77魔の森の異変
日々変化する町並みを見ながら久しぶりの優雅な時間を過ごしていると獣人の里の事を聞きつけたカイル様がやってきた。
「ケント!お主は期待を裏切らないな!」
相変わらずの声のでかさでギルド長のスルピーノさんと二人で訪れて、クレセントよりさらに南部の拠点になりそうな所を見つけた事に喜びを隠せないようだ。
ただ魔獣の襲撃を受け衰退していたのをサポートして復活させたから時間がかかることと獣人しか居ないので奴隷にする気なら敵に回るよと釘を刺しておいた。
ただこの脅しが効きすぎたようでこちらに送られる貴族達の身体検査と出入り業者の洗い出しまで徹底的に行ってくれるそうだ。そこまで求めて無かったんだけど…まあ良いとしようか。
ただ商家が接触を図って来たことを伝えると何としても取り込んでくれと言われたがすでに突っぱねた後なんだけど…きっと目敏く商売絡んでくるよね?商人ってそういうものだよね?
一抹の不安を抱きながら二人との会談を終えるのだった。
不安と言えばジェネラルコングのような指揮能力がある魔獣がこちらに向かわないかである。
元々リーフマリンって森だったのが西部で魔獣が異常繁殖しその生息域を魔の森と呼ぶようになったそうだ。
魔の森の南部は俺達が少し駆除して暫くは安泰だろうがクレセントの南部はほぼ手付かずで冒険者達も奥までは行ってない。
移動中に広域レーダー約半径10kmの簡易索敵で監視してみるとどうやら獣人の里側よりクレセントの方が魔の森の中心部に近そうで、魔物が集まっている場所がレーダーに入る率が高い。これは少しやる気出して様子を見た方が良いのかな?
武器などは特に更新も無いからこのまま出発でも構わないし、それでも留守の間に魔物が襲ってきても困るからみんなには連絡しておいた方がいいだろう。
ギルドに連絡しておけばカイル様にも繋がるし、後はゴルドかジャック辺りに連絡を入れておけば大丈夫だろう。
後は食材かな?基本現地調達で良いのだが保存が効くし買っておいて損も無いし、市場っぽくなってきてるからついでに覗いておこう。
市場に来ると新鮮な野菜や魚介類、様々な保存食の中に燻製や干物など普通だと干し肉くらいしかないのにより取り見取りで今後の旅も楽しめそうだ。
「毎度あり!にいちゃんこれはサービスだ持って行きな」
八百屋のおっちゃんはリンゴの様な果実をおまけでくれた。食べてみると滴り落ちる様な水分と甘さこれは色が違うが梨か?これも水分補給に使えそうだな。いろいろ集まってくればもっと人集まって賑やかになるんだろうな。
そんな今後の展望を考えながら歩いていると突然背後から肩を掴まれた!
慌てて振り向くとそこにはジャックの姿があった。ここであったのもちょうど良いので魔の森を調べに行くことを伝えると難しい顔して考え込んでしまった。
どうやら面倒みてる子達を過酷な環境に耐えられる様にしたいがまだ連れて行くには不安を感じる様で俺達に同行させようとしてたらしいが、行き先が予想以上に過酷になりそうでちょっと心配らしい。
それならばとジャックもついて来ればと言ってみるとそうすると別の新人達が心配なんだと…
ここまでくると過保護な気もするが勝手にやってる俺が文句を言えるもんでも無いから任せることにして、明日の朝行くなら食堂に連れて行くやつを準備させといてくれって事でこの場は別れることにした。
一応いっぱい来ても良い様に食材を買い足したのは内緒である。
翌日食堂に行くとやたらと軽装な6人がいた。
着ているのは旅装束くらいで武器も何も持っていないよく見ると試作のアイテムバックを持っていた。なんでもこの沖で大鯨が捕まりその胃袋が海水ごと飲み込んで食べるのに何処に入るんだって調べたら海水だけ別次元に飛ばしてるのがわかり能力は低いがアイテムバックとして改造出来たので実験的にロレッタから渡されたそうだ。
今回は基本歩き移動だから荷物が軽いのは機動力上がってありがたいことだ。
装備なんかも急ごしらえでゴルドが作ったらしくアイテムバックに入れてあるとのことで後でのお楽しみにされてしまった。食材やテントは確実に持ってるそうだが山登りでも出来ちゃう量が小さなバック1つで済んでしまうのはこれはこれで成功してると思う。
さて出発だ。
今回はまた狼人ミルがリーダーで兎人ラート、鳥人フラウ、猫人アメリが前衛として索敵などを担当して進みジャックとシャロルが中衛でサポート、俺達が後衛として進むことになった。
もちろん俺はマップレーダーで常時監視しているがアーネも子蜘蛛を展開してるそうだ。
でもその必要も無かった。
もうすでに半方位で囲まれていて5分ほどで接敵が確定した。
クレセント出てすぐでこれでは先が思い遣られる。
ラートも即その自慢の耳でおおよその状態を掴んだ。
「囲まれてます。半包囲で間合いを詰めてきてます。すぐにぶつかります。迎撃準備をお願いします」
その報告でみんな武器を構え始めた。
ミルは大剣を持ち出し、フラウは短槍、ラートはナックル、アメリは鉄爪を両手にはめ、ジャックは長槍シャロルは双剣で新人四人は大幅に武器が変わってジャックとシャロルは基本変わらず武器はリニューアルされていた。
俺達も装備を構え、魔物が来るのを待ち構えた。
ガサガサ
「先頭正面よりきます。次は右からが早いです」
ラートの情報により右にジャックとシャロル、リーブを付け正面は四人に任せ、左側にアーネと二人でついた。中央にはテルトが動物化自立魔法の魔法獣でサポート体制に入り万全の状態で待ち構えたが相手が悪かった…
正面は毒性の臭いを撒き散らすデススメルと言うスカンクの様な魔物。右から来たのは頭を鉄の様に硬くして角を持ったトリケラトプスの様なメタルフェイス。左は森を縄張りに狩りをするオオカミの様なフォレストハンター。
普段臆病なデススメルがこんなに逃げているのは何かに追われてかもしれない。そこに逃走ルートで2つの縄張りに踏み込みさらに追い立てられた様だ。
しかしこうなっては全て殲滅するしか無いだろう。少々配置転換するとしよう。
「ジャック場所を代わろう、四人も左寄りで頼む。中央はアーネ足止めしてその間に右の硬いのなんとかするから」
四人は左のフォレストハンターにあて、ジャックとシャロルに中央寄りで余裕があれば斬撃をデススメルに飛ばして牽制してもらう様にして、デススメルは近寄らせなければさほど害はないそうなので足止めを中心に後回しにする事にした。
その間に右側にリーブの盾で足止めと咆哮、テルトの魔法獣達を主攻として俺も魔法を中心に殲滅を優先する事となった。




