20蠱毒
本日二話目
「くそ〜どけ〜〜〜」
ザクッドカッ
多種多様な魔物の群れに放り出された俺は眼鏡に表示された青い点に向かって必死に駆け出した。
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「おはよぉ〜ケント〜今日はこの指輪をいろいろためさえせてよねぇ〜早く行こうよぉ〜」
「おはようテルト。早起きだね〜今日は素材集めだから消滅させるなよ」
「わかってるぅ〜早く準備してぇ〜」
「わかったわかった。用意するからそんなに焦らせるなよ」
昨日渡した指輪が能力を半分封印されてるテルトにとってどこまで本来の力のサポートされるのか楽しみなようでどこかウキウキしていた。
起きて準備が終わるとすぐに実験に連れて行かれそうになるが、そこは昨日行く予定だったゴルドのところに寄ることにした。
「おっちゃ〜んいるかーい?」
「なんだ?朝からうるさいの〜」
「そう言うなよ。これ見てくれよ」
「ほ〜これはなかなか良いもの持ってるな。でどうするんだ?」
「これから森の南に入って防具用の素材集めしようと思ってるのだがどんなの狙ったらいい?」
「そうだなドラゴン系のウロコがあると良いがかなり奥地に行かないといないからな。ま〜獣皮で狼や熊系ならそこそこ使えるだろう」
「わかったこれから取りに行くから良いのが手に入ったら頼むよ」
ゴルドの家を後にしていちよう数日分の保存食を用意して村の門に向かった。
ジャックとシャロルに数日素材集めしに行くことを伝えたのだが、未だに冒険者装備一式だったのであまり奥に行くなよと声をかけてくれて、いざ大森林を南に向けて進んでいった。
[ピピッ]
メガネから更新通知音が響いてきた。
おや?マップにグレーの点が現れた…距離的には村から20分くらいか?あんなところで何してるんだろうな?
動いてる気配はないし…
ん?増えた!?
最初の1つの回りに4つ出てきて1つがでかいな…人ではないのか?
観察しながら歩を進め、テルトに相談して見ると召喚で呼び出したのかもねとの事だが、なんとなく引っかかるので遠目からでも観察できる地点まで移動する事になった。
大森林は大きな樹木が生い茂り、日がさほど入らないので足元に生える草はあまり大きく育たず、移動は苦にならないのだが、樹木の陰になり先がほとんど見えない。
メガネの索敵により近隣の魔物の情報が入るから警戒もせずに移動しているが、普通であれば気配を探り慎重に進まないといけないのであろう。
この点はメガネがあって良かったと思う。
さてだいぶ近づいて200m位には来てるはずだが木が邪魔で何も見えない。ここからは足音を立てないように慎重に進む事にした。
よく敵の偵察で接近して木を踏んで音で気付かれるというのがあるから、なるべくすり足気味でテルトが歩きやすいように草をかき分け道を作りながら進んでいる。草が横を向く様にしてかき分けたところで根元を踏んで戻らない様にしての道作りである。
いくら俺が慎重に進んだところで同行者がしくじるのもよくあるパターンだよね?
そこまでリスク回避に動けたらいいよね。
そんなこんなで50mほどのところに近づき少し見えるところに来た。
どうやら少し広場のようになって開けた場所のようである。
よくは見えないがフードを被った全身グレーのマントの人が3人、尻尾が見えるので獣人の子と思われる背の低いのが1人、それに3mくらいありそうな蜘蛛と思われるのが一体。
3人のフードが子供の頭ほどある石を持ち何かブツブツ呟いてそうだ。
「これってなんだと思う」
「あまりよくないことをしようとしてると思うけど、今は動かない方がいいかもね」
テルトと小声で相談して何が起こるのか様子見をする事にした。
暫くすると石が光り始めた。
それは次第に輝きを増し、肉眼で見るには困難なほどに輝きを放ち始めた。
俺はメガネが自動調整してくれたのかサングラスのようになり光量調整されじっくりと見る事が出来た。
輝きはさほど時間もかからず限界に達したのか動きが見えた。
石から紐のようなものが伸び獣人の子と蜘蛛に巻きついた。
これは見覚えがある!!
テルトの首に巻きついていたのと同じように見える!?
光る石は2人に絡みついた後地面に落ち、獣人の子と蜘蛛を一緒に地面の中に巻き込んで行った。
「これで苗床がどんなのを産むのか楽しみだな」
「そうですねこの地なら虫系魔物がたくさん集まるでしょう」
「あの古文書のアレンジが成功すれば最強の軍団も可能でしょう。十二家の天下も安泰ですね」
「さあこんなとこで時間を使っていては俺たちが餌食になる急いで戻るとしよう」
声的にフード三人は男のようだが随分不穏な言葉を残してその場から姿を消した。
まるでテレポートでもしたかのようにあっという間に消えていった。
「なんだったんだあれ?」
「わからないわぁ〜ちょっと見に行きましょう?」
「でも危なそうな事言ってたぞ」
「今ならまだあの子救えるかもしれないわ」
その一言でハッと気付かされ慌てて行動した。
そうなんだ。蜘蛛はともかくとして子供が地面に飲まれてるんだ。しかも待ち受ける運命が苗床って不穏な単語が出て来てる。救えるなら早い方がいいだろう。
消えたと思われる場所に到着すると魔法陣とでも言うのだろうか大小様々な円の中にミミズが這ったような文字のような物が並んでいた。
おそらくこれを解除するならどこかこの文字を崩さないといけないような気がするがテルトの時と同じでいいのかな?
ハサミを手に取り魔法陣を眺めると、メガネにカット箇所のガイドが浮かんできた。
何が起きるかわからないがメガネが教えてくれるなら間違いはないだろう。
いざ魔法陣に示された3つのうちの1つ目にハサミを入れた時、異変が起きた。
メガネの索敵に四方八方から赤い点が現れまっすぐここに向かってきた。
それは次第に密度を増し気付けば自分達を大量の魔物が囲んでいた。
俺とテルトは魔法陣解除を諦めて背中合わせでいつ襲ってくるかわからない魔物に対峙した。
魔物は8割くらい昆虫をでかくしたようなものや人のように動く虫が中心のようである。
「テルトまずいねこれ。魔法陣も一箇所切れたがもう土の中だしね」
「魔法の実験にはいいけどちょっと多いわねぇ〜」
ゴゴゴゴゴ
突如地面が鳴動を始めた。
そしてあたり一面を覆う強烈な光を放った。
光が収まるとそこは地下洞窟のような場所だった。
虫もショックから覚めたのか動き始めた。
俺は振り返りテルトを確認しようとしたら居なかった…
慌ててメガネの索敵を稼働させると…
居た!部屋の隅!
そちらに目をやると見つけた!蜘蛛の背中に縛り付けられてる!?
蜘蛛は部屋の壁まで進むと壁が動き隣の部屋へと移動しようとしていた。
マズイ!!早く助けねば。
しかし無情にも俺の前には虫どもが集まってきて進路を塞いで行った。
「くそ〜どけ〜〜〜」
ザクッドカッ
多種多様な魔物の群れに進路を塞がれた俺は眼鏡に表示された青い点に向かって必死に駆け出した。
話の展開がコロッと変わってどう進むのでしょうか?
作者にも予想外な方向に動いちゃいました。