49対決金龍
『なんじゃおぬしらは我の眠りを邪魔するなら覚悟するがよい』
「いや〜邪魔するも何もここを通らせてくれればそれでいいんだ」
『通りたければ我を倒してから通るが良い。300年ぶりの挑戦者だ名一杯楽しませてもらうぞ』
「ちょっとぉ〜何もう交渉決裂させてるのよぉ〜」
「ケント様。彼もわたくしと同じ匂いがします。おそらくはここもダンジョンだったのではないでしょうか?」
「そうなの?それじゃ〜こいつが管理人?」
「はい。おそらくは」
「こいつぅ〜蒲焼にして食ってやる」
最近テルトのキャラはどこに向かうのでしょうか?
グォォォォ
ドラゴンが叫んだ。咆哮って奴か?
ゲームだと竦んだりするんだろうけど俺たちはなんともなさそうだな。
この金龍は蛇の様に細長く空を飛ぶ、系統的には日本の龍のタイプだ。
今も浮遊してこちらを睨んでいる。
こうなると俺の攻撃手段は少ないから囮役になってテルトやアーネが攻撃の主体になるしかないかな?
どっちにしてもいやらしい攻撃で俺に注意を引いておけば、2人がガンガン削ってくれるだろう。
それなら石突砲がいいか?これを顔、特に目の周りに叩き込んでおけば鬱陶しいだろうから、目の前をチョロチョロするハエみたいに地味に嫌がらせ出来るだろう。射撃開始!
パスパスパスパス
パチパチパチパチ
やっぱり空気鉄砲程度の威力じゃ龍の鱗にはまったく聞かないね〜全部弾かれてるや。
さてとどうやって2人に伝えようかな?
[念話で頭に思い描くだけで意思の疎通が可能です]
メガネ君にそんな表示が現れた。
へ〜そんなのいつできる様になったんだ?以前聞いた気もするけどそんなの今はいいや。ではさっそく。
「(2人とも聞こえる?)」
「(念話?聞こえるよぉ〜)」
「(こちらも聞こえております)」
「(この念話一斉もできたんだねって、そんな事より注意を引くから2人でなんとか叩き落として。頼んだよ)」
まるで同時通話の様に頭の中で会話のやり取りが完了した。
ここからテルトは地面から土槍をロケットの様に打ち上げて金龍は回避行動を取って上に逃げようとした。
そこに狙った様にアーネの糸が前足を捕まえ、動きを拘束してその一瞬で偶々金龍の顔付近に合った土槍の一本が顎を打ち上げた。
金龍は上がった顎を戻そうとすると、今度は上から大岩が降ってきて頭に直撃し舐めてかかっていた金龍は頭に血が上り、注意力が散漫になっていた。
その間にアーネはせっせと糸を張り巡らせて上空の半分以上の空間を使いにくい様に封鎖していた。
それでも金龍は暴れて、糸が絡まり体の動きが阻害されようと構わず糸を切って上空に逃げようとしたがそちらに意識が向くと今度はテルトが石や氷で物理的質量攻撃を与えて金龍の攻撃を潰して行っていた。
金龍の高度が下がった事により、俺もジェットウインドで金龍のバランスを崩したり、ウォーターラインズで顔面に熱水を当てて目眩ししたりで、ダメージはさほどではないが一方的に手数で金龍に嫌がらせをしていた。
ただ金龍もだんだん冷静になってきていて徐々に攻撃が当たりにくくなっていた。
だからと言って全長30mを超える様な龍に近付くとそれこそ逆に質量攻撃の体当たりだけでこちらがやられてしまう。
金龍の速度的にも離れていないと対処が仕切れないが、このままではジリ貧になってしまう。
合間を見て気を練り、身体強化をして接近を試みる事にした。
なんとか金龍は地上2mほどのところなので薙刀が届く距離に降りて来ていた。
側面から接近し、前脚に気をつけながらダメージを装甲の薄そうな腹中心に入れていった。
しかしこの動きを狙ってか金龍の方が仕掛けてきた。
1番攻撃手数の多かったテルトがターゲットにされた様だ。
側面からの俺の攻撃も鱗を叩き割りダメージを与え無視できないはずなのだがそれでもテルトを狙って攻撃態勢に入っていた。
体がトグロを巻く様に溜めを作り頭の位置は動かないのだが体の反動で尻尾を振り遠距離でも届かせるつもりの様だ。
これはまずい!!
前からは首から胴にかけての体が影になって見えなくされている。
俺とは対角にいるテルトからはこの動きは見えない。
念話で注意を促しつつ、尻尾の付け根に一撃入れれば動きが鈍るのを期待して足に気を纏って地面を踏みしめた反動を利用して一気に加速して、その加速のまま薙刀を突き上げた。
尻尾を根元から切断を狙ったのだが胴体の位置がさらに溜めを作るために移動して狙っていた根本がずれてしまった。
それでも何もしないよりは妨害になればと、薙刀を突き刺す様に体当たり気味でさらに加速して突っ込んだ。
ぬぷっ!
おかしい…確かに金龍に刺さったのに手ごたえがない…
しかし尻尾攻撃の前兆は停止していた。
折角刺さったんだしここはやっぱりいつもの必殺パターン触雷かな?
くらえ〜!
ビリビリビリビリ
ぬほぉぉぉぉぉぉ!!!
この世のものとは思えないなんとも不快なおっさんの声であるのだが当の金龍は喜びに浸っていた。
そしてなぜか薙刀が刺さった先に赤黒い細長いものが現れていた。
『200年振りじゃ〜おぬしらちょっと待っておれ!この感動をさっそく試してくるぞ!久しぶりの子作りじゃ〜!』
……どうやらあの出てきたものはアレらしい…そもそも龍に生殖器ってあったんだ…それで俺達放ったらかしでナニしに行ったんだ…
てことはだ俺の薙刀は金龍のケツにでも刺さったのか?
それで触雷なんかやったもんだから電気刺激で元気になったと…
なんか薙刀を洗いたくなってきた…
「テルト怪我はない?アーネは?なんか俺達より重要な事ヤリに行ったみたいだね」
「アーネぇ〜アレ出してぇ〜」
ガシッ
テルトはアーネに指示を出しながら俺の腕を自分の腕で固定した。
アーネも準備が終わったのか反対の腕を取ってクルッと反対側を向く事になった。その先には広い広間の真ん中にミニ小屋が建てられていた。
「あの〜2人とも…これは?」
「決着はわからないけど激しい戦闘だったんだから疲れてるでしょぉ〜休憩しないとねぇ〜」
「そうですよケント様あの龍が帰ってくるまでは癒しませんと」
「なんか言葉の意味変わってない?」
「どうせあの龍は時間がかかりますから。ね?」
2人の有無を言わさない無言の笑顔に威圧され、連行されるのであった。