11快適旅
本業以外の事が多忙でペースが上がりません
走り始めてから思った以上に衝撃も無く、こいだ以上にスピードも乗っていった。電動付き自転車顔負けの性能である。軽く魔法回路を組み込んでくれてるようでギアを無くした代わりに回転エネルギーを補助する魔力が自動で発生する事で無段階ギアのように速度に合わせて調整してくれるから、どちらかと言うと原付に近いのかもしれない。
走りながら色々な操作をしていると自転車と形は似ていてもまるで別物と感じた。自転車以上に反応がよく速度も出てバランスも取りやすく、操作も楽しめご機嫌で操っていると急にテルトが声を掛けてきた。
「ケントぉ〜止まってぇ〜」
「どうしたの?」
「もうすぐにモト集落に着いちゃうけどこれしまった方がよくない?」
「えっ!?もう着くの!?」
早い!?1日掛かるって言ってたからもっと遠いのかと思ってた。まだ2時間も経ってない。こんなに早く着けるとは思ってもみなかった…
テルトに声を掛けてもらわなかったらこのまま突っ込んで大騒ぎになってたな〜この娘の気配りはいつも助かるな〜若いのに…?
いやもしかしたらステータス覗き見した時のxxxxが示すように結構いってるとか?
でもこれは聞けない。聞いてはいけない。身の危険を感じる。もし聞かれたら17才くらいにしておくか。
そんな心の葛藤は置いといて自転車を降りバックにしまった。
振り返りながらテルトにありがとうと伝えると満面の笑みで腕を絡めてきた。10分後絡めていた腕が解かれ、普通に手を繋いで歩いている。ちょっとしょんぼりしている?どうしたんだろう?
そのまま進みさらに10分後集落の囲みが見えてきた。するとテルトは手を解き俺の後ろを着いて歩く。表情は無くなった…俺なんかまずい事したか?考えてもわからん。
「テルト、俺なんか気に触る事したか?」
「ん?あ〜違うの。実はぁ〜」
テルトが言うにはここからコルテレット聖教国の勢力圏で田舎ほど差別が酷いから奴隷に見えるようにした方が争い無く済むらしい。
なるほどそこまで考えていてくれるとは出来た娘だ〜。
しかも魔法で首にチョーカーみたいなのを偽装してもいる。
冒険者登録終わるまでは大人しくしてようと2人で決めた。
集落に入って歩き回る事をしたわけではないが道具屋くらいは覗いてみた。
ま〜集落だから田舎の雑貨屋程度でロクなのは無かったので、そのまま北の門から出て次のネルドの町を目指した。
集落からしばらく離れた所で自転車を出した。
今度は歩いて3日くらいの距離らしい。ちょっと時間的に厳しいかな?先程のような実験しながらでは無くスピード重視で走る事にした。
ここでついでだからと魔力を込めると速くなるってのを試す事にした。
そのままハンドルから力が流れるようにしてみた。
グーーーーん
力を流す量によってスピードが変わるようだ。
ここは集落と町を繋ぐ街道だが人通りはないので、遠慮無く飛ばしてみるがあっという間に魔力が尽きた。魔法練習してそのまま出てきたから回復していなかったのである。
仕方ないので、地道にこいで行く事にした。
しかし思わぬ副産物でなぜか手に触れた場所に雷属性魔法ができるようになってしまった。しかも名前が触雷って…静電気かよ…
まあいいさどうせ帯電体質だったし〜お客様にタオル掛けるだけで静電気起きてたぐらいだし〜、自転車もモーター活用なら電気いるし〜、無理やり納得してやるさ〜。
試しに、テルトに後ろから届く範囲で魔力を込めてもらうが別に覚えるような事はないらしい。ただ加速性能が全然違う。
かなり魔力を込めているがせいぜい1割り増しくらいだった。やはり属性が関係あるのかもね。テルトはまだ封印が効いてるのか上位の雷属性は使えないみたいだし焦っても仕方ないよね。
凄く急ぐ旅でもないのでテルトには魔力を止めてもらい地道に漕ぎまくった。
「ねぇ〜ケントぉ〜日没に間に合うかなぁ〜」
そう。日がだいぶ傾き空が赤くなってきたのである。こちらの世界では日没で町などの門が閉鎖されてしまうのである。現在の位置だと少々厳しいらしい。魔力の自然回復もさほどされていないからここは気合を入れて全力疾走する事にした。
テルトには座席に捕まってもらい立ち漕ぎで漕ぎまくり、まるで下り坂で全力疾走しているような速度が出てしまい、制御が不安定になるがなんとか無理やりねじ伏せるように意識を集中させていった。
ゼーハーゼーハー
町が見える辺りに近付き、こいだ惰性で進みながら自転車の上で休息を入れた。
「ケントぉ〜大丈夫ぅ〜」
「うん。(ゼーハー)だい(ゼーハー)じょう(ゼーハー)ぶ(ゼーハー)」
大丈夫と言いつつ、全然大丈夫じゃなさそうな声で答えて、いまだに荒い息のままである。
自転車の速度も落ちてきて、普通に漕ぐくらいの速度で進んでいるといよいよ町が見えてきた。ここからなら歩いても間に合うだろうがもう足がガクガクになってしまっているので、見られても構わないからギリギリまで自転車で進み5分くらいのみ歩いて町に入った。
仮のカードとはいえほとんど止められること無く、すんなり入れるのはギルドカードの信頼性は高いようだ。
ただやはり亜人は奴隷扱いなのか何も言わないが目が語っている。
ただテルトの美貌に対する羨望や妬みの視線も混ざっているようで、そんなに気にしなくてもいいのかな?現代日本育ちの俺には奴隷制度はイマイチ理解できなかった。
俺はなんとも居心地が悪く、宿を探すためにその場を足早に去る事にしたのだが、少し足がもつれてしまった。テルトがすかさず支えてくれ、俺はそのままテルトの肩を借り歩いて行った。
ただ周りの視線が何やら変わった気がしたが気づかなかった事にしておこう。
宿はすぐに見つかった。
水の谷亭と言って町に唯一の宿屋だった。ここでも1人部屋一つと2人部屋一つしか空いてなかったので予算的に2人部屋に銀貨1枚大銅貨2枚で泊まることにした。
「テルトごめんちょっと寝るね。飯の時間になったら起こしてね」
俺はそう言うとベットに倒れこみすぐに意識を手放すのだった。
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