21蠱毒(2)
テルトを絡め取った蜘蛛は隣の部屋に行き壁は閉ざされてしまった。
それでもまだ望みはあると思い壁まで突き進む事にした。
回りでは虫どもが潰し合いを始めていた。どうやら同じ種類は居ないようである。同族の連携ではなく個の強さのみが生き残る術なのかもしれない。
これではまるで毒虫を集め生き残りを使うと言う蠱毒とかいうのと一緒ではないのか?
確か生き残りを使って殺しに使うとかってやつだよな?
「くそ〜さっきからこいつら邪魔ばっかり」
目の前にいた蟷螂が他の虫を喰らい鎌が四本になってこっちに向かってきた。
こいつはすでに魔獣と呼んでもいいレベルになったのではないだろうか?
やはりこの中で戦わせて生き残りがより強い個体に成長するためのもののようだが俺はどうなるんだろう?
そんな事よりさっさと蹴散らさないと…
蟷螂は四本の鎌を振るって襲ってきた。
しかしこっちの獲物が槍のため十分な間合いをキープしながら対応できた。
蟷螂は急に増えた鎌を扱いきれないようだが徐々に動きが良くなってきている。
はじめは右二本左二本と同時に動いていたのだが段々別々に動き始めている。
早いところ始末しないと苦戦しそうだ。
蟷螂が右から大振りな横薙ぎの一撃を放ってきた。それを槍でいなしに入ったところでさらに足元へもう一本の鎌が追撃してきた。
一本目の鎌が頭上を抜けたところで槍の石突を地面に叩きつけ体を浮かせ二本目の鎌を飛び越えた。
二本の鎌をやり過ごした事により蟷螂の側面に回り込めた。このチャンスに槍に気を纏わせ、鎌の付け根に刺し込んだ。
刺さったまま上に払い上げ二本の鎌を斬り落とし、次はそのまま頭に向けて槍を叩きつけた。
蟷螂はその一撃が止めとなり崩れ落ちた。
そしてそのまま姿が消えた。
メガネには時空バックに収納しましたの文字。
どうやら勝手に仕舞ってくれたらしい。そんな事よりも先に進まなくては…
パスッ!
?何かくる!?嫌な予感がして半身左に身を避けた。
カキーン!
地面に20cm程の細長い三角錐が刺さっていた。
パスッ!
マズイ!!飛び道具だ!!
カキーン!
どこだ?この角度は上か?
パスッ!
居た!なんだこいつは!?60cmくらいあるでっかい雀蜂みたいな奴が次々針を生み出して飛ばしてくるだと!?
マズイな〜飛んでる奴ら安全圏から一方的に攻撃してるな…
雀蜂も微妙に槍では届かないし他とやりあっても上からの狙撃は厳しいぞ。
ドーン
うわーあぶね〜!
巨大クワガタが投げ飛ばされてきた。
ん?
こいつは丁度いい。こいつの背を踏み台にすれば雀蜂に届く。
そう思うとすぐに身体を動かしていた。3m程離れたクワガタの背を目掛けて走り込み、踏み台にして跳躍した。
足に気を纏わせた事により予想以上に跳躍してしまい、近距離で雀蜂に槍を叩き込むが間合いが近過ぎ柄で叩き落とすだけになってしまった。
落下しながら下に目を向けると怒ったクワガタが顎を開いて待っていた。
ええーい鬱陶しい。
槍の刃を下に向け頭の付け根が丁度狙える位置にあったので、迷わずそこに刃をねじ込み貫き、槍が深々と突き刺さった。ついでに触雷を発動させクワガタは中からこんがりと焼きあがりました。
クワガタの上に着地をすると、高速飛行物体が正面から襲ってきた。
先程の雀蜂である。
今度は顎を開いて直接攻撃に移ったようで、しかも腹には針が準備されてるので追撃もあるだろう。
槍をクワガタから抜いているのでは間に合わない。左手一本犠牲になるかもしれないが気を纏わせて、雀蜂に手刀を突き刺しにかかった。
ズブズブ!
すると雀蜂の右目の位置に自分の左手が合わさり肘の辺りまで深く突き刺さっていた。
うそ〜〜マジか…気持ち悪い…中がヌチョヌチョする。
しかもこいつまだ動いてるよ…焼き切ってやる!触雷!
パスッパスッパスッパスッパスッ!
なんだこりゃ!?
触雷で電気が雀蜂に流れると雀蜂の針が連続して打ち出されはじめたのであった。
お〜こりゃ便利だな〜今のうちにその辺で鱗粉撒いてる蛾とか撃ち墜としとこう。
いつまでこの針を飛ばすのが続くかわからないから飛行形態の連中に向け片っ端から撃ち込んで撃墜しといてやる。
蛾、トンボ、種類の違う蜂、蚊、蝿と次々に命中弾を与え墜落させ他の昆虫に踏み潰されていった。
そんな中奴が現れた。
薄い体ながら素早く飛行し黒光りする体を見せつけながら接近してきた。
俺が知ってる通常サイズでも恐れられてるのにこいつはメーター級である。
こんなにデカイ黒い悪魔は触れるのも嫌である。
ましてや通常歩行では無くいきなりのフライングGちょっと昔のトラウマが…
そのトラウマとは出掛けようとして玄関行ったらいきなりのフライングGの洗礼で避けて目を放した隙に消息不明。
探索するも見つからず、仕方なく出掛けるために素足のまま靴を履いたら…グチャ…
そうGはなぜか俺の靴の中に避難していたのである…それを知らずに靴を履いてしまった俺は今でもGを踏んだ感触が脳裏をよぎり、Gに対する苦手意識が芽生えてしまったのである。
つま先部分に硬いものがあり履いて踏むと硬さの中に柔らかさがあり、表面の硬さは次第に圧力に耐えきれなくなり、なんとも言えないやわな感触を足のつま先で感じたのである。
そのトラウマのために必要以上に雀蜂速射砲が唸らせ、Gに猛攻をかけるが効いてる様子がない…
なぜかトラウマが増幅し恐怖にとらわれ始めた。しかも雀蜂速射砲がついに弾切れなのかも出なくなってしまった。
使えなくなったものを腕に纏っていても仕方がないので雀蜂を左手から抜きバックの中に使えそうな物がないか探した。
何としても奴に接近戦は挑みたくないと強迫観念に襲われ近付かなくて済みそうな物を探し始めていた。後で考えれば何でこんな事をしたのかはわからないが手に持っていたのは猛毒薬と麻痺薬を持っていた。
しかしこんなのを取り出したところで奴には届かない。奴を倒すのはいつも遠距離からのゴキジェット…
それならととっさに思いついたのがこの2つを強風で巻き散らそうと思い至り、ジェットウインドで拡散させようと体が動いていた。
この時ほとんど無意識である。
まるでレーザー砲のような風で追撃しながら薬を混ぜGに叩きつけた。
Gもさすがに苦しいのか右に左に上に下に縦横無尽に飛び回るが追尾体制は万全で逃げる先にもあらかじめ煙幕の様に散布済みである。いつしか弱り床に落ち、動かなくなるまで毒を喰らわせていた。
Gの動きが止まった事により俺は冷静になってきた。
そうだ回りは虫だらけ油断したらやられると思い、クワガタに刺さりっぱなしの槍を引き抜き辺りを見回した。
ところが戦闘態勢を維持出来ているものは居なかった。皆床に落ち痙攣するか動かなくなっていた。
あれ?何で?
冷静になりよく考えると猛毒と麻痺が効いているのか?
それなら今のうちにトドメを刺せばいいのか?
蜘蛛が出て行った壁の開き方もわからないしそれなら邪魔が入らないようにして対策を考えたほうがいいだろうと思い至った。
丁度生命反応は自分から1番遠い、蜘蛛が出て行った壁側である。ついでに始末してしまえばいいだろう。
近付くとどれもほぼ文字通り虫の息である。虫が死にかけて虫の息である。何でこんなオヤジギャグが浮かんだのだろうか…やはり30間際はもうオヤジという事か…
自分自身の精神攻撃にダメージを受けながら最後の一匹にトドメを刺した。すると蜘蛛が通った壁が開き隣の部屋への道が出来たのであった。
ブクマありがとうございます
予想外に主人公が強くなってしまった
Gは実話でございます




