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106カノマトダンジョン3

第三回廊で初っ端からナイトレッグという騎士鎧の足が生えたムカデを撃退した一行は通路移動だけでなく邸宅の探索と言う少々複雑な状況になってしまいマップも中々広がらず出口を見つけられずにいた。

しかも出てくる魔獣がストーンゴーレムや歩く鎧など命なき物体に魔石を詰めて無理やり型作った物が中心で、その硬さに四苦八苦しつつ魔法に頼ろうにも狭い通路で効果のある攻撃では味方も巻き込んでしまう状況で、リーブに盾で受け止めて貰いつつ一体一体全力の一撃を叩き込む効率の悪い探索で、戦闘時間8割探索2割程で邸宅一軒あたり2時間。休憩しようにもすぐ新たに湧いてくるから休む時間も無い。


そんな状況でもうすぐ一周してしまいそうな頃それは現れた。

今までの邸宅では見かけなかった地下への階段である。

ただでさえ薄暗くジメッとして不快に纏わりつく空気なのにそこはさらに酷い臭気も合わさり出来れば行きたく無いがおそらくここが先に進める道だろうと考えて告げている。

みんなもその判断に否定は無く、テルトが臭気除けに風の幕を展開してくれ、光球を浮かべ一同は地下への階段を一段づつ降りて行った。


戦闘は盾を構えたリーブ、中央に子蜘蛛を使役し情報を集めるアーネと魔法を使い続けるテルトが並び殿として後ろに俺がついて、石突砲をいつでも狙撃できる体制で構えている。

気分はスナイパーだが狭い通路の為にほぼお飾りだろう。


地下通路を進んでいるとそこには沢山の部屋が存在していた。部屋と言うよりは檻に近い物だが鉄格子の扉から中を伺うとそこには幾つもの腐った肉塊が転がっていた。おそらくは四つ足の動物だったのだろう。骨格と毛から狼系を思わせるが今の状態では判別はつかない。

その様な部屋がいくつか続いて、そいつは突然現れた。

ワニの変異種で双頭ワニなのだがそいつの足がおかしかった。足がムカデと言うよりはより長い脚を持つゲジゲジに近いが壁面を歩いていることからゲジゲジにワニの頭をくっつけたと言って良さそうだ。


未知の魔獣との接敵で警戒態勢をとるのだがこいつは至ってマイペースで、俺達に見向きもせずに檻を器用に開けて中の肉塊に覆い被さり貪っていた。

ゲジゲジ自体が害虫を食べる益虫と見られてる面もあるからそういう意味では掃除屋として有能なのだろうけど、今はこいつが肉塊に夢中になっているうちにさっさと行くとしよう。


ゲジゲジと別れて暫く探索していたが、結局ここは飼育小屋の様な設備の様で檻とゲジゲジワニしか見かけなかったからそのまま通り過ぎることにした。

抜けた先で階段を上るとそこはまた広大なスペースを持った建物だった。

今度のここはなんとなく病院の様に感じるが何かが違う様に思う。

それは見て回った部屋を見て何かが判った。

そこは動物病院なのだ。


病室と思われる部屋は小型から大型まで対応出来るサイズのゲージがあり、隣の手術室には人間の手術室並みに機材が揃い、様々な拘束器具も取り揃えられていた。

ただ一点不自然に思うのは手術台がいくつか並んでおり、1つを除いて残骸と言っていい動物の死骸があった事だ。移植かとも思ったが全部種族は違う様だ。


その理由は手術室の隣の部屋を覗いた時に判明した。

そこにはいろいろな生物のパーツを取り付けた継接ぎの生物が眠っていた。

眠っていたというよりは捨てられていて命を吹き込まれる前という様な感じか?

胸やら頭やらの一部が開かれて何かを入れる前の様な段階の物が並べられているだけだった。


隣の部屋ではやはり魔石を入れられて再起動をかけられたが成功しなかっただろう個体がいくつか捨てられていてさらに奥の部屋には檻に入れられて暴れている多種合成獣がいた。


ここの基本は多頭、多腕、多脚な様だがそれだけではない物も多くいた。

クワガタの頭に取り付けられたカマキリや虎の顔に変わった拳と指が蛇になった手を持つクマなどふざけた生物が本能の赴くままに強固な壁にぶつかっていた。


しかし呑気に探索できたのもここまでだった。

ここから先は魔素が流れ込んだせいかかなり空気が悪く感じるが不穏な殺気も感じる。

まるで隠す気のないその殺気はまるで餌を前にした獣の様な雰囲気を醸し出していたがその部屋に近づくにつれ異様な声も聞こえてきていた。


「いや〜もう食べさせないで!もう産みたくな…いぎ〜!」


その声を聞きつけ生存者が居るのかと慌てて駆けつけた一行の前に現れたのは形容し難い姿の塊だった。


上から行くとまずは3つのカマキリの胴体がありそれぞれが鎌を振るって獲物を解体して捕食していた。その食事はその首の下から人の女性の上半身がくっついており、食べた物が食道を通る感覚はある様で意識を失えない女性3人はそれぞれ叫んでいた。食事が流れ込んだ腹では一定量が貯まると女性の腹が光、何かが下腹部に降りていき、下腹部から管の様な物が繋がった先に蜘蛛の胴体を思わせるものがあり、その腹に白い繭の様なおそらく卵胞を抱え、その中に流れ込んでいた。


女性の発言から思うにこれは食事をとった栄養がなぜか出産行為に変換され、生み出したものがあの卵胞に蓄えられていると思われる。

と言うかその仕組み女性を組み込む必要あったのか?


それに餌に混じって白衣姿のバラバラな物あるし自業自得の慣れ果てなんだけどあの3人は犠牲者なんだろうね。さすがにあんな状態から分離出来るのか?って感じだしここは解釈つかまつるって事で良いのかな?


「いや〜誰か殺して!」


「また来た!いや〜!」


「もう嫌。食べたくない」


3人の精神が壊れてないのが不思議だ。どのくらいこの状態だったんだろう?


「ケントぉ〜彼奴らの末裔のしでかした事が許せないの。こいつの製造に私の力が使われているのが許せない。あんなところに閉じ込めて奪った力でこんな物作って…」


「一歩間違えば私もあの様な土台に使われていたかと思うと許せませんね」


「私にはわかるの。あの苦しみは解放されるまで終わらないの。でもあの人達の解放は…」


「わかってるよみんな。あの白い卵を破ると何が出てくるかわからないから気おつけてよ。それじゃあ始めようか。苦しみから解放してあげよう」


ケントは大剣を持ち一歩一歩進み、マルチマンティスの視界に入るのだった。

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