
しばらくぶりになった気がする・・・
帳簿の確認作業を終えたビアンカを連れたリナルドも無事に合流した。
「本当にね。カミーラのおかげで確かめ算とかそういう確認作業をするだけでよかったの。助かったわぁ。」
途中までビアンカと降りてきたカミーラはリナルドと合流した時に上がっていくパーティーと合流して戻っていったという。
「ラウルの監視と事務作業の手順とかを改めて教えるようにお願いしといたの。ねぇ、もう少しカミーラの派遣期間のばしてもらえないかギルマスに聞こうよ。」
確かにラウルの腕はギルド本部から離れたこのダンジョンでいざという時のために必要だ。
でもこのまま事務管理まで任せるのには不安が大きすぎるのも事実だし、アルドのような初心者事務員ではまぁ対応は敷居が高いのもまた事実。
「カミーラの希望も今後についての考えもあるだろうから俺たちの希望邪決められないけど、次回の更新をどう考えてるかは上がってから聞いてみようじゃないか。
ま、なにはともあれ目先の仕事に集中しようぜ。」
そういうことになったのだった。
ビアンカとリナルドが合流し、サクサクサクとトイレや貯蔵庫、休憩場所のメンテナンスも終わってついに第8階層に到着する。
8階層のトイレ、休憩場所、魔法陣の確認を無事に終えると急きょのメイン業務になってしまった新しい抜け道の状態確認が始まる。
「さて。いよいよ坑道確認だな。」
6,7階層は魔力の影響なのか魔力灯がなくても植物が育つくらいには明るい環境だったのだが、4,5階層とここ8階層は坑道の頃のままなのか薄暗い。
それでも4,5階層は魔力灯と置く場所が設置してあって先を見通すことが出来るのだけれど最近の発見になる8階層ではその設備の復旧がまだ不十分な個所も多いのだ。
メインの坑道であるエリアはそれでも魔力灯が灯っていて足元や周囲が見えないという事はない。
「やっぱり狭い坑道は苦手だ・・・。」
背の高いロッソが油断なく目を配りつつ、それでもボソリと小声で一言だけ呟いたが、あとは黙って進んでいく。
「念のため8階層は昨日までに冒険者を引き上げてあるから動いてる生物はとりあえず討伐ってことで大丈夫。」
「なんという大雑把な。てか回避しようよ。そこはさ!」
「回避ばっかりでもなまるぞ。ある程度は討伐もしないとな。」
降りてきたリナルドにそう言われ、突っ込もうとしたところにロッソの発現で攻撃にためらう必要はあまりなくなったけれど警戒だけは怠らないように探索を始める。
とりあえず飛んできちゃうオオコウモリだけには遭遇したくない、と思うティナだった。
「じゃ、始めるか。俺が確認したのは一か所だけだけど他にも候補がないか確かめないとな。」
リナルドが事前に確かめたエリアに近づくと空気の流れが分かるように小さな香木を取り出す。
火を灯そうとしたリナルドの動きに
「じゃ、これ舐めて。飲み込むまでは念のため口を覆っておいてね。リナルドも火はみんなが呑み込むまで待って。」
ティナがリナルドを制すると皮袋からコロンとした乳白色のアメ玉を子竜まで全員に渡す。
甘いものが苦手なリナルドは少ししかめ面をしながら、ビアンカは嬉しそうに、ロッソは特に表情に変化もなく口に含む。
「ティナ。これ甘いねぇ。」
「気を付けてね。丸呑みしちゃうと効果が遅くなるからきちんと噛んで。」
そう言われると子竜たちはガリガリといい音をたてて口にした飴玉をかみ砕いた。
リナルドが点火しようとしたのは人が感知できない空気の流れを煙で読むためで探索職には必須のアイテムだ。
それだけでは特に害はないのだけれどリナルドが焚いたそれは煙に簡単な魔物忌避の成分が入っている。ちなみにこれはティナのお手製だ。
基本魔物にだけ効果がでるように調合しているのだけれど、人間の体内魔力への反応もあるし、ドワーフの二人は体内魔力がもともと多い。子竜の2頭は問題外だ。
だから中和剤として念のため調合してきたのだが、味がものすごいことになったので月夜蜂の採取した夜行花の蜜で味を中和してある。
魔物退避香と中和剤ののレシピを改良に協力してもらったブルーノに流してさらなる改良を施して小遣い稼ぎをしたのはとりあえず秘密だ。
香木に付けた炎はすぐに消えて先端から煙が立ち上がるが、特に流される様子もない。
ダンジョンの奥からの風はここまでは到達していないのだろう。
「・・・・まだか。」
リナルドがそう言い地図に書きこまれた方向へと全員で進んでいく。
「なんだか甘いような匂いがするね。でもちょっと嫌いだわ。」
ノーチェがそう言いながら頭を振る。やはり少しは影響受けているのだなと思ってルジェクとヤドミラに視線を移す。
ドワーフの二人にはあまり変化はないので影響の範囲は魔物に限定されると考えても大丈夫みたいだ。
途中でティナの願い空しくロッソがサンドアルマジロ一頭を、ビアンカの投擲具を主力に大蝙蝠を退治したりして1時間ほど進むと香木の煙が少し揺らめき始める。
リナルドが立ち止まるとルジェクとヤドミラはそれぞれ壁に耳を押し当ててコンコンとハンマーで叩く。音の跳ね返りで岩の密度の違いを測るのだ。
リナルドが揺れる煙の流れる先を、ロッソとティナがあたりに魔物の気配がないかを確かめる間も二人の作業は続いていたがルジェクの動きがふと止まった。
「どう?」
ヤドミラも動きを止めて夫の背に問いかける。
「うん。開いてるみたいだな。少し掘ったりする必要はあるけれど。この探索は持ち帰って人を回した方がいいかもしれない。上の強度がちょっと気になる。」
そう言うとルジェクは傍らのヤドミラに同じ確認作業を繰り返すように促した。
「音の感じだと今日明日に穴が開くような強度ではないけれど、この先に開けてる空間があるのなら相当広いと思うよ。」
ヤドミラもそう言ってルジェクの判断を後押しした。
この場で穴をあけるなら防壁を張って爆は魔法を使うのだろうか?そんなことを考えながらティナはリナルドが考えをまとめるのを待ち受ける。
「ティナ。魔物封じの魔法陣設置して。ここは今はこれでいい。」
細い目をさらに細めて考えていたらしいリナルドが目を開けると一言言い切った。
「え?私たちやらなくていいの?」
「あぁ。とりあえずこのフロア全体見ることに集中する。そっから先はまずは冒険者に回そう。」
「職員だけで働かず、冒険者にも働いてもらおうってわけか。」
ロッソが納得したようにそう言う。
「場を整える仕事は職員でそこで楽ちんに狩りだけ、ってんじゃ冒険者の経験値があがらないもんね。そうしようそうしよう。」
地図にポイントを書き込んでいたビアンカもそう言った。
「なんだかんだ言って面倒な力仕事は現場に回したいだけじゃないのかい?」
ヤドミラがそう言って笑う。
「いやいや。自然ダンジョンに挑む冒険者の実戦訓練的な場の提供だよ。バックアップはもちろんするし。」
リナルドがそう言うと一行はその場を封印して引き返し、さらにヤドミラの地図の通りにいくつかの候補地を目指した。
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「で、どうだった?詳しく見てきたんだろ?」
戻ってきたリナルドたち一行にラウルが問いかけてきた。
結局、2日間かけても最初にリナルドたちが確認してきた場所以外には新しい抜け道や崩れは確認できず、8階層の点検を終えて一行が戻ったのはさらに2日後のことだ。
「ヤドミラたちの推測だとあちらの穴は結構大き目の坑道につながっているらしい。
その先に魔物の気配があるってティナが観測したから穴の付近と8階層への出入り口の封印は強化しておいた。
ギルマスに報告してある程度の方針が決まるまでは今の結界でほころびが出ることはないだろうけどな。」
リナルドが広げた地図を指し示しながらラウルに説明した。
「じゃぁ潜る冒険者たちに少し注意を回しておくか。銅タグからでいいか?」
安全のために下層での活動制限をすぐに考え着くラウルは事務処理はともかくやはり冒険者としてのレベルは高い。
「それでいいと思う。とりあえずそれ以外のタグには反応しないように設定したけど。」
ダンジョンから上がってすぐに出入り口の魔法陣を設定管理するティナも頷いた。
パルマのダンジョンメンテナンスは一旦終了となったのだった。
ダンジョンメンテナンス本編はこれにて完了です。
とりあえず出来上がっている番外編があります。
今日はこれと登場人物紹介を掲載予定です




