105カノマトダンジョン2
板壁ゴーレムを発見して外縁回廊より第二回廊に移ると今度は両側家屋の回廊が続いているようだ。外側は木製の家屋で内側は今度はレンガ造りの建物が多く並んでいるようだ。
今回も進路上レンガの建物方面を重点的に探索しながら進んで行くことになった。
相変わらず建物内にはハウススナイパーにダークソルジャーが現れてこれに加えアサシンラットと言うドブネズミよりもう少し大きいネズミがこっそり近付き隙をついてその鋭い歯で急所を狙って攻撃、しかもその歯で傷を付けられると傷口から急速に毒が回り体を蝕み弱ってきたところで再度止めを狙ってくるその動きは音を立てずに障害物も気にせず高速で駆け回り、逃げる時もすぐに物陰に隠れてしまう厄介な奴であるが…
アーネの糸の前にはその機動力は封じられ、リーブの咆哮で萎縮させてしまえるので、難易度的にはここに来てからの敵の中では1番弱く感じるが、ダークソルジャーの気配がある所では問答無用の範囲魔法で蹴散らせているからその影響もあるのだろう。
順調に殲滅が進み、今回は結構早く壁の門番を発見した。
やはりレンガのゴーレムが通路の壁を封鎖していた。
この煉瓦ゴーレムは板壁に比べ耐久力が上がり耐熱耐水耐風能力が高かったが動きが遅いのでただの的だった。しかも物理耐性が有りそうでいて一撃受け止めるも煉瓦が削れて容積を減らしていくので、塵も積もれば山となるで全員で物理ダメージを積み重ね段々と小さくなり胸の高さ、腰の高さ、膝の高さとそのサイズを小さくし気付いた時には煉瓦の粉の山しか残っていなかった。
なにか可哀想に思いつつも第二回廊を後にした。
続いて第三回廊は石造りの建物が増えて規模も大きめになっていた。
前回の経験から今回は石壁が出口にでもなるのかな?
そして今度はどんな魔獣が出てくるのかな?
まずは1軒目ちょっと大きめなというか結構大きめな石造りの建物で三階建てでも出口で考えれば一階しか出口は無いだろうから上の階の探索は放置で行こう。
壊れて片側が無い建物を過ぎて室内に入ると、正面に階段を備え両側には大きい部屋が連なり廊下の壁沿いには騎士の甲冑が並んでいたであろう場所は不自然に倒され幾つかの部品はなくなっていそうだった。
しかしここは魔獣が出てこないのがかえって不安だ。
今までで考えれば最低でもアサシンラットは居るはずなのだがそれすら居ないのがちょっと気になる。
警戒しつつ次の部屋に行くとそこはどうやら厨房だった。
煉瓦の所でもそうだったが厨房にアサシンラットは群がる傾向があったがここにはいない。
なぜだ?ネズミが逃げるような何かがいるって事か?
もしかしてネズミが餌になって食い尽くされた?
これは警戒する必要があるな。
「みんななんか様子がおかしい。ここは警戒を厳重に行こう」
「確かに静かすぎるのよねぇ〜」
「では子蜘蛛に先行させましょう」
「私が前に出るの。いつでもこいなの」
全員気楽に喋っているように見えるが纏っている空気が1段階変わったのがはっきりわかった。
生憎未探索マップ外の適性反応は拾えないから階段上やこの部屋の先は敵が出ても直近に来るまでわからないのは怖いが…そうか上か?
一階に餌がなくなって上の階に行っているのかもしれない。それならそれでさっさと見て回り出くわす前にさっさと出よう。
少し足早に探査を進め見終わり帰ろうとロビーまで戻った所でそいつは現れた。
ロビー吹き抜けの二階の天井よりぶら下がるシャンデリアに足場を造りこちらを見つめる目が見下ろしていた。
幸い吹き抜けのおかげで一階に判断され眼鏡の索敵に赤点表示されていたから気付けたがそのまま進んでいれば頭上から降ってきて襲われたかと思うとぞっとする。
3人も俺の視線の先を追って目標を把握した。
そいつの姿は蛇のように長い体を持っているのは確認できたがそれ以外は暗くてわからない。
皆今までとは違い完全に自分の武器を構え臨戦態勢を取っている。
俺も得意の大薙刀で3.5mもの長大な武器を肩に担ぐように構えいつでも叩きつけられるように用意した。
テルトは幾つか魔法陣を展開し発動ワード待ち、アーネは落ちてきそうな軌道上に糸を張って攻撃に拘束に様々な展開に対処できるように準備をした。
リーブはテルトのそばで盾を構え、受け止める気満々の体制だ。
そんな万全な態勢で構える所でそいつは降ってきた。
アーネの糸はそいつの重量に負けて足止めは不可能だった。
斬糸も傷をつけただけでダメージにはなっていなかったが粘糸が幾つかの足を絡めてバランスを崩すには成功した。
そうそいつは全長20mを超えていそうな足のいっぱいある昆虫。ムカデの魔獣だった。
だが普通のと少し違う点がある。
それは足が変なのだ。
どう変かっていうと簡単に言うと胴体から全身甲冑の足だけが生えているのだ。
ムカデの足が騎士鎧の足なのだ。一階で見た鎧も足だけが不自然に少なかったのもこいつが原因っぽいがどのようにしたらこんな変化が出来るのか…
まあいい。
やるとしよう。
ムカデは胴体の半分を持ち上げ絡まった足も含めて支障が無いようにしたのだろう。
でもバランスが悪く動きに精彩が無い。
その隙に肩に担ぐように構えた大薙刀での墜剪で足に向かって打ちおろすと防ぐに防げず絡まった足は見事に根元から数本切り落とした。本当は胴体を狙っていたのだが胴体に弾かれ、胴体を滑るように足を根元から切るだけだった。
それでも足がなくなったことでバランスは悪いままだった。
そこにいよいよテルトが発動ワードを唱えた。氷刃は少々斬属性が高く無いと通用しないようで、弾かれるだけで傷らしい傷は作れなかった。
そこでテルトも急遽変更して、氷礫で物理ダメージを稼ぐことにしたようだ。こぶし大の高圧縮氷が無数に飛んでいき足の鎧などボコボコに凹ませ胴体も繋ぎ目などに穴を作ったあたりもあった。
ところがこのムカデさっきダメージ計るのに鑑定したら種族はナイトレッグというらしいというかそのまんま?こいつは物理ダメージで少しは入るようだが思わしく無い。
また氷をぶつけられ属性ダメが入るのを嫌がる素振りがある。
その為発動元のテルトを把握され胴体の体当たりが敢行されたがそこはリーブのその慎ましい体のどこにそんな力があるのかってぐらいに大楯1つで受け止めていた。
その為破壊力抜群な早く動く胴体は一瞬動きがなくなった。
その隙を逃す我らでは無い。
四方八方からアーネの粘糸により体を拘束に付け根や胴体繋ぎ目などに斬糸を送り込む。
テルトは行動阻害も含めて氷剣山で串刺し。
動きが完全に止まった所で胴薙で繋ぎ目を一閃その隙をついてリーブも飛び出し後ろ半分に一刀両断に蹴散らした。
残った前半分も片側が足がなかったりで有効な反撃は出来なくなっており、後はもう解体作業と言って良い展開となった。
終わってみれば呆気ないがなかなかの強敵が雑魚キャラ枠の領域で出てきたのはこのカノマトダンジョンの手強さを物語っているようだった。