59帰宅
ミミズ狩りが終了してそれぞれのマジックバックに入っていた分も時空バックに格納して一行は石切場を目指していた。
やはりケントは無実の奴隷狩りで無理やり連れて来られたという奴隷がいる事が納得出来ないでいた。
しかも自分には魔力的に契約されてるものでも断ち切れる力があるから余計に自分に出来るならやらなくてはと思い込んでしまっていた。
実際助けたとしてもその後はどうするのかなどは何も考えていないのだがそれでも石切場を見なくてはとなってしまっていた。
夕暮れではあったのだが思った以上に体力は減っていなかったので急ぎ足で石切場上部に到着した。
ところが…石切場の上部から見た景色は悲惨な状況になっていた。
一言で言えば壊滅していた。
しかもまだそこには大型の魔獣が存在していた。
それはバリバリと兵士と思われる者を鎧が付いたままバリバリと貪っていた。
どうやらここは襲撃され崩壊した様だ。
数人生存反応がある様だがあの剛腕猿を始末しなくてはいけないがそれまでには生きているかも怪しいのでそれでも仕留める事に決断した。
「奴を仕留めて生存者を救出したい」
「それなら糸索人形を挑戦してみましょう。そのついでに子蜘蛛に先行させて回復薬を少しでも摂取させましょう」
アーネの提案によりレーダーに映っている生存者をリストアップして回復薬数的分しか持てないが蜘蛛に運ばせ生存者を延命措置を行わせた。
糸索人形の方はさすがに魔獣クラスは荷が重かった様である。
洗脳失敗により猿は俺たちの方を向いて目を輝かせていた。
石切場の狭い敷地に巨大な腕を持った猿である。横への逃げ場がほとんど取れなそうで、アーネには壁面をつたって回り込んでもらい救助活動を行ってもらった。
さて問題はこっちである。
3人で真正面から相手をしなくてはいけなそうである。
猿がベースであれば素早さもそこそこあるだろう。それに腕が体の倍ぐらいの太さと長さを持っている。
見た目的には戦隊モノの合体するロボットの腕担当みたいな不自然さを持っているのだが、運動性能はなかなか良さそうである。
片腕で体を支え、移動するときは体全体で飛んできて逆の腕でスピードを殺して方向転換などほとんど腕だけで動けている。
リーブは金龍の鱗盾を構えて猿の突撃をいなしている。そこに剣でチクチク削っているのが精一杯で、テルトもリーブの周りに氷の飛礫の弾幕を張る様に魔法を撃ち込んで意図的に弾幕を薄いところを作って移動方向を誘導している。
決して「弾幕薄いよ」とは言えない状況だから言いたいのをウズウズしながら心を鬼にして飲み込み、その薄い弾幕の先で待ち構えた。
リーブは俺が位置についたことでわざと崩れて、テルトの弾幕の範囲を増やした。これにより左側の弾幕が増え猿は自然に右に体をずらしてきた。
そこはすでに俺の射程距離だった。
石突砲で武器の間合いを誤魔化して薄い弾幕の中心にいた。
テルトもさらに左に威力多めの弾幕で猿の右腕部分に少なくない傷を増やしていた。
猿はその弾幕で右腕の動きが鈍いのか動きに精彩さを欠いていき、そこに武器の間合いを最大限に伸ばした俺の一撃が叩き込まれた。
猿はとっさに無事な左腕で取りに来たが、斬属性の威力が強化された気を纏った薙刀は猿の左腕を真っ二つに切り裂いていった。
猿は始め何が起きたか判ってはいなかった。裂けた腕を見て滴り落ちる血を見て、右腕で左腕を抑えながら絶叫の様な咆哮を上げていた。
しかし猿はその行動が仇となり、リーブの剣が猿の右腕肘を切り裂き、正面が空いたテルトは威力増強の氷槍を体に突き刺していった。
止めに俺は首を切り落とし、戦闘は終了した。
崩れ落ちた猿はリーブに任せ解体を頼んでおいた。
俺はテルトと共にアーネの手伝いに回った。
結局一命を取り留めたのは、男2人女3人だけで1人は兵士なので情報を貰うためにも連れて行くことにした。
テルトはいつの間にかやる事がないと、魔法を使って墓を掘ってくれた様で俺の回復の手伝いが終わった頃にはリーブと2人ですっかり埋葬が終わっていた。
その日は大きい方の小屋を石切場に出して全員その中で夜を過ごすのだった。
救出した5人は意識を失ったまま翌日の朝を迎えた。
さすがに起きないまま連れて行くにも気が引けたので、起きるまではこの場で待機することになった。
アーネには5人の見張り兼、連絡係として食事の用意を頼んでおいた。
残った3人はバギーに二台リヤカーを接続して衝撃を吸収する様に葉っぱを集めて簡易的にベットの様に整えるのだった。
その後5人は起きて現実を把握し行き場の無い事からこちらについて来ることになった。
兵士も全滅していては戻っても責任取らされて命は無いからとついて来ることになった。
この兵士はゼルトロワ帝国の派遣部隊で海を渡って石集めのついでに進行の足場にと出てきていたが魔獣が多く採算が合わないので撤退も視野に入っていたそうだ。
一部の部隊は現地集落を襲撃し奴隷集めしていたのだが部隊丸ごと連絡が付かなく、残った20人程で対策を検討していたところに猿の襲撃で全滅したそうだ。
残った奴隷の人達は皆隷属の首輪は解除しておいた。これで自由だが戻っても生きてる家族は居ないので新天地に期待をするそうだ。
そこまで言われたなら責任持ってクレセントに案内する事にしよう。
護身用で熊人と兵士には両手剣で女性3人には片手剣かナイフを渡しておいた。これはミミズの中から拾った量産品である。
防具は装備出来そうなサイズが無かったので、食事を取ってもらい出発するのだった。
途中タウザンフォールで龍達に会い、何やら怪しい趣味に走っていそうな一部の者は見なかった事にして、リヤカー牽引の仕組みに興味を持ったクロワさんの提案で馬車の馬代わりに四つ足タイプの地竜を連れて行く事になってしまった…
なんでも交流兼修行という事でコキ使わないといけないらしい…
早速リヤカー一台に二頭引きというオーバースペックの即席馬車を道案内してクレセントに帰るのだった。
この時連れてきた5人はいずれ竜車輸送協会を設立して、馬の倍以上の速度で倍の荷物であっても一頭で済むという事で移動の常識を覆していくのだった。




