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七薔薇物語

七薔薇物語 ―黄薔薇―

作者: 矢玉

 七つの薔薇にまつわる 物語


 黄薔薇 はかりごとの死

 華やかな庭園、石造りの回廊が見事な箱庭で豪奢な長裾(ちょうくん)を揺らし、少女は秋千(ブランコ)にのる。刺繍張りの靴で寄木細工の踏板に足を乗せ、えいやと漕ぎ出した。

 のけぞった白い頤、晒した首からの翡翠のごとき哥声が漏れる。


  (たえ)の花弁の薔薇迷宮 入り箱細工の国には


 ゆらゆた、ゆらゆら少女は揺れる。

 気だるげに玉細工の鎖に頬を押し当て幼い少女がゆらゆらよと揺れた。


  反り返った花弁の都をもち 反り返った花弁の宮城があった


 ゆらゆた、ゆらゆら少女は揺れる。

 結った黄茶の髪にさした幾本の簪子(かんざし)がゆらゆらよと揺れた。


まあるい花弁の房には まあるい花弁の格子窓があり


 ゆらゆた、ゆらゆら少女は揺れる。

 碧の石、翡翠の珠のようなひとみが、挿した紅の唇がゆらゆらよと揺れた。


  螺子(ねじ)くれた花弁の椅子の上に  螺子(ねじ)くれた波斯(ぺるしゃ)(ねこ)がいた


 ゆらゆた、ゆらゆら少女は揺れる。

 母譲りの異国の血をみせる髪と瞳はゆらゆらよと揺れた。


  固く閉じた花弁の螺鈿細工の箱には 固く閉じた花弁の秘密の鍵が――


 ゆらゆた、ゆらゆら少女は堕ちる。

 胸に鉄の鏃を、背に緑の矢羽を生やしはゆらゆらよと堕ちた。


 黒い絹の靴だけが片方、ころんと転がった。

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