パルマの宴、からの
「すまんな。ちょっと気になる報告があがってきたんでカミーラと確認に行ってきたんだ。」
ラウルはニベアから派遣されてパルマのダンジョンの管理をしている。
時々ダンジョンにも入る引退冒険者で主に剣を武器にしている。引退をした今でも鍛錬を怠らないまだまだ即戦力にもなれる実力者だ。
「気になるところ?」
「あぁ。先週あがってきた奴らが最下層の奥まで行ってみたら崩れかけた坑道をらしいのを見つけたんだと。」
「それは気になるね。」
意外と真剣な問題にリナルドが腕を組んで考え込む。
「メンテナンスに入るまでに3日ほどかかるだろ?できればお前に一緒に確認してほしいんだ。ここ最近探索職がパルマにいなくてな。」
ラウルの申し出にリナルドはさらに考え込む。
パルマのダンジョンはドワーフの一族がミスリル銀採掘鉱山として2000年ほど前に開発した鉱山跡地だ。
500年ほど前に放棄されたとの記録がドワーフたちに残っている。
300年ほど前から森を切り開いて生活圏を拡大した頃に後、魔物の住処として『再発見』された。
初期は多くのダンジョンがそうであるように魔物退治の場所だったが比較的早く駆逐が進んだ。
その環境を生かした生産活動が始まるようになるダンジョン討伐以外の商人も立ち寄るようになって安全な活動環境を維持するために定期的に冒険者が入るようになった。
昨今では特に腕の立つ冒険者はこのダンジョンへと踏み込む回数が減りつつある。
なので新しい坑道から新手の魔物が来た場合、最悪滞在している冒険者だけでは歯が立たない可能性を考慮しなければならない。
ダンジョンが魔物以外で収益を上げつつある現状これは全く望ましいことではない。
なのでその対策のための調査が必要になるのは当然のことだ。
「まぁ、お前らがメンテに来てくれた時期に発覚したのはラッキーだった。メンテナンスもあるだろうが俺と一緒に確認してもらえないだろうか。」
「それはもう当然だけどロッソたちまで連れて行くとなると通常業務の予定があるからな。」
ダンジョンメンテナンスに派遣されてきた人間は必要最低限、一人抜けると進捗に関わってくる。
「ひとまずは退却前提で調査してみないか。」
眉を寄せて考え始めたリナルドに
「行った方がいいんじゃないか。一角獣との会合なら俺とビアンカでなんとかなるだろうし。鑑定作業はティナとニコロでどうにかできる。」
「え??」
ロッソに急に名を出されたニコロが目を剥いたけど全員そこはさらっと流す。
「だけど帳簿の確認とかラウルさんに居てもらわないとわからないこともあるかもしれないでしょ。」
ビアンカが言うと
「それに関しては今回は我々に抜けはない!はずだ。と断言しておこう。楽しみにしてくれ。」
「・・・・前回あんだけ大騒動してたのに何です?その謎の自信。まさかダンジョンの異変ってごまかそうと・・・」
「違う、違う。それはそれで本当に確認したほうがいいんだよ。ま、俺がいなくてもカミーラ残すから大丈夫だ。」
「・・・・前回が強烈すぎて信用できない・・・。」
ビアンカがぼそりとそう言うとラウルはニヤリと笑顔を返した。
「みなさん楽しまれてますか?」
宿屋の主人ミルコは短く刈り込まれた黒髪に大きな体をした、ぱっと見不愛想にも見える大男だ。
ミルコも元は冒険者だ。ジャンニーノとは幼なじみで一緒に冒険者活動もしてきた。
デボラとは旅先で知り合った。まだまだ冒険者を続けてもよかったがデボラが結婚するなら冒険者は嫌だと言った。
そろそろ引き時だと思っていたのであっさりと引退届を出し、しばらくは実家で手伝いをしていたという。
今日の宴会はギルドの残り物資を使った今日の宴会を仕切ってくれたのは彼らだ。
「とっても美味しいです。ダンジョンでこんな新鮮な食事が取れるなんて思いもしなかったです。これならニベアでも繁盛しそう。」
クリスタが言うと主は嬉しそうに笑った。
「妻が喜びますよ。料理人なんです。いろいろと工夫するのが好きなんです。」
賑やかな厨房に目をやり、妻が褒められてよほど嬉しいのか頬を染める様子が、周囲を和ませる。
「クリスタ嬢ちゃん舌が肥えてるな。どうだ?ここの野菜は美味だろ?」
「別にラウルさんが耕して作ってるわけじゃないでしょ?」
得意げにトマトサラダを勧めるラウルにティナが尋ねるとラウルは黙ってすっと目をそらす。
「・・・農作業してるんですか?」
リナルドが驚いて問いかけるとラウルはしぶしぶ頷く。
「体がなまると思って軽い気持ちで手伝ったらな、意外に面白いし鍛錬にもなる。農作業舐めたらいかんぞ。リナルド。」
「体動かすのが好きなだけでしょ。書類については明日じっくりと聞きますからね。」
リナルドが答えるとラウルはまたも不敵な笑みを浮かべる。
「そういえば今日はジャンニーノは?」
一角獣商会のジャンニーノはパルマの顔みたいな存在なのでこういう場には大概姿を現す。
リナルドの問いにミルコは苦笑いを浮かべる。
「今日の荷物の点検がいろいろあるとかで今日は失礼します、と。明日でも挨拶に来ますよ。その時はあちら持ちだそうです。」
ニベアでも有数の商会の息子の一人でこのパルマの賑わいを見れば彼もただの商家の箱入り息子でないことは誰にでもわかる。
「そうなんですか。ちょっと残念。」
クリスタが思わずそう言うと
「・・・婚活は仕事が片付いてからにしてくれ。」
「誰が!!すぐにそう言うのやめてよね。」
ニコロの言葉にクリスタが思い切り頬をビヨーンと広げる。
「ひひゃひひひゃひ。ひつもひふやにゃいひゃ(痛い痛い。いつも言うじゃないか。)」
「だからって!!いったぁい!!」
「いっひゃぁ!!」
「二人ともいいからお黙り!!今度は硬直するくらいのにしちゃうから!!」
いつの間にか背後にいたのか、ティナが雷撃の呪文を静電気程度の強さにしてお見舞いしたらしい。
「ほら!二人はあっちでアルドと一緒に食事しな。お子ちゃまはあちらに退散だ。」
ティナの背後にロッソが姿を現すとニコロとクリスタをじろりと睨む。
「そんな。すいません。ロッソ。」
「退散だ。」
静かだが有無を言わせないロッソの声に二人がスゴスゴとその場を後にした。
「なんだかすいませんね。あれでも仕事のできる2人を選んで連れてきましたから。」
「・・・若いってことですよ。で、何話してましたかね?」
「ジャンニーノがって話です。で、どうです?ミルコから見たパルマの近況は?」
「以前と違うのは旅商人が来るようになった点かな。街道からは少し離れてるが安全に休むにはいい場所だからな。
ただあまり簡単に来られるようになるのは管理や防犯の問題がありますからね。」
「儲けは嬉しいがトラブルは痛し痒しだなぁ。」
リナルドが同意する。
美味しい食事はしたけれど酒が入らなかったためあっさりと宴が終わりみんなぐっすり眠ることができた。
2日間は硬い地面に寝袋で寝たせいか体の節々が痛かったけど、湯浴みもして少し硬いけど宿屋のベッドで眠れたせいだろう。
お仕事前に問題発覚?
明日からいよいよお仕事開始です。




