1プロローグ
理容師の免許を取りユニセックスサロンで勤めること10年よく俺も耐えたものだ。
カリスマブームの頃に就職したせいか生き残りが相当厳しかった。ひどい店は10人取るのに100人募集して振るいにかけ三カ月後に10人になるように苛め抜く店もあるなんて聞いたぐらいだ。
そんな俺もいよいよ実家の手伝いで帰る事になった。さすがに三代続くとやはり継ぐしかないのかと自分に言い聞かせ…でも俺本当にこれで良かったのかな?
他にやりたいことなかったのかな。
ゲーム漬けだった人間がよくここまで変わったもんだよな。実家帰ってゲーム漬けに戻ったりしてな。
今の店の最終日
いよいよ営業も終わり自分個人の道具を整理し大きなバックに道具を詰め自転車で今の家に帰る途中…
下り坂でブレーキが壊れた。
しかもこの先丁字路で正面は崖
転ぶにもスピードはかなり出てしまってるので大怪我は避けられない。
道幅一杯に使い体重移動で無理矢理曲がってその先でスピードを落とせるのにかけよう。
この時間車はほぼ走らない。右側車線に寄って左に傾けた。左側のブロックの角をすれすれで抜けスピードは殺せないままなんとか抜けた。
次の困難は右側に迫るガードレール。
綱渡りのような制御でギリギリ耐えられそうなその時に目の前に猫が…
ダメそこで止まらないで。
自分の走行予定のライン上に猫が止まってこちらを見ている。
緊急回避を試みるがタイヤが悲鳴をあげ俺の制御を嫌った。
自転車はガードレールと抱き合うことを選んだようだ。
猫は無事に逃げていった。
自転車はガードレールに激突大破したようだ。
俺は大きなバックを肩から提げたまま空を飛んでいる。
大きな木にはぶつからずたくさんの枝に叩かれながら地面に激突した。
グハッ
体の左側から落ちた。左半身は強打で動かない。左目も枝で切ったのか血が入りよく見えない。
バックは右側にかけていたので無くさず今もある。
とりあえずなんとかなりそうかな?
今はまだ暗い下手に動かない方がいいだろう。
ちょうどそこに御堂があるしそこの軒先を借りて休ませて貰おう。
御堂に着き腰掛けると急に視界が揺らいだ。
抗う事も出来ずにそのまま意識を手放してしまった。
うっ眩しい…
ズキッ
イテテテ
そうか俺は昨日崖から落ちたんだ。
左目は開かないし、左半身は動くけど痛いくらいかこれならなんとかなるな。
右目の乱視がひどいな…メガネ掛けないと…
仕事用のメガネがバックにあるはず。割れてないといいな。
バックに手を入れると…何もない…手を入れ探すと手にメガネが吸い付いてきた。
なんだこれ?メガネをかけ再度確認すると…
メガネのレンズに文字情報が流れてきた。
『時空バック』大容量の時空倉庫にアイテムを保管できる。
なんだこれそもそもこのメガネ俺のか?
外そうとすると外れない…呪われてるのか?
なんなんだよこれ…
『知識の眼鏡』魔導の書庫と連動して情報を使用者に送る。あらゆるものが見える。
魔導の書庫?なんだそれ?そんなの持ってないぞ?
もしかしてこの見た目俺のだったヘンテコバックに入ってるとか?試してみるか?
バックに手を入れ魔導の書庫を意識して探してみる。
…出てきた…てか俺使ってたタブレットじゃないか…
なんでこれが魔導の書庫なんだ?
『魔導の書庫』あらゆる情報、言語を使用者に提供する。また魔法のサポートをする。
魔術ってなんなんだよ。そもそもここは俺が居た世界と違うのか?
『魔法』この世界の代表的な魔獣への攻撃方法
『エルデーラ大陸』様々な国が集う大地
…これはもしや…
とんでもない世界に来ちゃったってやつですか…これは帰る方法あるのか?
『まだ帰れる家を持っていません』
まるでナビゲーターだな…これはこれで便利なのかもしれないな。
帰る方法はなさそうだがこの辺り動いて探索をするのもいいかな…
よし!くよくよしてもしょうがないこの世界で生きて行く手段を見つけて、最終的には帰る方法があるか探してみよう。