108カノマトダンジョン5
「テルトこの3人火葬してくれないかな?」
ケントは人造魔獣を撃退後救出叶わなかった魔獣の一部にされていた女性を弔うためにテルトに魔法で燃やすのを頼むのだった。
彼女達は人としての意識を持ちながらそのまま魔獣の一部として組み込まれ、一体化させられていた。今まで見てきた造られた動物達ならどこか仕方ないと思う心もあったのだが、これは違う。人をこの様に使うのはやっている人間の精神を疑う。
先ほど壁面にこいつの仕様書が掲載されているのを見つけた。
成長に合わせてカマキリが生えて、種として残すために1番相性が良かったのが人の子宮だった事から奴隷を生きたまま移植して生殖器の役割をやらせてデータを取っていた様だ。
だが何かの手違いでここの魔素が暴走して急に力をつけてしまい、ここの研究員はこいつの餌になってしまった様だ。
おそらくは灰色フードの人物が魔素だまりを暴走させていたからここにも来たのだろう。
ここはこんな胸糞悪い研究していたんだ。魔素が暴走したことでもっと酷いのが出てくるかもしれない。
まだここは外郭研究所に分類されるらしい。
ここの中心に近い所ほど魔素が元々あったからより高度な研究が行える施設があるらしい。
この部屋にある館内案内版には内郭研究室も記載されておりそこには高度研究室などより複雑な研究をしてそうな部屋が見て取れる。
覚悟を決めつつこの研究所の最後の部屋にたどり着いた。
そこには不自然な石積みの壁があった。明らかに周りの壁と同化できていない壁がありそこは遠慮することなく薙刀を振り下ろした。
壁はその一刀で斜めに切れ崩れ落ち、魔石が転がり出た。
こいつは石壁ゴーレムであまりにも白基調のこの部屋で擬態するには不向きなやつだった。
石の崩れた先には案の定階段がありそこを上ると地上にある中央研究所の看板がある建物がいく手を遮っていた。
このまま建物を破壊でもいいのだが中途半端な魔獣が我が物顔で歩いていたのが気にくわない。
こいつもメガネ君に鑑定してもらうと人造魔獣と出てくるので、人の業の深さを実感した。
こいつは牛に人の遺伝子を組み込んだ様に見える牛人という種族表記になっていた。
牛に人種の手と足に交換されている2m強の巨体を肩で風を切りながら歩いている。
これは人の手足とわかっても先程の様なショックは感じない。
もう深く考えるのはやめようここは全て殲滅しようこの都市は残ってはいけない都市だ。
地図から消し去ってやろう。
ケントの心が闇に沈んでいった頃3人も体調に異変を感じていた。それはケントとの繋がりからケントの思考が流れてきておりその心暗き感情は3人にも影響を与えていた。
それは意識していないとケントの破壊衝動に飲み込まれて理性を失いそうになっていた。
一度理性を失えば肉食獣として取り返しがつかない状況になりそうだったから3人は一旦休憩を申し込んだ。
内郭の研究室は大きな建物でいくつも部屋があるからそのうちの1つで影響の無さそうな部屋をピックアップして、戦い詰めだった事もあり飯と睡眠を取ることとした。
ちょうどいいタイミングで二重隔壁の研究室があったので室内を探査後魔獣が入ってこない様に隔壁を操作してそこそこのサイズがある部屋でそこらにあるテーブルと椅子を持ち寄り昼食にした。
もうかなりの時間探索と戦闘に費やしていたので椅子に座ってからそれまでの忘れていた疲労が一気に襲ってきた。
飯もこういうときは温かいものが良いだろうと有り合わせで消化に良さそうな細かく刻んだ野菜のスープを作ってくれて、一気に飲み干しお代わりを貰った。
4人で競う様に無言で食べ、腹が満たされたケントは急に瞼が重くなってきていた。
抗えない眠気に支配され、器を持ったまま机に突っ伏して眠ってしまうのだった。
ケントは心地よい温もりの中、微睡んだ意識が覚醒を始めた。
「おはようケントぉよく寝れた?」
「おはようテルト。これはどんな状況?」
「2人はまだ寝たばっかりだから起こさないであげてね。ケントは優しいからさっきの魔獣倒した後から心がかなりすり減っていたのよ。見ていて心配だったわ。だから一服盛らしてもらってゆっくり寝てもらったのよ」
「そうかそれは心配をかけたなありがとう。テルトは寝なくて良いのか?」
「私は先にケントと添い寝させてもらったわ。だから先に起きて2人と交換したの。よっぽど疲れてるのね。話してても起きないわ。」
「そうだね両手抱きしめられちゃって身動き取れそうにないよ」
「ついでだからもう少し寝てても良いわよ?」
「そんじゃお言葉に甘える」
再びケントは2人の温もりに包まれて眠りに落ちた。
「よかった大丈夫そうね。今後もあんな実験された人が出てくるのね。出てくるたびにケントは反応しちゃうのかしら?ちょっと心配ね。でも今はゆっくり休んでね」
一行は身心ともにリフレッシュして、再び探査を始めた。
しかし内郭の研究室は魔素の影響か迷路化し始めていて、すでに案内板の地図が役に立たなくなっていた。そのためしらみ潰しに通路を周り魔導の書庫に地図を覚えさせていき所々にある研究室を覗いては人造研究生物を駆除していった。
そしていよいよ案内板にあった最下層の高度研究室に赴いた。
そこは一部地上に向かって穴が空いていたがおそらくマザーの出た穴だろうか?その他には餌にされたであろう魔物の残骸と予想はしていたが見たくはなかった人であったであろうパーツが散乱していた。
回りを確認していると様々な書類が散乱しているがこれは回収させてもらった。内容は見るまでもなく研究記録だろうがあのマザーとやり合うには知っておいて損は無いだろう。
その他はろくなものは無いので、魔素が溢れ出ている所に向かい魔石を幾つか置いて見るが砕け散ってしまったので魔玉を設置する事にした。
幾つかヒビが入ったりしたが5つ目で魔宝玉化して魔素漏れの状態は抑える事が出来たがこの施設自体に細かい亀裂が有り、そこからジワジワ滲み出た魔素が有るのを気付かずケント達はカノマトだった街を後にした。
後になって冒険者が殲滅に入っても数が減ってないことから再調査で発見したがレベルも適度に落ち敵も減らない事から冒険者や騎士団の修練場所として活用される事になるのだった。