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中だるみ注意報 1

久しぶりに、やっとやっと更新しました。




冒険者ギルドには毎月多くの新人が冒険者を目指して登録に訪れる。

最初は初々しく緊張感に満ち溢れた彼らもしばらく時が過ぎると慣れから怪我、場合によっては命を失う者が現れ始める。

中には育てばきっと将来有望な素質を持つ者もいて毎年ギルド全体での意識改革は問題にされている。


ギルドの業務完了後の会議でも当然一定期間をおいては議題に上るくらいには問題な案件である。

会議にはギルマス、副ギルマスや非常勤の理事だけでなく受付担当も呼ばれ会食形式で行われる。冒険者に直接に接する彼らの意見は重要だからだ。


「銀鷹の翼が魔の森の洞窟2層に降りたそうです。」

「賢者の杖がニベアから拠点を移す検討をしてるみたい。魔の森は物足りないとか。」

ロッソがそれを聞いて片眉を上げる。それを見たマルコが意見を言うように目顔で促し、ロッソが答える。

「最近奴らは講習に来てないからな。収穫物を見てもさほど強敵に当たった様子は見えない、実力は奴らの思いほど伴ってないんじゃないのかな、と。」

慎重なロッソは意見を求められてもあまり断定的な言い方はしない。

それを頭に置いてロッソは彼らとよく比較されるもう一つのパーティへの意見を求める。

「銀鷹は?」

「奴らは慎重だな。リーダーのアルノーがいい。できればこのまま伸びてほしいな。」

「アルノーだけ?」

レジーナが意地悪く問えばロッソは軽く肩を竦めた。

それが銀鷹の他メンバーへの意見を現していることはこの場の人間ならだいたいわかる。



魔物は貴重な素材であり生活に欠かせないが、同時に生活の脅威にもなり、その数は増え過ぎないように減らし過ぎないようにしなくてはいけない。

そのためには良質な冒険者は欠かすことができず、彼らの強さを維持しつつさらに街によっては過度に集中させ過ぎないさじ加減も冒険者ギルドの仕事である。

冒険者ギルドは冒険者を支援するための組織である。非冒険者から依頼を受けて冒険者に割り振り支払いするだけが仕事ではない。

登録した冒険者が安定した暮らしを営むため時には金銭貸与や留守家族の仕事の斡旋だってするし、冒険者志望者に必要な教育もする。



他にもいくつかのパーティーに関して話題が上ったが他には問題になることもなく会議は終わった。


レスティーナという城内に住んでいる老婦人の家のペット探しの依頼が張り出されたのは会議の3日後だった。

冒険者と名が着いてはいるがこんな依頼も皆無ではない。

迷子や迷いペット探しは城壁からでることもないので初心者に好まれる案件だ。

冒険者志望者はニベア近郊の農村の土地に溢れた若者も多く、こうやって街の地理や人間関係に慣れていく。

そんな依頼をこなしていくうちに冒険者には向かなくても他に向く仕事を見つけたりする若者も一定数いる。



熟練者は見向きもしない案件だが、今日は様子が違った。

「ペット探しは初心者向けなのにどうしてダメなんですか?」

「確かに初心者向けではあるけどね。まだ登録して2月じゃね。ごめんなさいね。別件をあたって。」


ペット探し、緊急の迷子や徘徊老人探しの依頼からレスティーナのペット探しを受注しようとカウンターを訪れたパーティには許可が降りなかった。

断られたパーティは肩を落としながらまた掲示板へ踵を返す。新人は得てして資金不足だ。このタイムロスで有利な依頼が奪われたら大変だ。

人混みの中に潜り込んで新しい案件を探す。


「あの子たちはダメだったけどあんたたちになら紹介してもいいわよ。これ。」

依頼を終えて完了報告に来た『賢者の杖』にビアンカが水を向けた。

「ペット探しは初心者向けだろ。俺達には役不足だと思うぜ。」

軽く小馬鹿にしたように言うリーダーに合わせてメンバーが笑う。

彼らも結成直後はペット探しや迷子探し、薬草採取などに従事していた。

そうやって地道に資金を貯め、講習を受けて戦闘スキルをあげ、今では魔の森での狩りも草食獣から肉食獣まで退治できるだけの実力を培ってきている。

そんな自負が彼らに今更初心者向け案件、という侮りを露骨に見せつけてきた。

「あら、そう。自信があるのね。」

ビアンカも強くは進めず次のパーティーを受け付けるために視線を外した。


「あの婆さんまた逃がしたのか?」

ニベアギルドで活動してもう20年になるマティアがビアンカに声をかけた。

「そうなんです。どうですか?久々でしょ?」

言われた方は肩を竦めるとゆっくり首を振った。

「やめとくよ。懐かしいがもうあれはゴメンだな。」


初心者向け案件を熟練者が横取りするのはよろしくない、マティアはそう言うとぐるりと周囲の若者を見回して受付に意味ありげな笑みを見せ、ふと賢者の杖の面子に目を止めた。

「こいつらがいいんじゃないか?若くて生きがいい、ぴったりじゃないか。」

マティアは豪快に笑うが、賢者の杖の面子は明らかに不満げだ。


「俺が仲間とこの依頼を受けたのは2年目のことだ。あの時でも完了に3日かかったな。」

「あれは未だに破られてない記録だよ。前の時は7日かかったからね。」

必要な書類を取りに来たのかカウンターの内側からジュリアが声をかける。

「だな。すまんすまん。お前たちだったら4日はかかる案件だったなぁ。」

豪快に笑いながら賢者の杖のリーダーで槍使いのトマの肩をバシバシと叩く。

トマだけでなくメンバー全員が露骨に嫌な顔をしているがそれすら面白がっている節がある。


「マティア、あまり若いのをからかうんじゃない。」

落ち着いた声に振り向けばギルド職員のロッソがいた。

ロッソは謎が多い男だ。引退したマルコとパーティを組んでいた時の勇名は今でも名高いし、年も今が一番油が乗っているというのに引退同然でギルドで過ごしている。

噂ではギルドの魔法使いに惚れたから、だとも言う。


腕は素晴らしいし、前の訓練ではあっという間にのされてしまったけどああはなりたくないと思う。冒険者が野心を失ったらおしまいだ。

そんなことを考えているうちにロッソは受付から依頼を聞いたらしい。


「あの案件か。今回はちょっとなぁ。昨日銀翼が帰ってきた。こいつらにその気がないならやつらに。」

ロッソは彼らを見ると軽く肩を竦めた。まるで話にならないとでも言うように。

「俺達が行く!ペット探しなんてさっと済ませてやるよ。依頼人も早く安心したいんだろ。俺達がマティアさんの記録塗り替えてやるよ!」

トマはそう言いながら素早く仲間の顔を見回す。

3人の仲間たちもマティアの態度にそれなりにイラつきを募らせていたようで不満な表情を見せる者は一人もいなかった。


「じゃあ説明を。」

受付書類を持ったビアンカが声をかけるがペット探しごときに説明を受けるような初心者ではない。

一刻も早く取り掛かり昔話が自慢の老兵に自分たちの実力を見せつけることの方がよほど大事に感じた。

「ペットだろ?飼い主に聞くよ。早く見つけて安心させてやるよ。」

「・・・本当にいいの?じゃ、住所を教えるわ。」

いつもはしつこいくらいに確認して来るビアンカも彼らの剣幕に押されたのかレスティーナの住所を書いた紙を渡すとすぐに別件へととりかかった。





登録冒険者の順調なレベルアップをお手伝いするのもギルドの仕事です。


初心者から抜け始める頃が一番危険な時期ではないか?ということで書いてみました。

あと3回の予定です

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