7二人旅
テルワートのワイシャツ姿に悶々としながら一路レホの村に進んでいった。テルワートは封印されていたが情報自体はこっそり収集していて結構物知りだった。お陰でこの国の構造がだいぶわかった。かなり昔に神魔大戦が起き、その時に退けた代表が神と崇められコルテレット聖教国が誕生した。その後再起を図る魔族と小競り合いのたびに人口が激減する事からコングリア騎士王国が強者を集め育成し、さらに魔族の魔法を封じるためにソルジット学術国が誕生した。
テルワートは人族至上主義のコルテレット聖教国に罠に嵌められ、ソルジット学術国で人体改造を受け魔力をあげて対魔族の戦線に投入された。勝利を収めた後にはあまりにも他の種より実力があったために均衡を図るために封印されてしまったそうだ。
しかしミミズが大暴れしたお陰で祠にかけた封印が解け、祠も崩壊した事により姿を表す事が出来た。そこに俺が現れ、神をも拘束可能な鎖の封印をいとも簡単に断ち切った事により人格も崩壊せずに脱出出来たそうだ。
人格崩壊って…そんなに恐い呪いの封印とは思いもしなかった…でも無事に出れてよかったね。うん。
「ケント〜〜ケントってどこから来たのぉ〜?」
テルワートは自分の事を言った後は俺の事が気になって聞いてきた。せっかく友好的な人と知り合えたから洗いざらい話していろいろ協力を求めてもいいのかな?それよりこの伸び放題の髪の毛切りたくてウズウズしてきたがこれは置いておこう。
髪切る仕事の事。事故で祠にたどり着いた事。起きたら草原にいた事。自分が持ってた道具がみんなカスタマイズされてた事。魔物とか戦った事もなかったのに勝てちゃった事。ミミズに食われた事。いろいろあった事全部話した。
ついでにテルワートの髪の毛切りたくてウズウズしてるとも…
「へ〜ケントは「チュドーン!」超越者なん「ドーン」だぁ〜。しかも髪切るなんて「ドカーン」神を切るために呼ばれたのかもね「ズドーン」村に着いたら早速切ってね」
「あの〜テルワートさん攻撃するか話すかどっちかにしません?」
「だって〜「ヒューン」近付かれる前に「スパーン」やったほうが楽じゃ「プシュー」ない」
身も蓋もなくあっさり倒しテルワートの魔力で死骸を回収俺のバックにどんどん入ってく…
俺この娘に魔法を教わろうとしてるんだよな…
火の矢が飛んだり土の槍が出てきたり、高圧洗浄機みたいに水だしたり空気のブーメランみたいの飛んだり…魔法っていろいろあるんだね…
おっきいウサギとかニシキヘビ見たいのとかモグラみたいなのとか…なんか小物多くねえか?
「あぁ〜あの平原は大物だらけだからね〜上級者向けのエリアよぉ〜こっちは冒険者入門編みたいなとこよぉ〜」
「な〜俺変な魔法触媒ってのあるけどそういう魔法も使えるのかな?」
「たぶん無理じゃなぁ〜い?その分その持ってるのが強力なはずよぉ〜それに超越者なんだからきっともっと凄い力持ってるはずよぉ〜」
「そうなのかな〜。でさ〜超越者って何?」
「超越者ってのはね〜」
テルワートが言うには時々異世界から招き寄せられた人を超越者と呼ぶらしい。みんなそれなりに何かしらの力を持っているのでこの地に残ったものはそのまま賢人として祀られているそうだ。中には自分の世界に帰れたものもいるようだがその方法はわかっていないようだ。
よしこれで希望が持てた。
とにかくこの世界で力をつけていろいろな所を回れば何かわかるかもしれない。
「ケント嬉しそぉ〜私もついて行っていい?」
「いいけどここより差別が酷いかもしれないぞ」
「大丈夫ケントがいれば私は生きていけるからぁ〜」
「おい!それは俺から精気ってのを吸う気だからだろ?」
「ばれたぁ〜」
楽しいなおい!仕事漬けで彼女なんか作る暇なかったからこんなたわいも無い事話せるのも楽しいな。
ん?お客様に女性がいただろうって?手を出せるわけ無いだろこう見えて対人恐怖症なんだから。仕事と割り切ってやっと営業トークできるんだから…
それも虚しいよな…
奴隷のごときサバイバルゲームを生き残って営業後の強制練習とか、今思えばブラック企業並みの事が普通の業界だったよな〜
ダメダメこんな暗い事考えてちゃ。せっかくの女の子と歩けるチャンス楽しまないと!
「ドカーン」「ドーン」「ズドーン」
…会話が続かない誰か話すネタください…
むぅ〜どうする俺?
そうだテルワートは魔法の専門家。魔法を習いながら行こう。
テルワートに魔法のコツを聞くとどうやら俺は合気道でやっていた呼吸法が体内の魔力操作に相性がいいようだ。しかしまだ体外に放出するのには出口が開いてなく、テルワートがやっているような魔法は使えないって…。ただ体内にあるエネルギーが尋常じゃ無い性質だから普通の魔力換算だと底が見えないらしい…。
だから直接触れる系統の魔法なら今でも使えるだろうが魔法陣がわからないと発動も難しいらしい。
うげぇ〜今からまた勉強しないといけないのか…最近覚えるのに学生時代と比べると倍ぐらい時間がかかってたからな結構厳しそうである。
魔法談議で有意義な時間を過ごせたからいつの間にか気の柵で被われた建物が見えてきた。ここがレホの村のようである。日が落ちる前に着いてよかった。村の入り口には門番らしき人が2人立っていた。右の人は犬耳の男の人、左は猫耳の女の人が村に入る人をチェックしていた。
「お前達見ない顔だな。どこから来た?」犬耳のお兄さんが聞いてきた。ここはテルワートに丸投げである。
「盗賊に誘拐され大きい街に長い事拘束されていたのを抜け出してきました。
この方はたまたま冒険者登録に街へ行く途中を巻き込んでしまって。崖から落ちた時に記憶を失ってしまって…」
「それは大変だったわね。貴女の服もあり合わせでしょう?お金はあるの?」
「途中この方が魔物を狩ってくれたので換金すれば少しは…」
「なら早く行くといい店が閉まってしまう」
「貴方も記憶が早く戻るといいわね」
「ああ」
嘘も方便?真実の中に少しの嘘?なんか知らんが無事に通れた。
テルワートも記憶喪失ならケントも都合がいいでしょうってドヤ顔で言ってきた。
確かにこの世界で知らない事多いからな記憶喪失は便利かもしれない。
何気にこの娘かなり気が効くよね。
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